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えなが
2025-05-24 22:16:38
7765文字
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フィガロ様のお気に入り
ワルプルギスのレノフィ
賢者の魔法使いに選ばれるよりも前のお話。
春の花はとうに散り、山を覆う木々は瑞々しい青い葉をつけていた。風の吹くまま、大ぶりの枝が揺れている。
夏が来たと言うにはまだ随分早い。レイタ山のてっぺんの方はかすみがかって、まだ雪が残っているようにも見える。低地でも肌寒さを感じ、上着はまだ手放せない。世話を任された羊たちをともない、ふもとを離れて山に入ったのはつい先日のことだった。
春の訪れとともに体毛を刈り込まれた羊たちはいつもより痩せた印象で、少々頼りなく寒々しくも見えたが、いつもと変わらぬのんびりとした調子で新鮮な若草を食んでいる。
魔法使いの中には動物の言葉を理解する者もいるらしい。レノックスには、はっきり、そう、羊たちの言葉がわかるようになったわけではないが、ここ数十年の経験で、彼らがしたいことや感じていることがほんの少しだけわかるようになった。
わかるといっても、人と同じようにせわしなく日々の生活に苦心はしない。ましてや、あれこれ哲学をとなえ 芸術に興じるでもない。
天敵のいない広い丘を悠々自適に闊歩し、食べたいときに草を食べる。その自由の気持ちよさになんとなく共感するだけだ。
彼らが不快な思いをしていないのならそれでいい。群れが散り散りにならないように、危険な崖道に誘い込まれないように注意しながら、白い岩肌がぽつぽつ点在する、緑の絨毯を踏みしめた。
ふとそばに気配を感じて足元を見ると、今年生まれたばかりの子羊がすりよっていた。羊はあまり人を認識してなついたりはしない。だが、なぜだかこの個体だけはレノックスをちょこちょこ追いかけてきていた。
子羊といえども、大きさは中型犬ほどはあり、まだ角の生えてない頭をすりすりと足に摺り寄せてきている。
「おいで」
抱き上げると鳴き声をあげ、嬉しそうに胴震いをした。
羊の用途は多岐にわたる。愛着を持ってはいけないと戒めるほどではないにしろ、他者から預かり扱うことも多い。生き物や愛玩動物というよりも所有物や財産の意識がレノックスは強かった。
だが、この子羊からはどことなく昨年亡くした犬に近しいものを感じていた。抱き上げた腕に無意識に力を込めると、めぇ、と頼りない声があがった。
そのとき、吹き上げる風にまじって、知った魔力の気配がした。レノックスはふと顔をあげ、空を仰ぎ見た。
麓の方角から、箒に乗ったフィガロがやってきていた。大きく手を振ると、控えめに振りかえされる。
また今年もレノが山に入る時期になって、しばらく寂しくなるね。
そうわざとらしく甘えた言葉を発したのも記憶に新しかった。
「やあ、かわいいね」
「どうも。抱きますか」
「いや、いいよ。朝早くから精が出るね」
「フィガロ先生こそ」
「うん。まあちょっとね」
「何かありましたか」
フィガロはレノックスの腕の中にいる子羊を見て目を細めた。指で軽く鼻筋を撫でて、口を開く。
「今年もワルプルギスの夜の時期が来たから、レノにも来てほしくて」
「俺がですか」
「忙しくて手が離せないのはわかってるんだけど、気が向いたらで構わないし」
フィガロの物言いに若干引っかかるものを感じながらも「いいですよ」とレノックスは答えた。悩んだそぶりは少しもなかった。
「来い」と言えばレノックスは絶対に断らない。それがわかっているからこそ曖昧に誘って選択させた。
フィガロは口角をあげ「よかった」と安堵のため息をつく。
「それじゃあ、魔の山で」
「はい。あ、フィガロ先生」
「ん。なにかな」
「少し休憩していきませんか。ちょうど俺も、休もうと思っていたので」
抱いていた子羊を下ろして、汚れを払うように手を軽く叩く。フィガロは嬉しそうに「それじゃ珈琲でも淹れてもらおうかな」と小さく笑った。
日が暮れる前に羊たちを畜舎にしまい、野犬に襲われぬよう魔法をかけた。そのときにフィガロの気配をふいに感じて、レノックスは小屋全体を見回した。
当然だが、一足先に会場に出かけてしまったフィガロはいない。彼はあらかじめ、羊たちを守れるように強固な結界を施していったのだろう。あのフィガロ様直々の魔法だ、自分のものよりよっぽど信頼できる。
レノックスは手早く出かける準備を済ませると、肩掛けカバンから丸くて白い、手に収まるほどの小さな球体を取り出した。
それに魔法をかけると、トンボのような薄い羽根が二対生えて、暗くなりゆく空にふわりと浮かびあがる。鳥でもなく虫でもない。この魔法道具は、フィガロがくれたものだ。
「場所はわかるだろうけど念のため」と渡された地図になる。魔の山へ向かう球体を追うようにレノックスは箒にまたがり空へ飛びたった。箒にも魔法がかけられているのか、心なしかいつもより速いスピードを出せている気がする。それとも、逸る自分の気持ちの問題かもしれない。
レノックスがフィガロについてワルプルギスの夜に行くのは初めてのことではない。
「たくさんの魔法使いが集まるから、きみが探しているあの子の情報もあるかも。ひょっとしたらあの子自体がみつかるかもね」
一番最初の誘い文句はそんな感じだった。それから何度か、フィガロはレノックスを伴いワルプルギスの夜に参加したが、近年は軽い口実すら言わなくなった。
南の国から魔の山は遠い。だがくだんの祭りは夜の間であればいつでも魔法使いを歓迎する。途中で休憩を挟みながらレノックスがたどり着いたときにはもうだいぶ夜が深まっていた。
だが、絶えず咲き乱れている花火のおかげで、あたりは昼間のように明るかった。
魔法使いたちの気配が濃く、様々な魔力がごちゃまぜになっている。これだけ人が集まっているのだ、ただでさえ気配をたどって捜索をするのが苦手なレノックスにとってフィガロを見つけるのは至難の業かと思われた。だからこそ、地図を持たせてくれたのだろう。
光る球体はフィガロのいるであろう上空まで進むと、パっと突然霧散して、花火の一部に混ざってしまった。きらきらした光の粉がレノックスの全身に降り注ぐ。
ここまでくればさすがにフィガロを見つけられる。
小さな人だかりのすぐ近くにレノックスは降り立った。案の定、多種多様の魔法使いたちに囲まれていて、彼らの悩みやら報告やらを聞いているようだった。
レノックスは話しかけず、その様子を遠巻きに見る。熱心にフィガロに話しかけている魔女の話はしばらく長引きそうだった。
到着したらすぐに俺のところに来て。
そうは言われていないが、レノックスはいつもいの一番にフィガロのもとへと向かう。遊戯も、物珍しい道具もたくさんある。魔法使いたちの目を引くような屋台の数々には目もくれない。レノックスの目的はフィガロだった。いや、フィガロが自分を欲してくれているからこそ、すぐに彼のもとへ向かうのだ。
一向に話は終わりそうになかった。ほんの一瞬だけフィガロと目があって、目がわずかに細められる。困っているような、申し訳ないような。だが彼は周りの魔法使いたちを無視することが出来ないのだ。
待ちすぎても気をつかわせてしまうかもしれない。やがてレノックスは一人で祭りの屋台の並びへと足を向けた。
たくさんの飾りがちらちら煌めいて、見とれていると行き交う人にすぐぶつかりそうになってしまう。
たまに放牧に使えそうな便利なアイテムがあるので、そういったものがないか露店を回る。
夜も遅かったが、子どもの姿もちらほら見て取れた。そう思っているうちに角から飛び出してきた子と盛大にぶつかった。レノックスはびくともしなかったが、子どものほうは勢いよく弾かれて地面に尻餅をつく。注意深くしていないと、背の高いレノックスの視界に小さな背丈のものはつい見逃してしまう。すまない、としゃがみこんで手を差し伸べると、子どもはぽかんとした表情でレノックスの顔を見返した。
大柄で無愛想、それは子どもからすれば圧迫感を覚えるのだろう。意図せず泣かれることは少なくなかった。賢明に笑顔を作って見るが、果たしてうまく出来ていたかわからない。
すぐに子どもの母親と思われる魔女がかけてきて、大げさすぎるぐらいせわしない動作で何度も何度も頭を下げると、すぐさま子を連れてその場を立ち去った。
そのとき、子どもが「あ!」と大きな声をあげた。
「フィガロ様のお気に入りだ!」
「
…………
」
人にまぎれて子は見えなくなり、レノックスは言い返すチャンスもなく声のしたほうをただ見やった。
怪我をしていなければいいが。そう思いあたり息をつく。
なんだか他人の視線を集めていることにようやく気付いた。
不自然ではないように、ぐるりとあたりを見渡す。
行きかう人はみな驚いたようにレノックスの顔を見る。しげしげと興味深げにじっと顔を見つめてくるような輩もいる。
(ああ、そうか。そうだった
……
)
『フィガロ様のお気に入り』
久々に耳にした呼称だった。
レノックスからはフィガロの気配が色濃く漂っている。
フィガロからもらった「地図」が最後に撒いた粉がまさしくそれで、その他にもフィガロの気配を放つような魔法がかけられているのかもしれない。
ここでのフィガロは人気者で、彼と同じ気配を漂わせている大柄の男も特段目立つ。初めてワルプルギスの夜に連れてこられたときには、人々の奇異の目にいたたまれないものを感じてどことなく居心地が悪かったが、今はもう慣れてしまっていた。
その翌年、翌々年と誘われず、その次の年にはまた誘われた。
初めて参加した年はまだどこか心がぼんやりしていたが、次に訪れたときはもうだいぶ南の生活に馴染んで心が安定したときだった。
それとなく距離があったフィガロとも大分打ち解けて、ようやく人となりの輪郭が見えてきたころあいだった。
フィガロはレノックスを伴って知り合いの魔法使いにあうたびに「こいつは俺のお気に入りだから」と紹介した。
数年誘いがないかと思ったら気が向いたころにまた誘われる。ただの気まぐれで、フィガロが誘える人がいないときに自分が選ばれるのだろうと思っていた。
なぜ、気配をなすりつけるのかと訊いてみたことがある。
「そりゃあ、レノが悪い魔法使いにからまれないようにするためだよ」
彼はいつものふざけた調子でウィンクしてみせたが、年かさの魔法使いを恐れるものもいれば、積年の恨みや力試しであえて刃を向けるような輩がいることもレノックスはそばで見てきて知っている。
過剰な加護の魔法、魔力の気配。
他の魔法使いにからまれないように、というよりも自分が他の魔法使いに奪われたりしないように、護ってくれているといったほうが正しいのかもしれない。
あるとし、ここで見知った魔法使いと話が弾んだことがある。世界中を旅していた時代に世話になった人だった。つい話しこんでいると、帰路のフィガロは露骨に不機嫌になっていた。
最初はその不機嫌さの理由がわからず、南の国に帰ったあとに一連の出来事をチレッタに伝えると、「あんたそれは嫉妬されてるんだよ」と笑い飛ばされた。レノックス自身、ピンと来ていなかった。
そんなことをしなくても、あなたのそばを離れるわけはないのに。
護られているという認識はひょっとして違うのかもしれない。どちらかというと、自分の所有物だと牽制しているような、あたりに知らしめるような、まさか見せびらかしているなんて
……
いや、考えすぎか自惚れだろう。あのフィガロ様にとって、俺がひけらかしたい存在かというと
――
「おまたせ」
思案していると、フィガロから声がかかった。ちょうど彼のことを考えていたので、まさか心を読んで機をうかがっていたのかと疑った。レノックスは驚くそぶりもみせずに、ゆっくりまばたきをして、うなずいた。
「少し歩こうよ」
その提案に従って、並んで祭りの中を行く。だが、少し進むたびにフィガロは誰かしらにつかまってしまっていた。
レノックスはその横顔をじっと見つめた。南で過ごす彼とは違う表情だった。
どこか冷ややかで、相手にじんわり圧をかける。ここでは、南の国で見せるような、酔いに任せて機嫌よく身を寄せて、甘えた声を出すなんてことはしない。絶対に。
へりくだる相手にはやわらかく、少しでもなめた態度をとられたら威圧する。そういった差はあれど、基本的に誰の言葉もないがしろにせずにきちんと耳を傾けて聞いていた。
「相変わらず人気ものですね」
「双子先生が来てくれたらまた違うんだろうけどね。すっぽかそうとするとどこかから俺の居場所を聞きつけて、入れ替わり立ち替わりやってくるんだ」
「南の国にもですか」
「いや、開拓を始める前に何度か。いつだったかなあ、すっぽかした年は勝手に探索されて勝手に追い回されて散々だった。だからまあ、なるべく顔は出すようにしている」
「なるほど、大変ですね」
「だから今日もレノについてきてもらってる」
なにが「だから」なのかわからないが、嫌われているより好かれているのはマシだろう。レノックスは「はあ」と気のない返事をした。
「俺で間に合ってますか」
「うん。十分だよ」
軽く俯いて、ふ、と笑う。北の国の魔法使いでも、南の国の魔法使いでもないような、その狭間に立っているような曖昧な表情。わずか一瞬、けぶる睫毛のかすかな震えから目が離せない。どこでもないような、それでいてどこにでも行ってしまえるような、そんなフィガロをつなぎ止めたくなったのか、手の甲に触れたのはほぼ無意識だった。フィガロは素早く手を引っ込める。目を丸くして、レノックスを見上げた。
「え、な、なに
……
?」
「いえ、その、手をつなぎたくて
……
」
「ええ
……
レノって案外子供っぽいところがあるよね」
いいよ、とフィガロは手に手を絡めた。
なんど同伴者を変えても最終的にはレノックスを指名する。結局、自分のそばを居心地いいと感じているフィガロを愛しく思うと同時に他者に対してかすかな優越感を覚えずにはいられなかった。
「南に向かうまでのちょうど中間地点に宿を取ってて、今日はそこで一緒に寝ようよ」
「いいですよ」
夜明け前に二人はワルプルギスの夜を抜け出して、宿へとたどりついた。到着してすぐはまだ目が冴えて、ふたり並んでソファにかけて一緒に酒を飲むだけの余裕があった。
他愛ない話を交わしていると、次第にまどろんでくる。
レノックスはフィガロの手をとった。恭しいその動作を、フィガロはぼんやり眺めていた。
すぐ近くにベッドがあるのに。
そう指摘をすればレノックスはすぐにソファから場所を変えてくれただろう。
魔法で少しも軽くすることもなく、羊飼いの仕事や、日々のトレーニングで鍛えた腕でフィガロの体を軽々持ち上げて運んでくれたに違いない。
だが今はふたりとも、大きな体を縮こまらせて、少し幅の足りていない座面で触れあう行為を始めることが嫌ではなかった。酒は飲んでいたが大して酔っちゃいなかった。
フィガロの片手をレノックスの両手が包み込んで指の先から根元までぎゅ、ぎゅ、と揉み込んで行く。レノックスの手のほうがわずかにあたたかかった。
人差し指から小指まで順番にマッサージをされたころにはフィガロもそう変わらない体温になっていた。もう片方の手も取って同じように揉まれていく。
「レノ」
呼ばれて顔をあげる。視線が合う。フィガロの表情を見ただけで、彼がされたいと思ったことを察した。顔を近づける。くちびるが触れあう前にフィガロの手が伸びてきて、眼鏡を外された。
視界はぼやけたが構わない。こんなに近くで的を外すことは絶対になかった。
フィガロは手首を振り、眼鏡を放り投げた。魔法の影響を受けたそれは重力にしたがった素直な放物線を描かずに、ふわりと浮かび、物音立てずにテーブルの上に着地した。
レノックスはくちびるを押し当てた。フィガロは目を閉じて、口を割り開いて舌を潜り込ませる。相手の舌と自分のものを絡めあう。フィガロのほうが積極的に動いて、何度も擦って絡め取って吸い上げた。鼻の抜けた声があがる。
レノックスは謙虚で無抵抗で、相手の好きなようにさせていた。合わせて舌を動かすのも控えめで、俺が口内を荒らすのを待ちわびているように、大人しく受け入れていた。
「
…………
んんっ
…
」
くぐもった声が漏れた。唾液が口から溢れそうになる。いつまでもそうしていたかったのに、ふいに、レノックスは体を起こした。フィガロはくったりとソファに体を投げ出した。
上着を脱ぎ、そのままシャツも脱ぎ捨てた。逞しい肉体が眼前にさらされる。盛り上がった胸と、引き締まって筋肉が整列して並ぶ腹、隆起した肩に連なる腕もまた、鍛え抜かれた凹凸と筋が浮いている。
適当に放り投げられた彼の衣服をフィガロは魔法でソファの背にかけてやりながら、体を眺めていた。
これだけの質量のある体をもてあましながら彼がこれから行いたいのは徹底的な奉仕だった。
彼の精神性に根付いた、フィガロには理解しがたい感情のひとつ。レノックスはとにかく他人に尽くしたがる。
奉仕がしたくて慈しみたくて仕方がないのだ。フィガロがくたびれたそぶりを見せると、その真価をさらに発揮する。
普段から誠実で実直な男である。閨に至っても変わらない。
指をマッサージするという、性的な意味合いをほぼもたない触れあいを皮切りに始まるこの行為は、ワルプルギスの夜から南の国へ戻る、どこか非日常と日常の狭間に興じることが多い。
レノックスは自分の鞄をたぐりよせ、中から小瓶を取り出した。はちみつのように黄みがかった液体が入っていた。何かのオイルだろう。
フィガロの服を上半身だけ脱がせ、丁寧に畳んだ。自分の服は適当に投げたくせに、その落差がいつも面白くて笑ってしまう。
胸の中心にオイルを垂らす。胸全体に、そして腹にも。レノックスの両の手のひらがちょうどいい強さで押しつけられ、オイルを塗り拡げられていく。彼のあたたかい手が気持ちよくて、疲労とアルコールも相まってすぐに寝入ってしまいそうになる。きっとそれを彼は許してくれるだろうが、フィガロはいつまでもこの心地よさを享受していたかった。 目を閉じて、小さく息を吐いた。彼の手が体の上を這い回る感触をつぶさに感じる。オイル自体にも匂い付けがされているのか、カモミールのような落ち着くにおいがした。
じっくり肌のうえをなぞっていた手のひらが腹の上でぴたりと止まる。
「
…
どうしたの、こんなときに考え事?」
「あ、いえ
……
ええと」
「ん?」
「ソファだとちょっと狭かったなと」
今更すぎる気づきに俺は薄く笑い、「そうだね」と同調する。
「場所を変えてもいいでしょうか」
「うん」
フィガロは両手を伸ばした。レノックスは嫌な顔一つせずに、横抱きに相手の体を持ち上げた。
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