強い日差しが照りつけるアローラで唯一雪が舞い散る山、ラナキラマウンテン。ここに凶暴なポケモンがいるという情報が入り、リコたちは調査へ向かうこととなった。
山を覆うように黒雲が立ち込め、強風と共に氷雪が飛んでいる。リコ、ロイ、ドットはしっかりと防寒着を身につけたものの、それでも体は凍えてしまう。そして、ウルトに至っては…
「…メメメメガさみぃ…」
「だから言っただろ?ちゃんとあったかい服用意しろって…」
「ロロロロイがんんな格好ならまけてられねね…」
「はあ…ほら、これ一応に買っといたから着とけ」
「マジか!サササンキュな!」
ロイは目を細めたままウルトに緑のジャケットと黒いニット帽を渡した。ウルトは急いでそれを着ると、あったけえ…とやわらかい顔になった。
「二人とも早く行こう」
「こんな寒いとこいつまでもいてられないし…急ぐぞ」
ドットが震えながら先を歩いていく。ロイとウルトが歩いてくるのに合わせながらリコも後を追う。坂道を上り、洞窟を抜けて進んでいくと、情報にあった大岩に到達した。
「ここに現れたポケモンがすごい吹雪を出したらしい…」
「どんなポケモンなの?」
「それはよく見えなかったんだって…逃げるので精一杯だったらしいから仕方ないよ」
「ま、どんなやつが相手でも俺は負けねえけどな」
四人が二、三歩踏み出すと風が一層強くなり、雪が視界を遮った。腕で顔を覆いながらリコが大岩の上を見ると、そこに一匹の白いポケモンがピンクのもやに包まれながら立っている。
「あれは…!」
「キュウコンだ…それにラクリウム・サイン…!」
キュウコンはリコたちを睨みつけながら叫び、猛烈なふぶきを放つ。その勢いに足を取られ、リコたちは後方へと吹き飛んだ。
「くそっ…!どうすんだよ!これじゃあ近づけねえ!!」
一同が俯いていると、リコのボールからパゴゴが飛び出した。テラスタルフォルムへ姿を変えると、リコたちを覆うようにまもるを展開した。見事にキュウコンのふぶきを堰き止めている。
「ありがとうパゴゴ!」
「よし、今のうちに攻撃の準備だ!出てこいアチゲータ!!」
「ヤミラミ、いくぞ」
「ウェルカモ、出番だ」
「マスカーニャ、お願い」
ポケモンたちを繰り出した四人は戦闘体勢に入る。リコがパゴゴに指示を飛ばし、まもるの解除と共に攻撃を始めた。
「かえんほうしゃ!!」
「パワージェム!!」
まずはアチゲータとヤミラミの攻撃。キュウコンにこうかばつぐんとなる攻撃を放つ。ふぶきを打ち消しながら進む二匹の技をキュウコンは寸前でジャンプしてかわした。しかし、跳んだ先に数個の花が浮かんでいる。
「トリックフラワー!」
マスカーニャが指を鳴らすと共に宙に浮いた花々が爆発を起こす。着実にキュウコンにダメージを与えて機動力を奪った。地に落ちるキュウコンの元にウェルカモが雪の上を滑るようにステップを踏みながら近づいていく。
「アクアブレイクをぶちこめ!!」
水を纏ったウェルカモの蹴りがキュウコンに突き刺さる。攻撃が決まり、リコたちが喜びの声を上げるがそれも束の間。吹き飛びながら体勢を立て直したキュウコンが吠えると、まばゆい光が辺り一帯を照らし、ポケモンたちにダメージを与えた。
「マジカルシャインか…!」
「ヤミラミ平気か!?」
ウルトに声をかけられたヤミラミは元気に鳴き声を返す。それを聞き、ウルトはメガシンカを解禁した。胸を引き裂いて出てきた鉱石からあやしいひかりを放つ。キュウコンはこれに対して再び強烈なふぶきを起こして光を飲み込んだ。先ほどよりも強大で、上から吹いてくるふぶきはあっという間にリコたちの足を埋めていく。パゴゴはラクリウムを吸収するために力を蓄えていて、攻撃を防ぐ手段はない。
「まずい…アチゲータ、ニトロチャージで走り回れ!みんなの足元を溶かすんだ!」
アチゲータは炎を纏って走り出す。しかしその炎もふぶきで弱まり、普段のスピードが出せない。さらにキュウコンが叫ぶとふぶきが強まり、アチゲータも氷漬けにして止められてしまった。
「くそ…戻れアチゲータ!」
「おい!どうすんだ!これじゃ全員凍らされて終わるぞ!!」
「くっ…そうはさせない。出てこいルカリオ!」
輝きを放ちながら現れたルカリオ。ロイはすぐさまキーストーンに触れてルカリオをメガシンカさせる。
「ラスターカノン!!」
ルカリオが両手の間に力を溜め、一気に打ち出した。ふぶきを貫いて進む一撃はキュウコンに大きなダメージを与えた。ふぶきが止み、同時にパゴゴの準備が完了した。
「よし、パゴゴ!お願い!!」
パゴゴがキュウコンの元へ向かい、光を放つと、キュウコンを覆っていたピンク色のもやをあっという間に吸い込んでいく。全て取り除かれたキュウコンは足を崩し、その場に倒れ込んだ。パゴゴもその場に落ち、リコが駆け寄って抱き上げた。テブリムを出していやしのはどうをキュウコンに使うと、キュウコンは目を覚ました。お礼を言うようにお辞儀をして、キュウコンはどこかへと駆けていった。
「よかった…」
「ふぅ…これで解決だね」
空も晴れ、まぶしい日差しが差し込んできた中、不意に彼らの足元がぐらぐらと揺れる。そして、リコの足場が崩れ出した。すると斜面に向かって雪が流れていく。リコはテブリムをボールに戻してロイたちの方へ走り出すも、雪に足を取られて転んだ。
「リコ!!」
彼女が雪に流される寸前、ロイがリコの手を取った。そのまま勢いよく引っ張り上げると、リコの腕からパゴゴが抜けて宙に浮かんだ。
「パゴゴ!」
「任せて!!」
ロイはそう言うと、踏み切って跳びパゴゴを両手でキャッチする。しかし、雪崩と化した雪の流れに揃って落ちていく。
「ロイ!!」
「くっ…タイカイデンを…」
「!まずい!リコ、下がれ!!」
ドットが叫ぶと、リコの目の前を山の上部から流れてきた大量の雪が過ぎ去った。その雪はロイとパゴゴを飲み込み、下へ下へと流れていく。
「うそ…ロイ…?パゴゴ…?」
「マジか…?嘘だろ…?」
「…はやく…はやく探しに行かなきゃ」
「待ってリコ。降りるのは雪崩が収まってからだ…」
狼狽えた様子のリコをドットは冷静に止めた。なんでなんでと異議を唱えるリコを必死に抑える。
「雪崩が収まらないとボクたちも危険だ…!ちゃんと安全を確保してから…大丈夫…ロイもパゴゴも絶対見つかる…」
「…でも」
「…あいつはそう簡単に死んだりしねえ。ちょっと待てばいいんだろ」
「…そうだね。ロイもパゴゴも一緒にいるんだから…」
リコも納得し、三人はその場で待機したのち、しばらくして雪崩が止まっているのを確認して山の斜面を降り始めた。ポケモンたちも総動員して探すも、中々見つからない。そうして雪崩が行き着いた雪の溜まり場までやってきた。一つの町程度の広さを彼らはロイとパゴゴの名を呼びながら探す。
「ロイ!パゴゴ!返事をして!!」
肺が凍るような寒さの中、必死に絞り出した声に返事はない。こうしている間にもロイたちの体は凍え、徐々に体力を奪われている。一刻も早く助けなければ。そう思って何度も声を上げるが、届いてか届かずか返ってくるのは反響する自分の声だけだ。
「ロイ…パゴゴ…お願いだから応えて…!」
すると、ルカリオが何かを感知した。リコたちを呼びながらルカリオは駆けていく。その後を追うと、雪の中から空に向かって光の線が伸びた。リコはそこに向かって両腕を大きく振って走る。雪に開けた穴を覗くと、ぐったりと倒れたパゴゴがそこにいた。
「パゴゴ…!よかった…ありがとう…返事をしてくれて…」
リコはパゴゴを抱き上げてボールに戻す。そして、パゴゴのいた場所にチャックのついた赤い服が見えた。リコは急いで雪をかき分ける。追いついたルカリオとドットたちも協力して雪をどけていく。そして、ようやくロイの顔が見えた。
「ロイ…!ロイ…!しっかりして…!」
「リコ、俺たちは足の方やるから早く引っ張りあげろ!」
脇に手を通し、リコは力いっぱいにロイを抱き上げた。すっかりと冷たくなってしまった彼の体に最悪の可能性を覚える。そして地上に引き上げると共に、リコはロイに何度も呼びかけた。しかし彼は返事をしない。
「ロイ…ロイ…待って…今あたためるから…」
リコはロイの体をぎゅっと抱きしめ、自分の体を擦り付けるように動かした。泣きながらそうしていたリコの動きは突然ぴたりと止まった。彼女は彼の胸に耳をぐっと当てる。
「リコ…?」
「動いてる…聞こえる…!ロイの…!心臓の音…!」
ロイは生きている。その確信を抱くと、冷静さを取り戻して彼のポケットからボールを取り出した。中から出てきたアチゲータは体についた氷を吹き飛ばしながら出てきた。
「アチゲータ!ロイのことあたためるの手伝って!!」
そう言ってリコはロイの後ろに回り、彼を抱きしめる。アチゲータが前からロイに抱きつき、前と後ろからロイに体温を戻していく。空の日差しがより強くなったその時、ロイは目を覚ました。
「…あれ、アチゲータ…?なんで外に…」
「ロイ…!よかった…よかった…」
「リコ…?そっか…助けてくれたんだね」
「…心配したんだよ…無茶して…」
「ごめん。迷惑かけちゃったね。そうだ、パゴゴは…?」
「ロイのおかげで無事だよ。ほんとにありがとう」
リコはロイの体をまたぎゅっと抱きしめた。密着したことで少しずつロイの鼓動は早くなっていく。暑いくらいにあたたまりそうだと心の中で思いながら、ロイは首にかかったリコの手を握った。
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