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NEO
2025-05-25 23:36:26
2653文字
Public
NEO宅のDDA
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dreamlike beatitudinem
ダンリン。片割れが惚気てるだけの短文です。
◆
ただちょっとした思い出話をしていただけなのに
隠すようなこともないし
君の話も聞きたかったから
話しやすいようにと思って酒精を足したら
こんなことに
(ああああああ〜〜〜やっちゃった!)
疲れ果て泥のように眠る大切な友人。豊かな金糸が乱れ落ち、釣床に黄金の海を作っている。あまり日焼けの目立たない白い肌は、私掠船の暮らしをしているとは思えないほど滑らかで柔らかかった。長い睫毛に汗か涙か分からない雫が残り、暗闇の中で僅かに光っている。穏やかな呼吸。あどけない寝顔。心が安らぐ。ずっと見ていられる
……
ハッと我に返って目を逸らした。
就寝中の相手をまじゝと見つめるだなんて不躾極まりない。人間観察は苦手なはずなのにどうしたことだろう?いつからか彼に対してだけ、ともすれば視線も意識も釘付けになってしまって。
上陸してからほとんど陸地で生活していたから、船倉には二人きりなのに、何故か落ち着かない。
こんなことで糾弾されるわけでもない
……
男だらけの航海じゃありがちな単なる性欲処理だと心得ているし、彼もそうだろう。そう半ば強制的に、或いは自ら望んで及んだ過去だってなくはない
……
大して多く経験したわけではないけれど。それなのにどうしてこんなに胸が騒ぐのだろう?身体の相性が良かったせい?それとも思ったより彼が積極的だったから?まるで初心のような動悸がする。退廃的な行為だったはずなのに、乾いた浜が波を吸うように渇望が満たされた
……
あの、青。
熱を孕んで涙を滲ませた青い双眸。果てしなく続く海。無限の蒼穹。支配欲がどうしようもなく煽られた。今すぐ欲しくて堪らなくなった。名を呼ぶ微かな声。戸惑いを告げる密やかな囁き、快楽を拾って漏らす甘い呻き、焦らす間の詰るような目線すら、痺れるほどの快感を齎し虜にした。彼の全てが五感を刺激して。信じがたいが、今まで知らなかった初めての悦びを確かに感じた
……
しかしそれはあの、青の中にも──
頭を揺らし幻想を振り払う。どうかしてる。ただの生理的反応だろう?いくら桁違いに良かったからって過分な夢を見すぎている。彼だって初めてのはずがない
……
誘いへ乗る思い切りがよかったし、吐精を促す所作にも迷いがなくて、こっちが思い悩む羽目に陥っているくらいなんだから。
「!
……
、──」
衣擦れの音で心臓が止まりそうになった。釣床の縄が軋む。呼吸音が変わった気がしたけれど、暫くして再び規則正しい寝息に変わった。ほうっと息をつく。
不味い。完全に隠れ潜んでいる犯罪者の心境だ。
起こさぬよう細心の注意を払ってそうっと覗き込む。無理を強いた自覚はあるものの、存外安らかな吐息だ。これだけ健やかに眠れるということは、やはり彼自身が教えてくれた「僕も強くなった」発言には信憑性がありそうだ。
まだ知り合ったばかりの頃、気鬱に伏していた時の彼はそれは儚く見えたものだけれど、今や一端の海賊と成りつつある。そんなのは望んでいなかっただろうに。
君が戻ってくることなんて考えてもいなかったのに
……
また見つめ続けていると気付いて苦笑が漏れる。もう仕方ないのだろう。腹を括るべきだ。私掠船へ踏み込んでしまったのは彼にとっては不本意な事故だったろう。しかし堕ちてきた彼を罪科の業へ掬い上げた、この僕にとっては幸運の極みだった。あのまま彼の情熱が消えてしまうくらいなら──未知への探究心が──南方大陸への果なき夢が喪われるなんて耐えられない。希望を失いたくなかったが故に、彼を強引に此方へ引き摺り込んだ。同じ夢を追うものとしての使命感が
……
あったはずで
……
(いや、いやいや。往生際が悪いな、僕)
彼が必要だった。巧みな語学力や航海術もさることながら、彼自身の存在が。
知識への価値を見出さない多勢の中にあって、それを共有できる存在が、認識を、理解を、共鳴を望める相手がいてくれること、それがどれだけ慰めとなっていたことか──離れていた三年は本当に長かった。
(ニューファンドランドでもバンテンでも、海軍にいてさえ、こうじゃなかったのに)
今、彼が要ると欲する気持ちは切実で、揺るぎない。彼は、いわば無限に広がる砂浜で偶然に出会った金の粒だ。離れがたい。手放すのが惜しい。
一度は彼のために身を引いた。私掠船が彼の居場所でないことは明白だったから。
けれど彼は戻ってきた。僕のところへ。僕に会うために。その身に重い鎖を纏わせて
……
その心を失意に沈ませて。
だというのに、再び
……
夢を追う、と。今度は一緒に。未知の南方大陸への航海を共に、と望んでくれた──僕の言葉で。
(はあああっ、もう、こんな、こんなの
……
っ!無理!無心でいるほうがムリっ!!)
優しくて、聡くて、誰にでも公平で、慈愛に満ちた本物の紳士である彼を、慕わないほうがどうかしてる。しかも知への憧憬を共有するのは僕とだけ。誰も知らず、彼でさえ解さないだろう、この優越感がひどく心地良くてならない。もっと欲しいと欲張らずにいられない。我慢ができない。あの時自分の欲に蓋をして背を押したはずの手を、思いもよらず力強く握り返されてしまった、今となっては。
(とはいえ、いきなり失神するまで抱き潰すのはない
……
)
抑制が利かなかった。欲望が勝ってしまった。それとシチュエーションもよくなかった
……
いや、良過ぎた。僕の愛称をあんなに可愛く呼ぶのは反則。抵抗しなかったのも減点。そして一番ダメだったのは、
(不意打ちで唇を奪った君が悪い。なんと言い訳しようと譲歩しない)
ソレ以外は全部、僕が悪いんだけどね!
(ふー
……
さて、どう言い包めたものかな)
夜明けまでまだ時間はある。すっかり草臥れた彼の目覚めまでは更に凡そ数時間。多分足腰は立たない。ただでさえ脚の古傷が治りきっていないのに、相当な無茶をさせたから。
折角受け入れてくれたのに
……
初めては優しくしたかったのに
……
僕だって紳士的にできるはずだったのに
……
あんなに可愛いなんてもう
……
もう
……
最高だった
……
ああああ
堂々巡りで建設的な思考には戻れないのに、口角が上がるのを止められない。今夜は長くて幸せな、眠れぬ夜を過ごすことになりそうだった。
fin.
◆
dreamlike beatitudinem【夢のような至福】
20250525_finish_NEO@20neo14
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