Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
夢篠
2025-05-24 18:59:36
2001文字
Public
Clear cache
Customize name
1412865
Customize name
性癖パネルトラップ②
至近距離で見詰め合う雑渡昆奈門
ナマエ
ナマエ
ナマエ
ナマエ
ナマエ
ナマエ
ナマエ
ナマエ
ナマエ
ナマエ
ナマエ
ナマエ
ナマエ
ナマエ
ナマエ
ナマエ
ナマエ
ナマエ
ナマエ
ナマエ
ナマエ
ナマエ
ナマエ
ナマエ
ナマエ
ナマエ
ナマエ
ナマエ
ナマエ
ナマエ
私にとって、
ナマエ
という存在は手の届かない、ずっと、ずうっと遠い向こう側にいる存在だった。
南蛮菓子のように酷い甘さと際限の無い柔らかさはいつも私を動揺させ、己を嫌悪させた。私のような存在に
ナマエ
が関わってしまったら、何か途轍も無く悪い事が起きてしまうのではないかと思ってしまう。美しくて、だからこそとても触れられない。こんなに私を臆病者にさせる
ナマエ
という存在が酷く恐ろしかった。
「雑渡さま」
鈴の転がるような音で
ナマエ
が私の名を呼ぶ。彼女は私付きの側女として宛てがわれた娘だった。つまりお飾りの、私の妻だった。様々な思惑の絡み合った結果、彼女は私の屋敷に建前としては女中として入れられた。けれどその手はとても綺麗なままで、
ナマエ
は本当は何一つ身の回りの事の出来ぬ身の上だった。
「
……
雑渡さま、」
触れ合う事は怖くて出来なかった。けれど欲に打ち勝つ事も出来ない。人間の身体半分程の距離感で私と
ナマエ
は並んでいた。
ナマエ
の膝の上には大きな毛玉がいた。日々の無聊を慰めるために、私が与えた物だ。或いは彼女の纏っている衣、彼女の装身具、彼女の気に入りの草子もその他何もかも、私が贈った物たちだった。彼女の全ては私の贈った物で構成されている筈なのに。私は彼女を芯から手に入れる事は出来ないだろう。
「毛玉は元気?」
「もう、最近雑渡さまが毛玉と呼ぶからそう呼ばないと来てくれなくなりました」
苦笑する
ナマエ
に胸が痛くなる。それは物理的な痛みというよりはもっと心理的な痛みの気がした。
「
……
ナマエ
は、毛玉の事、なんて呼びたかったの」
「そうですね、雑渡さまに頂いた猫さんなので『こん』さんとか『こな』さんとか」
悪戯っぽく笑う顔は魔性のようだ。咄嗟に逃げるように視線を逸らしてしまう自分が情け無く思われた。
「なん、か、恥ずかしいな
……
。やっぱり、毛玉にしようね」
「あらあら」
笑う声は玉の転がる音のようだ。その笑顔は柔らかく、穢れを知らない。私は触れられない。怖くて。
ナマエ
が私を見詰める目が恐ろしい。そこには何の感情も読み取れないからだ。私の事を何とも思っていない目だ。だから私を見るその目が怖くて、私は彼女に近付けない。
「
ナマエ
、ねえ、
ナマエ
、」
此方を向いて、とは言えなかった。
ナマエ
は毛玉を撫でているから、その目は私を見ていなかった。安堵している反面、欲が出る。此方を見て欲しい。でも見ないで欲しい。
「なあに、雑渡さま」
何も知らない顔が私を見る。無知な顔だ。何も知らない何も出来ない無知で無力な。微笑む顔に乗っている感情は真実なのだろうか。
「
ナマエ
、此方に来て」
自分から距離を詰める事は出来なくて、結局は
ナマエ
に委ねてしまう。
ナマエ
が僅かに逡巡したのが分かった。胸の辺りが少し痛くなった。
「なあに、雑渡さま」
同じ言葉を繰り返し、
ナマエ
がそろ、と躪り寄った。まだ少しだけ残る距離は私と
ナマエ
の間にある距離の証左なのだろう。そこだけは、私が踏み越えなければならなかった。一歩だけ
ナマエ
に近寄る。私たちの距離は無くなった。稜線が触れ合い温もりが伝わる。自分の体温が少し上がっている気がした。
「
ナマエ
、私を、見て」
温もりが分かち合える距離で
ナマエ
を呼ぶ。
ナマエ
の視線がゆっくりと動く。私の目を曇りの無い瞳が覗き込む。
「雑渡さま、いつもよりお顔が近いわ」
長い睫毛が揺れているのが見える。扇のように影を作るそれを、呆然と眺めていた。初めて覗いたその瞳は、とても美しかった。綺羅綺羅としていて。
「そうだね、いつもより、近い」
「恥ずかしいです」
そう思っていないような顔で
ナマエ
が呟いた。顔を赤らめる事も逃げる事も無く。唇すら触れ合いそうな距離で私たちは見詰め合う。
ナマエ
が緩やかに笑んだ。至近距離で視線が密に絡み合う。
「私を見て」
「見ているわ」
「いいや、見ていないよ」
そう呟くのが精一杯だった。
ナマエ
は私の事なんて見ていない。だって膝の上の毛玉だって見ていない。彼女の纏っている衣、彼女の装身具、彼女の気に入りの草子、何もかも、彼女の眼中には無いのだろう。
「もう、雑渡さまったら酷いのね。
ナマエ
は雑渡さまの事こんなに想っているのに」
「だって、
ナマエ
は私の事ひとつも見ていないじゃない」
言葉にするのが精一杯だった。そうだ。
ナマエ
は私をひとつも見ていなかった。睫毛が触れ合うくらいの距離で私たちは言葉を交わす。見て欲しい。私を。私の心を。
「ねえ、
ナマエ
、私を見て」
ナマエ
が微笑む。とても、綺麗に。
Reaction
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.
Custom color
Reset color
広告非表示プランのご案内