ぐるさん
2025-05-29 18:17:18
1431文字
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5.24 ふみりかワンドロ【好奇心】

ふみりかワンドロライ(@ fmrk_1draw)さんの2025.5.24 お題をお借りしました。

 珍しい事もある物だ。目の前で船を漕ぐ恋人の様子を見て、素直にそう思う。

 リビングに設置された、三人がけのソファの真ん中の席。ふみやさんはそこに座って片手に本を持っているが、その瞳は文字を追う事無く閉じられている。

 確かに、穏やかに陽光を浴びながらうたた寝をするのはとても気持ちが良いだろう。だが、こんな明るい時間に眠ってしまっては夜によく眠れなくなってしまう!そうすると朝起きるのが億劫になってしまう負の連鎖!

 ここはハウスの風紀委員としてふみやさんを起こさないと——そう思い手を伸ばした所で、ある事に気がついた。

 つむじ。ソファに座るふみやさんの目の前に立っているのだから、ふみやさんの頭頂部が視界に入るのは当然の事だ。だが、こうしてまじまじとふみやさんの頭部を見た事は、はたして今まであっただろうか。

 思わぬ気づきに、ふつふつと好奇心が湧き上がる。起こさないようにそうっと触れると、整髪剤で整えられた髪が、ふんわりとこちらの手を押し返してきた。

 きっと、ピッチリと髪を撫でつけるのでは無く、ざっくりと手ぐしでかき上げているからだろう。

 そのまま、髪型を崩さぬよう気をつけながら頭頂部を軽く撫でていくと、何だか心が満たされていく様な気がする。

 普段から大瀬君を中心に、良い行いをした皆さんの頭を撫でて褒める事は多いが、今の気持ちはそうした時とは少し違う。

 形容し難い感情に、むず痒さを感じる。こういう時、ふみやさんだったらどういう言葉で表すのだろうか。

 つい、ふみやさんの顔を覗き込むと、瞳を閉じながらも穏やかな笑みを浮かべていた。

 何か良い夢を見ているのだろうか?楽しそうな表情に、先程までのむず痒さが何だか解けてしまう。

「可愛い」

 思わず零れた言葉に、慌てて口を抑える。至近距離で何の気遣いもなく声を出してしまったので、起こしてしまったかと思ったが、存外ふみやさんは穏やかな寝顔を浮かべ続けている。

 これだけ気持ち良さそうに寝ているのを中断させるのは、逆に良くない気がしてきた。別にお昼寝自体は悪い事では無いし、時間を決めてまた起こし来れば問題無いだろう。

「おやすみなさい、ふみやさん。また後で起こしに来ますからね」

 周囲に誰も居ない事を確認して、額にそっと約束の接吻を落として、リビングを後にした。
 
◇◇
 
 珍しい事もある物だ。というか明日は槍でも降るんじゃないか?

 最初はただの偶然だった。何となくリビングで本を読んでいたら、段々眠くなってきて、そのまま瞳を閉じた所で理解の足音が聞こえてきた。

 そのまま起きようかと思ったけど、ここである疑問が湧いた。このまま寝たフリしたら、理解は一体どうするのだろう。

 昼間から寝るなと怒るのだろうか?それとも、案外ブランケットとかかけてくれるのだろうか?
 好奇心に任せて瞳を閉じたらコレだ。

 何だあの「可愛い」って。お前そんな穏やかに甘い声出せんの?しかも最後、俺の勘違いじゃなかったら多分おでこにキスしてたよな、アイツ?誰も見てなかったらそんな大胆なれる訳?

「勘弁してくれよ……

 思わず項垂れながら呟いた独り言は、誰に聞かれる事無く床に吸い込まれていく。

 好奇心は猫をも殺す、とはこういう事だろうか。思い返してはついニヤけてしまうのを堪えながら、理解が起こしに来るを待つ事にしよう。