みずあめ
2025-05-29 19:46:43
1371文字
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明揺


俺も明星も朝はあんまり得意じゃない。布団の中でぐずぐずとまどろむ時間が大好きで、隣に明星がいる時は余計に起きられなくなる。
アラームの音もなしにふわりと目が覚めてしまった俺は、瞼を閉じたまま目の前の温かい体を抱きしめてその胸に頬をくっつけた。心地良い体温とともに再び眠りにつこうと意識がとろけていく途中、明星の体がくすくすと小さく震えて眠気を遮った。顔を上げればにやけ顔の明星と目が合う。
……起きてたの」
「ちょっとだけ。可愛い子おって起きてしもうた。でもまだねむいなぁ……ゆら、一緒に寝よ?」
「うぐ……きつい、ぎゅってしないで……
「手離したら起きてしまうやろ」
「まだおきないよ、いたいってば」
「ふふふ」
珍しく朝から機嫌がいい明星は俺のことをぎゅうっと強く抱きしめて、離せと腕を叩けば笑いながらその力を緩めた。少しだけ体を離して、でもまだお互いに触れ合ったまま明星を見る。カーテン越しの光が明星の髪をふわふわ優しく照らしてた。
……今、何時?」
「んーと、あれ、まだ九時やん。ゆら、今日は夕方からお出かけやっけ?」
「うん、真央とごはん」
「明星くんも行っていいやつ?」
「だめ。ていうか明星は出勤でしょ」
「まおちとばっかデートしてて羨ましいわぁ」
「明星もデートじゃないの?」
「お仕事のな。プライベートのデートしたいんやけど」
……おやすみ」
「あ、逃げた」
目を瞑った俺のほっぺたを明星の指が優しくつねって、さっきまで寝ようって言ってたくせに「起きて」って言ってきた。目を開けると嬉しそうに笑う明星の顔が近づいてくる。
「おはようのちゅー」
甘ったるい音で落とされた言葉のあと、唇がふにっと重なった。ちゅっとリップ音を鳴らして離れていき、代わりのように額がすりっと擦り合わされる。寝起きの高い体温がくっついて、溶けて、混ざる。
くすっと笑った明星が内緒話のように小さく囁いた。
「トクベツな朝ごはん、食べる?」
……とくべつ?」
「早起きさんだけのトクベツ。アイス乗っけてハチミツたっぷりかけたフレンチトーストとか、どう?」
「! 食べたい……!」
「あはは、目キラキラんなった。起きよか」
明星が起き上がるとベッドが軋み、布団が捲れてお互いの上半身が露わになった。一瞬ギラッと光った明星の目は、だけど作られた微笑みで瞼の裏に隠れてしまう。
「朝の寒さも落ち着いてきたなぁ。そろそろ布団も薄いのに変えんと」
……あけほし」
「ん?」
……にどね、しない?」
くちびるをゆっくり動かして囁けば、笑みを浮かべていた明星はパッと目を見開いて、その瞳に熱を滲ませた。返事をしないままで俺に覆い被さり、さっきよりも長いキスをする。大きな口が俺の唇をはむっと食べて、俺の心臓はきゅっと甘く痛みを訴えた。
「まだ寒いからぎゅってしてて」
……悪い子やなぁ、ゆら」
「フレンチトーストも後で作って」
「ふ、はぁい、じゃあフレンチトーストはまた後で」
笑いながらそう言った明星の指先が俺の顔にかかった髪を横に流して、剥き出しになった額にキスが降ってきた。布団をもう一度被って朝の光を遮り二人だけの暗闇を作る。
「早起きは三文の徳ってほんまやったんやな」
何言ってんの、と言おうとした唇は、すぐに明星に塞がれてしまった。