三毛田
2025-05-28 15:37:58
1068文字
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06 006. 煉瓦化粧の街角

6日目
君と二人で歩く

 煉瓦造りの倉庫が並ぶ道を抜け、賑やかな市を通り過ぎる。
 依頼人との待ち合わせは、その先。
 子どもたちの声が響く公園。の、端。
 人には聞かれたくないのか、それとも他の理由があるのか。
 今回は前者であり、後者だった。
「勇気がないから見守っていて欲しい。ねえ」
「結局フラれていたな」
「知らない人から急に声をかけられたら、誰だってああなるだろ」
 同世代? 同年代? だからと、俺たちが指名され。
 そして、フラれたその人は公園の隣の運動場て泣きながら走っている。
 とりあえず、気が済むまで走らせておくことにした。
 スポドリを渡し、雑に慰めてから別れ。
「なんか倉庫が多いよな、ここ」
「倉庫というよりも、工場や工場らしいな。主に紡織業が盛んなようだ」
「じゃあ、お土産は布?」
「布製品のお土産は、当たり外れがあるからな……
「無難にポーチでいいんじゃないか? なのも姫子も、使ってくれるだろ」
「ヴェルトさんにはメガネ拭きがいいだろうか」
「布のメガネケースもあるから、セットで」
「パムにはハンカチか、エプロンにするか悩みどころだ」
 お土産屋に立ち寄り、色々吟味している丹恒の腰に腕を回す。
「穹?」
「今だけ。な?」
「動くときは、力を緩めてくれ」
「もちろん!」
 纏わりつくようなねっとりとした厭らしい視線も、純粋にイケメンに興味があるような視線も。
 完全に遮断できるとは思っていないが、牽制しておくのとしないのとでは、かなりの差がある。
 諦めたような声色も、あてが外れた舌打ちも。何もかも丹恒の耳に入れたくない。そんな我儘。
 他人の美醜にこだわらないどころか、己に関しても気にしていないこの人が、俺以外からそういう視線を向けられるのが耐えられない。それだけ。
 そもそも、彼は列車の財産で不動産でもあり、俺の恋人なので!
 狙う輩からは護らないと。
「思わずたくさん買ってしまった……
 ショッパーを両手に、思わずこぼれた。そんな感じの声で。自分であれこれ買ったくせにこれだから、可愛い人だ。
「気に入ったのがあってよかったな」
「お前はいいのか?」
「うん。丹恒が選んでくれたものでいい。帰ってからのお楽しみだ」
 俺は俺で見ていたので、彼が俺に何を選んでくれたのかを知らない。
「プレッシャーをかけるな」
 って怒られたけど、怖くないし本当に怒っているわけでもないから。
 これが甘々丹恒先生だし、そうでないと言われたらそれはそれで納得できる態度。
「ふふふ」
「笑うな」
「嬉しいだけ」