草枕
2025-05-25 15:04:14
951文字
Public syzygy
 

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ノード

先日、シルーに料理を振る舞った女性が、ノードを上げていた。か細い灯りが、ゆっくり天へと昇っていき、ゆっくり見えなくなっていく。星々は眩しいほどに輝いているのに、こんな小さな光体でメロペイアの家族たちを呼び戻せるのかと、シルーは不安になった。
ノードには、記憶媒体や機械の一部を載せるらしい。かそけき光と思い出を、故人との結び目とするために。あるいは光ではなく、追憶が、死者と生者を結ぶという考えなのかもしれない。

メロペイアの民も、大切な人たちを忘れることを、完全に失ってしまうのを、恐れているのかもしれない。そう思ったら、ふと、腑に落ちた。
それが彼らの信仰の解釈として正しいか否かではない。ただ、この文化にシルーなりの共感を得るための勝手な想像をして、結果、深く感じ入ってしまった。それだけだ。

シルーの大切な人たちの事を思い出す。
訓練所を出て最初に配属された、輸送部隊の護衛班。そのうちの、彼ら曰く「新兵なんて面倒を押し付けられたアンラッキー班」。面倒という割に、よくしてくれた。雑事を全部押し付けられて、訓練と称して揉まれ、吐くまで呑ませようとした相手を潰し、とっておきの甘味を分けてもらい、片思い相手への惚気を一晩聞いて、子どものように頭を撫でられた。全部覚えている。警報が鳴り響く艦内で、新兵はこの場に居ても役に立たないと、脱出ポッドに押し込まれたことも。これを持ち帰れと渡された情報デバイスに、ほとんど意味がなかったと、後から知らされた時のことも。

全部、覚えている。
繰り返し、繰り返し。反復を。
忘却を逃れるコツは、反復だ。意識して正しい動きを繰り返し、不正確な動きを矯正する。文字通り身に染み付いた時には、思考という余計なプロセスを挟まずとも、反射で身体が動くようになる。


「ピヨピヨ新人〜!」
「ゆっくり成長していけば良いのさ。──まあ隊長の指示には服従だぞ」
「オレは物の役にも立たん新人の面倒なんか見ないからな」
「あ、この一見コミュ障はツンデレだから甘い物分けてくれるぞ」
……なあ、シルー。人生ってーのは、重き荷を負って、長い道を歩くような感じなんだよ」


今までも、この先も、どれほど季節が巡ろうと。
何度も、繰り返している。
繰り返していく。