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ゆたか
2025-05-22 17:21:04
1109文字
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無題ss①
女装指南
「雑渡さんは女装、お得意ですか?」
真剣な顔で聞いてくる伊作くんに思わず身体中の包帯が飛び出てしまうほど驚いた。
なぜそんなことを聞くのかと問えば今度実習で女装して街に出るらしい。
うまくできなければ補習もあるとの事で一回でなんとかしたいという事だ。
「私に聞くのが間違っているんじゃない?」
「でも!組頭でしょう?やはり色々と長けているかと思いまして!」
ぐいっと詰め寄る伊作くんから目を逸らす。
確かにそういう術を得意とする者もいるが、プロ忍だと女装どころの話ではない。学園ではそこまで教えはしないだろうが、だからこそ合格の基準が不明だ。
他の面々はそれなりにうまくやるか力技で合格しそうだがそんな器用さも強引さも伊作くんには少し足りないように思える。加えて不運だ。それらを合わせて考えると単純な女装でも合格するかどうかも怪しい。
「
…
そこが可愛いんだけどね」
ぽつりと思ったことが口から盛れ、それを聞き止めた伊作が少し顔を赤らめながら乗り出した身を引いた。
「えっと
…
今はそういう話ではなく!僕はなんとしても合格したいのでなにか秘策を授けていただきたいのです!」
「秘策と言われてもねえ」
学生相手に多くは求めないだろうし、要は女性と思わせればいいということだろうか。そうすると
…
。
「伊作くん」
「はい」
呼びかけると伊作くんはすっと座り直した。きゅっと口を引き結びこちらの言葉を待っている。
私はすうと息を吸い、喉の奥に意識をめぐらせながら声を出す。
「要は、男性とバレなきゃいいということだね。それならまずは声や口調を変えればいいのではないかな?」
「お
……
おおお!」
伊作くんは大柄な身体から出される細く高い声に驚いたのかキラキラと目を輝かせながら感嘆の声をあげた。
「雑渡さん!すごいです!女性の声です!もしや女装もお得意なのでは?」
かぶりつく伊作くんを制し、声を戻す。
「落ち着いて伊作くん、こんな大柄で風体も危ない女、誰も寄ってこないでしょ。でも声真似で敵を油断させたり誘き寄せたりはできるよ。女装で油断させても、いざ話しかけたら野太い男の声じゃ逃げられるでしょ」
「
……
なるほど
……
!あ、あ。あー
…
」
助言が合っているのかわからないが、伊作くんは真剣に声を出す練習をし始めた。時々相槌を打ちながらその様子を目を細めて眺める。
まあ顔立ちは整っているし、化粧すればそれなりに映えるだろう。着慣れない着物でぎこちなく歩く姿も初々しくて可愛らしいことだろう。実習の日はいつか聞いておかなくてはならないな。
そんなことを考えながら暖かな日差しの入る医務室で手元の雑炊を一口すすった。
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