Maisie_Lyju
2025-05-24 13:44:10
3142文字
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異世界転生ヒカセンは逆ハーを目指さない①

乙女ゲームの世界に転生しちゃった光の戦士(脳筋ララフェル)は逆ハーなんて興味ないので全力でアゼム(悪役令嬢)とエメトセルク(王子ってか魔王)をくっつけます!

プロローグ:光の戦士、(どういうわけか)転生する

 私の名前は、オリヴィア・ブライト。田舎の羊飼いの家に産まれたごくごく普通の女の子! お菓子作りと木登りが得意だけど、勉強はちょっと苦手。テヘ。そんな私なんだけど、じつはこの度、星の首都、アーモロートにあるアナイダ・アカデミアという学園から、特別に編入を許可するというお知らせがきたの! なんでも私の魔法は、星でも稀な「光魔法」なのだとか。いつも色んなものを爆破しちゃってたけど、どうやらそれは、私が光魔法を制御しきれていなかっただけなんだって! 学園ではその魔法の制御についても学べるって知って、私、決めたの! ちょっぴり不安もあるけれど、首都に旅立って、学園に入学するぞって!
 入学する…………
 ぞ……じゃ……ねーよ!!!!!
 なにこれ?!!!!
 なんで、どうしてこんなことに!? いったい何が起こってるわけ?!
 わ、私は……ほんとはエオルゼアの英雄にして千年戦争を終わらせし者、紅蓮の解放者であり、闇の戦士の異名を持つ、世界を救いし暁の英雄、ヒカリなんだが!!!
 ………
 は! もしかしてこれが噂に聞く異世界転生?!!!!
 ロウェナ商会ですら引き取らない、ゴミ扱いされてるアラガントームストーン『同人』……その一大ジャンル、おりじなる。そのおりじなるの多くを占めていたのが異世界転生……
 大型乗り物に轢かれた人が、男ならチート能力授けられて魔王のいる異世界に飛ばされて無双する、女ならハイスペ男いっぱいの学園がある世界に飛ばされて逆ハーレムするっていう、あの、異世界転生ってやつ??!!
「リヴィどうしたの? 傷はたいしたことないけど、やっぱりお医者さまに診ていただいたほうがいいかしら?」
 心配げに覗き込んでくるのはオリヴィア・ブライトの母親だ。
 私ことオリヴィア・ブライトは、先刻、木登りをしていた。幼い頃からよく登っていた木で、もうすぐこの田舎を離れて都会に行くという感傷から、その景色を目に焼き付けようと、いつもよりずっと高くまで登ったのだ。
 しかし、オリヴィア・ブライトの体重に、高方の細い木の枝は耐えられなかった。それはボッキリと折れて、頭っから真っ逆さまに地面に落ちた。
 そして頭を強かに打ちつけたショックで、自分の前世が、エオルゼアの英雄であったことを思い出してしまったのだ!!!
 オーマイメネフィナ様! いったいこれは何の因果か!
 私が横たわるベッドはオリヴィアが毎日寝起きしてきたもので、この母親も確かにオリヴィアの母親だ。
 私には、オリヴィアとしての今までの人生の記憶もしっかりある。普通の女の子としてついさっきまで成長してきた記憶だ。
 でも! オリヴィアは15歳なのだ!
 申し訳ないが、ヒカリは27歳でしたので! ヒカリの記憶を取り戻した私には、どうしたってもう、ヒカリとしての自我の方が勝ってしまうわけで!
 27歳、ララフェル・プレーンフォーク、ヒカリリ・ヒカセン、通称ヒカリ。それが私。
 ピンク髪のスレンダーヒューラン体型美少女オリヴィア、ごめん! なんかもう違和感しかない! 何この細い指! どこいったの私の自慢の太鼓腹!
 けど、それをこの母親に言っても仕方がない……
「ど、どうもしないよ、気を失ってる間に変な夢みて……
「変な夢?」
「え、あ、うん、私のこと友だとか言って追っかけ回して来る金髪野郎とがちんこ勝負して疲れて寝そうになってたら転移装置降ってきて……
 ラグナロクに帰還できると思うじゃん! それが、まさか、転生しちゃうなんて……。暁の英雄ヒカリ、あそこで死んじゃったってことじゃん、まじかよ……
 でも、終末はもう来ない、なら、私は役目は果たしたんだよね……
 エメトセルクの宿題、片付けられなかったな……。見たかったなー。黄金郷。
 いや? でもそもそもゼノスはエメトセルクの曾孫だし? ゼノスのせいで死んだってことはさ、元を辿ればエメトセルクのせいでもあるわけで。
 くっそ、エメトセルクめ……
 いやいやいや、エメトセルクのことはさ、じつは今はもうすごく、好きなんだ。
 第一世界で出会ったときは超絶胡散臭いおっさんで、どっちかっていうと毛嫌いしてたけど、アーモロートの街を見たときにさ……どうしても、彼の喪ってしまったものの大きさを思い知らされたというか……。でもだからって、世界を譲るわけにはいかない。だから戦ったけれど、もうそこに憎しみはなくて。
 エルピスで再会して、向こうにとっては初対面がそっちなんだけど、第一世界のときとは違って、一緒に過ごす時間が長くて。真面目で、それ故に不器用で、誰よりも純粋に星の為を思っていて、そんな彼が、あそこまで変貌してしまうことを思うと、もう、そこに彼を嫌う気持ちなんてどうしたって生まれない。
 ウルティマトゥーレでは、道を繋いでくれて、だからこそ、私は成し遂げた。
 エメトセルクがいなければ、世界は救えなかった。
 だから、今の私には、エメトセルクは大事な大事な仲間の一人だ。
 エメトセルクだけじゃない。ヒュトロダエウスも、ヴェーネスも。
 私のいなくなった世界で、きっと暁の英雄が命をかけて世界を救ったと喧伝されているのだろう。
 でも違う。
 暁の皆んなと、星を愛した古代の人たち、皆んなで救ったんだ。
 世界はそうして救われたんだ───!
 ん? もしかしてこれは、やり遂げた私へのご褒美なのだろうか?
 あーはん? 第二の人生を、今度は星の命運なんか背負うんじゃなく、青春学園生活しながらウハウハ暮らせっていうこと……
 ほほう。
 ……なるほどね。
 やってやろうじゃないの。
 アラガントームストーン同人、集めに集めたそれを片っ端から読んだ私に、異世界転生ごとき、御せぬはずがない!
 キラリ目を光らせた私に、オリヴィアの母親が眉を顰める。
「本当に大丈夫なの? なんだか、その、表情とかがあなたらしくないわ」
「大丈夫。私は木から落ちて頭を打ったおかげで真理の扉を開いただけ」
 オリヴィアの母親はますます怪訝な顔をしたけれど、私は気にせずむくりと起き上がり、違和感残る長い手足ですくりとベッドの脇に立った。
 真理……それは、筋肉は全てを解決するということ……。どんな困難な状況も、逆境も、筋肉さえあれば乗り越えていける。
 歴戦の冒険者である私が言うのだから間違いない。
 ララフェル筋肉なかったやろがって? んなわけあるか! あのムチムチボディの下には確かにあったのだ。種族値を僅差にまで縮めるだけの筋肉と腱がな……。ただその上に餅のごとき肌がのっかってしまうのがララというものだったのだ。だが今はヒューランときた。この目で、筋肉の盛り上がりを確認できる体を手に入れたわけだ!
 もはや我に死角なし! 異世界転生? 洒落臭い。この程度のコンテンツ、私にこなせぬはずがない!
 その為にも、細身ヒューラン体型女子、それは今日にて卒業だ。
 オリヴィア・ブライトは光魔法の才能を認めらて首都に招かれているが、ヒカセンとしてのこの記憶があれば、タンク職や近接職のスキルやアビリティも使えるはず。くふふ。
 とにかく、アナイダ・アカデミア入学までに、筋トレしよう。
 1に筋トレ2に筋トレ3、4も筋トレ5に筋トレ、それが私を英雄たらしめていたのだからな! ガハハハハ!
 このコンテンツ人生MLマッスルレベルの暴力できっちり攻略して生き抜いてやろうじゃないの!
 もちろん、逆ハーなどを目指す気は毛頭ない。
 やるのはチート能力で無双の方だ!