ちゃび
2025-05-29 12:58:08
1938文字
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自機ヒカセンが一時的に外中込みで子供になっちゃったパロのSS

何かの要因で自機が身体も精神も記憶も子供になっちゃって、解呪方法見つかるまで石の家で暁が面倒見ることになり、自機のプライベートにも詳しいリテイナーのベルトランが呼ばれた

小さなオミローは「あなたの兄上から世話を頼まれている」との説明に納得したようで、動揺した様子もすっかり落ち着いて足をぷらぷらさせながら椅子におさまっている。

この年齢にしてはおとなしく、動き出したり周囲に話しかける様子はないが、その顔を絶え間なく動かしてキョロキョロとしているので、この場所に興味津々なのだろう。

「貴方がいつも暮らしているところと比べて、違うところはありますか?」

オミローが生まれ育った住居は地下に作られた洞穴だと、以前彼自身から聞いたことがある。
この石の家とはまるで違うに決まっているだろうとは思いながらも、知らぬていで小さな彼に声をかけた。
自分に声をかけられるとは思っていなかったのか、オミローは大きな目を丸くした後、確認するかのように床や壁、茶葉や酒の並ぶカウンターにじゅんぐり顔ごと向けていき、最後にこちらを見上げて、

「ぜんぶ」

と言った。
ひと目でなにもかもが違うだろうに、あらためて確認する様子は、元の彼が質問に対し時間をかけて事実を思い返す姿と重なり、子供の頃から真面目な人だったことがうかがえて、思わず頬がゆるむ。
そうですか、と相槌をうったが、オミローはこちらを見つめ続けている。かといって、何かを言いだすわけでもない。

「何か聞きたいことがありましたか」
「フォレスター?」

発言を促した途端に飛びだした単語に少々驚く。
オミロー自身もグリダニア都市へ入ってから何度も投げかけられたであろう、立場を分ける質問だ。

「ええ、私はフォレスターですよ。初めて見ましたか?」
「おんなは、みた」
「よければ、好きに見ていいですよ」
「さわったら、だめ?」
「触ってもいいですよ」

制服として身につけている手袋を外して、素肌の腕をテーブルの上に乗せる。
は乗せられた腕をオミローが興味深そうに両手で掴み、自分の腕の色とを見比べている。
この少年の住む世界はシェーダー族の世界なのだ。

森都グリダニア都市内の住民は、多数を占めるフォレスター族とミッドランダー族、数の少ないムーンキーパー族とシェーダー族で主に構成されている(最も、最近は移住者や住み着く冒険者もいるが)。
伝統的に現在も森の奥で暮らし、グリダニア建国時には地上へ上がる者と決裂した背景をもつシェーダー族は、その歴史に加え、近年被害が目立つ盗賊たちのイメージが強く、都市では嫌われがちだ。
オミローが集落から旅立ったばかりの頃は、ベルトランもよく知る人が、店が、食堂が、彼を門前払いしたという。

しかし、そのシェーダー族も、グリダニアから一歩出てしまえばフォレスター族かシェーダー族かの括りはなく、まとめてエレゼン族と認識される。
せいぜい、グリダニア由来の盗賊がまとめて「シェーダー族」と呼ばれることがある程度である。
よって、グリダニア都市内でも国を出てからも、ベルトランはこの瞬間まで、種族を聞かれた経験がなかった。
とはいえ、小さなオミローの質問には悪意がなく、純真な外の者への好奇心由来のため、元の彼がグリダニアで受けた待遇を追体験するには至らないのだが。

「おれはー」
「うん?」
「フォレスターの、おんなが、おれをうんでー」

ひと通り「フォレスターの腕」を眺め終えて少しこちらに慣れたのか、拙い言葉で話しはじめたオミローの話に耳を傾ける。

「だから、おれは、シェーダー、だけどー、でも、フォレスターの、こ、だけどー、なんで、フォレスターと、ちがう?」

オミローがこれ、これ、と自身とベルトランの腕を交互に指をさす。

ベルトランは、オミローの生い立ちを知っている。
彼が、シェーダー族の集落で唯一、シェーダーの父とフォレスターの母から生まれ、部分的に母親の特徴を受け継ぎ、今でもなお、兄や父、義母や仲間と揃いの肌色と髪が欲しかったと思っていることも。
こんなにも幼い頃から自分ただ一人が仲間と違うことを知り、しかし今、フォレスターとも違うと気づいたのだ。

賢い子である。
「フォレスターの子」と言われて育ち、そして都市へ出た時には「シェーダー族」として忌避されて、混乱はなかったのだろうか。
本人からは、その手の混乱や理不尽さについての話は聞いたことがない。
せめて、こちらを見上げるこの子が納得できるような言葉を探す。

彼の兄は恐らく避けなければならなかったであろう、外の世界の話をベルトランは話すことができる。
シェーダー族でもフォレスター族でもない、あらゆる人がこの世界にはたくさんいて、見た目が異なろうとも愛されることを教えてやりたい。

大人になったオミローがその行いによって、世界中で人を惹きつけてきたように。