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RINGO
2025-05-28 01:29:00
2120文字
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境界の灯
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番外編2-2
それから数か月で【魔王】は死んだ。
既にフェンリルは、裏で準備を進め、フギンと同じように連れてこられた魔族を見定めて協力を持ち掛けていた。
連れてこられた魔族は【魔王】の特権で、使役させられ直接手は出せなかった。
それならば、彼らには間接的に支援してもらい、自分が直接手を下すことを選んだ。
その間接的な支援に魔法は最適だとフェンリルは考えた。
既に彼は魔法も使い様だと理解していたのだ。
しかし、残念ながら彼の魔法の扱いは拙い。
協力者の魔族たちもそれは同じ。
だからこそ、魔法に長けた魔族を待っていた。
玉座の間に広がる血の海に、フェンリルは嗤った。
「ようやくだ。
……
ようやく俺は自由になれる。」
肩で息をする彼を、フギンはじっと見つめていた。
どこか放っておけない彼が、気がかりだった。
その後、使役させられていた魔族たちは解放され、正式に【魔王】の称号はフェンリルのものとなった。
「
……
お前は帰らないのか?」
魔族たちを見送り終わり、馴れ馴れしく自分の背に乗るフギンに顔を向けながら、フェンリルは言った。
その問いにフギンは、はぁとため息を吐いた。
「お世話になった魔女様がもういないんです。帰る場所なんてありません。」
「
……
そうか、その、なんだ
……
、悪かったな。」
フェンリルは自分でないにしろ、身内のやったことにバツが悪そうに眉を顰める。
「新しい【魔王】なんですから、そんなにすぐ頭を下げてはいけないですよ。」
バサバサとフェンリルの背中から飛び、彼の目の前の地面に移動する。
「
……
あなたこそ、これからどうするつもりなんですか?【魔王】になったからには、これからあなたに、強い魔族がけしかけてくるでしょう?場合によっては人間も。」
フェンリルは、視線を上に向けた。
「あまり
……
考えていなかったな、そこまで考える余裕がなかった。」
でしょうね。とフギンは呟く。
彼の【魔王】を倒すという執念は凄まじかった。
しかし、それを達成した彼からは、抜け殻とまではいかないが、あんなに激しく燃えていた炎が、今では静かに揺れる灯りのようになっている。
「【魔王】は魔族の象徴です。あなたは、魔族をどうしたいですか?」
優しくフェンリルに問いかける。
空には夕日が沈みかけ、二匹の顔は日に照らされていた。
「
……
そう、だな。
――
……
俺は無駄な戦いはしたくないな。
……
もう疲れた。」
そう言って、フェンリルは視線を上げて夕日を眺めた。
「
……
どうせなら、お前とその魔女様とやらみたいに、争わない方法でどうにかできればいいんだが。
……
まぁ、種族的に厳しいかもしれないな。」
そうぼやく様に言ったフェンリルの姿を、フギンは輝く眼で見つめた。
希望を見つけたように感じた。
そして、彼のその気持ちを守らねばならないと、使命感のようなものが芽生えたのだ。
「それがあなたの目指す魔族の姿なら
……
、私は全力であなたを支えましょう。」
そう、自然と言葉が溢れた。
「国
……
?それはどういう
……
?」
フギンは目をぱちくりと、瞬かせた。
洞穴の生活も、そろそろやめても良い程度にフェンリルも回復した。
朝日が彼の白銀の毛皮を透かしている。
「あぁ、他の奴らにとっちゃ国なんて馬鹿げた考えだと思われるかもしれないが
……
。基本的に俺たち魔族は個人主義だろ?バラバラの群れをいっそ一つにして、対等に他の種族と付き合うってのはどうかと思ってな。」
クァ
……
ッと欠伸をしてフェンリルは、フギンを軽く見ながら言った。
「魔族の中でも強さはバラバラだ。弱いやつも強いやつもいる。だがそんな奴らを一つにまとめられれば
……
食いっぱぐれも少しは減るだろ?」
フギンはその言葉を聞いて、幼い頃、群れとはぐれて不安だった自分をフェンリルがまっすぐ見てくれたような気がした。
フェンリルのような立派な体躯の魔族はともかく、鳥系魔族は魔族の中でも弱い立場にある。
縄張り争いではいつも負けて、拠点を転々と変えているのが常だった。
その最中、群れとはぐれた自分を拾ってくれたのが、あの魔女だった。
――
そんな弱い立場の自分を、目の前の【魔王】が対等に扱おうとしている。
嬉しくないわけがない。
「
……
まぁ、まだどうやるか見当もつかないが。」
フェンリルは、自分の計画性の無さを笑う。
「やりましょう。」
フギンは間髪入れずに言った。
フェンリルがフギンの過去を知っていたかは知らないが、少なくとも弱い者へ関心を向けられることに、フギンは彼が【魔王】になって良かったと心底思った。
「参考にできる種族がいますから、調査をしっかり行って、賛同者を集めれば
……
時間がかかるかもしれませんが、きっとうまく行きます。
――
やりましょう。」
興奮気味に、前のめりなフギンに圧倒されつつ、フェンリルは自分の考えがおかしくなかったことに安堵した。
ふっと息を吐く。
「そう
……
だな。お前も手伝ってくれるんだろう?」
「えぇ、もちろん。」
朝の爽やかな風が、二人の身体を吹き抜けた。
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