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夢篠
2025-05-24 19:01:58
2044文字
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性癖パネルトラップ⑤
頭を撫でる諸泉尊奈門
ナマエ
ナマエ
ナマエ
ナマエ
ナマエ
ナマエ
ナマエ
ナマエ
ナマエ
ナマエ
ナマエ
ナマエ
ナマエ
ナマエ
ナマエ
ナマエ
ナマエ
ナマエ
ナマエ
ナマエ
私の隣で
ナマエ
が唸っている。それはもう、うんうんと唸っている。元々馬鹿の癖に頭を使うからだ、と横目で見ていると、勢い良く振り向かれて視線が混じり合った。音がしそうなくらいに。
「な、なんだよ」
「尊奈門さ、これ、分かる?」
ナマエ
は里の娘で、それはもう猪のような粗野な娘だった。考えるより先に馬鹿力が出てくるようなそんな女だった。それなのに顔だけは良いから引っ掛かる男が山ほどいる。それが本当に腹が立つ。
「なにがだ?」
ナマエ
の手許を覗き込む。そこには何か帳面が置かれていた。見た所、薬か何かの分量を計算しているようだ。
「なんかぜんっぜん計算合わなくてさ~!この薬、劇薬だから分量間違えるとほんと危ないんだよね~」
空恐ろしい話に背筋が震える。この女、こんな猪の癖にタソガレドキでは薬師をしている。毎回毎回こうやって、薬の分量で頭を捻り回しては苦戦している。扱う物が物だけに、本当に死人が出る前に辞めて貰いたい。
「笑ってないで真面目にやれ!全く
……
、何処が分からないんだ?」
それでも付き合ってやる私は相当に気が触れているのかも知れない。
…………
惚れた弱み、というと負けた気がするから絶対に口にはしないけれど。
帳面を覗き込む私と
ナマエ
の距離は必然的に近くなる。幼馴染という関係だから許されるこの距離に、私は甘んじている。
「ここだよー。なんか計算合わなくて、これ今絶対毒でしかない!」
からりと笑う
ナマエ
に本来なら呆れるべきなのだろう、それなのに。私はこのどうしようもない猪娘を可愛いと、思ってしまっている。
「ほんっとうに馬鹿だなお前!見せてみろ!」
つい、照れ隠しに罵倒の言葉が出る。悪い癖だとは分かっているのに。帳面を覗き込みながら、計算をしていく。
ナマエ
が私の手許を見ているのが分かる。手が震えそうになるのを堪える。心臓の音が僅かに高く聞こえるように鳴っている。
「ほら、ここの分量を間違えているんだろう。この量を直してもう一回調合してみろ」
帳面の間違いには簡単に気付く事が出来た。寧ろこの程度の間違いに何故直ぐに気付けないのだろうと疑問にすら思う。こういう所が「猪」と呼ばれる所以なのだ。
「ええ?何故?ここは直した筈なのに
……
。あれ~?」
怪訝な声と共に帳面に向き合う
ナマエ
の様子を眺める。昼の日差しに照らされた
ナマエ
の髪が滑らかに輝いた。綺麗だなと、純粋に思った。
「あ、なるほど!ここの量か!ありがと、尊奈門!やっと分かった、解決!」
「っ
……
!」
至近距離で弾けるような笑顔を浴びた。ぐうっと音が鳴るように胸を絞られるような気がした。狡い、狡い、そんな顔をされたら。
「こんなのも分からないのか、馬鹿女!」
つい、憎まれ口を叩いてしまう。本当に言いたい事は違うのに。
ナマエ
が面白くなさそうに唇を尖らせた。
「馬鹿、馬鹿言わないでよ~。ちゃんと理解したからもう尊奈門には頼らないよ~!」
子供のように舌を突き出す
ナマエ
に呆れてため息が出る。でもそれ以上に聞き捨てならない言葉が聞こえた。「もう、頼らない」だと?
「この足りない頭で劇物ばかり調合しているお前が、私に頼らずまともな薬が作れるのか!?」
「いや出来るでしょ!言っとくけど私、めちゃくちゃ優秀だからな!?組頭にも褒められたわ!」
幼さばかりの顔で睨み付けて来る
ナマエ
は愚かで阿呆だが、まあ、惚れた弱み、とは認めたくないが可愛い。認めたくはないが。悔しくて堪らない。こんな猪女に。
「
…………
ふん、どうだかな」
「はあ?尊奈門くん嫉妬ですか??嫉妬ですか~??組頭に褒められる私に嫉妬ですか~??」
にやにやと腹の立つ顔をしている
ナマエ
の頭を鷲掴む。腹の立つ顔だ。本当に。こっちの気も知らないで。
「嫉妬じゃない、断じて!組頭の手を煩わすなと言っているんだ!」
「おえ、頭揺らさないで、ゆれ、おえ
……
っ」
目を回すように私が頭を揺らすせいで
ナマエ
が顔を顰める。
ナマエ
が私の動きを阻むように頭に乗せた手を押さえ付ける。触れ合った手から伝わる熱が心地良い。
「ほんと、やめて
……
、私が揺れに弱いの知ってるじゃん
……
」
青い顔の
ナマエ
につい笑ってしまった。声を上げたら
ナマエ
が睨み付けて来た。嗚呼、可愛い。
「本当にお前はばかだなあ」
ぐしゃぐしゃと
ナマエ
の髪を掻き混ぜる。
ナマエ
がぱか、と大きく目を見開いた。いい気味だ。
「なんか、そうやって撫でられると、尊奈門に負けた気分になる
……
」
困ったように眉を寄せる
ナマエ
にほくそ笑む。前、組頭が言っていた事を思い出した。「馬鹿な子程、可愛く見える」と。
あの時は、何を言ってるのか良く分からなかったけれど。今なら分かる。
あれは正しい。
ナマエ
は可愛い。
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