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yossy
2025-05-23 22:50:22
2799文字
Public
自創作
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Cut a Cherry Pie.
とろける欠乏症と美女られの間の閑話
野佐和大樹の話。同僚も出てくる。
今日はマイナーリーグの試合日だったのだが、あいにくの雨で室内トレーニングをこなす。
チューブトレーニングをこなしていると、ふと人影が掛かった。
「やぁ!ノザワ!調子はどうだい?」
「やぁ、オスカー。調子は
…
ぼちぼちだよ」
ロサンゼルス・ダヴクローズ背番号93。
ファースト、"オスカー・アームストロング"。
類い稀な筋力から放たれる長打と、陽気でムードメーカーな性格で、
多くのファンを獲得するダヴクローズの頼れる古参。
現在は先日の試合で負傷した右足の経過観察のため二軍チームで調整を行っている。
ユースの頃からダヴクローズに所属しているため、ロサンゼルスの事やチームのことに詳しい。
ただ道案内だけは絶望的で、二軍のスタジアムでさえスタッフが彼を探しに駆けずり回るほどだった。
「一緒にトレーニングしても?」
「もちろん」
彼はウェイトトレーニングをしながら雑談をする。
「アメリカの生活は慣れたかい?」
「みんなのおかげで慣れてきたよ」
「それはよかった!」
ニコニコと人畜無害な笑顔におもわず目を細める。何か話題はないかなと頭の中を探っていると、
「昨日の試合、少し元気が無さそうだったから」
と言われ、昨日のことを思い返す。
ここ数日、休日の日に起きた"あの出来事"が頭の中にいっぱいで、
確かに側から見たら元気がないように見えたかもしれない。
どう返そうか考えていると、
「やっぱり何か悩みがあるのかい?
ノザワさえ良ければ相談に乗るよ。
ここで話せない事だったら、私の家に招待したっていいさ!今日は妻がチェリーパイを作って待っているからね」
彼の性格上、過保護なくらい親身になって気にかけてくれる。
「それじゃあ折角だしお邪魔しようかな」
日光浴が出来そうなくらい眩しい笑顔を向けられた。
その後トレーニングはつつがなく終わり、その日は解散となった。
オスカーに住所を聞き、スマホの地図アプリを確認しながら何とか家に着く。
「みんな、帰ったよ〜!」
「お、お邪魔します
…
」
玄関を豪快に開けるオスカーの背中から中を伺う。小さな女の子が二人走ってきて、オスカーに抱きついた。
「パパ!
…
お客さん?」
「紹介するね。長女のエリー、次女のミリーだ」
「初めまして! エリー7歳!」
「こんばんは
…
ミリー、5歳です」
元気そうなエリーと大人しそうなミリーに出迎えられる。
「初めまして、野佐和です」
「ノザワ
…
?」
首を傾げるミリーにオスカーが補足する。
「彼は日本から来たパパの同僚だよ」
「!!、ニンジャ!?」
「ち、違うよ!?」
勘違いしたままのエリーをオスカーはひょいと抱き上げながら、リビングに案内される。
木を基調としたナチュラルテイストのデザイン、
ところどころに子供たちがクレヨンで描いたであろう作品が額に入れられて壁に飾られている。
ふわりと小麦粉の香りが部屋に漂っている。
「みんな、パイが焼けたわよ。あら、初めまして。シンディーよ」
綺麗な金髪ロングを肩に結んだ、オスカーの奥さんと挨拶をする。
「初めまして、野佐和です。お邪魔してます」
「ようこそ! 貴方の家みたいにくつろいでね」
オスカーがエリーを一度床に下ろして近づいてくる。
「シンディー、パイは俺が切り分けるよ」
「ええ、お願いねオスカー」
流れるように二人の熱いキスを見せられ、目のやり場に困る。
下から腕を引かれ、エリーに椅子に案内されて座らされる。
「ノザワは手裏剣使える?」
「手裏剣は使えないけど、ピッチャーだよ」
「じゃあニンジャだ!」
「忍者ではないかな
…
」
「変化球得意じゃないの?」
「と、得意だけど」
「じゃあニンジャだ!」
「困ったなぁ」
ものすごい勢いのエリーにたじたじになっていると、丁寧に切り分けられたパイが皿の上に乗せられ目の前に置かれた。
中にはぎっしりとさくらんぼが詰まっていて、焼きたてのパイの匂いとさくらんぼの香りに自然と空腹感を覚える。
「どうぞ、召し上がれ」
「いただきます」
添えられたフォークを手に、一口分に切り分ける。フォークが当たるとパイが崩れて、溢さないようにしながら口に入れる。
「!、美味しい!」
「口にあったようで良かったわ」
サクサクのパイと、熱が通ってジャムのようなチェリーの甘み、下に隠れていたクリームと合わさってハーモニーを奏でる。
アクセントでパイとは異なるナッツの食感もあって、口の中が楽しい。
「ノザワ、コーヒーでいいかい?」
笑顔の夫妻にこくこくと頷く。
「中にナッツか何か入ってるんですね」
「そう! カスタードクリームに隠し味で
クルミ
walnut
が入っているんだ。妻お手製のチェリーパイだからね」
キッチンからホットコーヒーが満たされたポットを持って、オスカーがマグカップに注いでくれる。それを受け取って一口含む。
『美味しい
…
』
思わず日本語が溢れる。
エリーが椅子から降りて近づいてくる。
「オイシイは、yummyってこと?」
「うーん、Deliciousの方かな」
エリーは頷いてから椅子に戻り、パイを一口食べて、
「オイシイ!オイシイ!」
と繰り返しながら咀嚼していた。
軽い雑談を交えながらゆっくりとチェリーパイを堪能する。
「それで、ノザワを困らせる悩みは一体なんだい?」
コーヒーを一口飲んでから、どう説明しようかなと思考する。
女性の体になったのはぼかすとして、やんわりとした表現にしながら説明をする。
「ふむ、つまりスパイダーマンになってしまって、日常が一変してしまい、家族や友人との付き合いに困惑してしまったと」
要約してくれたオスカーにエリーが、
「アベンジャーズ
…
!?」
と相槌なのか本当にそう思ったのか驚きの顔でこちらを見つめてくる。まぁ概ねそうだからいいか
…
。
「何事も対話じゃないかしら?
お互いの考えをしっかり伝え合って、折り合いをつければ、きっと相手はわかってくれると思うわ」
「そうだね、相手には相手なりの理解があるし。
喧嘩の仲直りに近いかな」
オスカー夫妻の大人の意見にゆっくり頷く。
そうだよな、落ち着いて話せばいいんだった。
「喧嘩? 仲直りの後はハグしなきゃ!」
「仲直りのキスは?」
真面目な眼差しのエリーとミリーがお手本と言わんばかりに目の前でやってくれる。
「は、ハグ
…
?キス
…
?!」
俺の慌てようにみんなが微笑んでいた。
その後夕ご飯の誘いも受けたが、予定があるからと丁重にお断りした。
「次はご飯食べようね!」とエリーとミリーに挨拶する。
なんて伝えようかなと思考しながら、1軍のアウェイゲームの開始時刻が近づいてきたのを確認して急ぎ足で帰路へと向かった。
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