ななき
2025-05-21 19:49:01
6965文字
Public 吸死
 

くそ砂観察日記

(ドラロナ) 微ホラー表現あり。
ドラルクへの反撃のためにイタズラ記録をつけるロナルド君。の、はずだったが…。という話。
.
アンソロ寄稿の没稿。もったいないので一緒に公開します。
この由来の関係上、竜のおまじないは夢の中と重複するモチーフ・表現が頻発します。

△月八日
今日からドラ公の野郎の妙な行動を記録する。
イタズラをしたときに証拠として問い詰めるためだ。この間の仕込みに一週間かけたとかいう、ひたすら俺に迷惑なピタゴラ○イッチにムカついたので。緑の悪魔で部屋埋めやがって。
この日記で、何時何分何秒世界が何回回った時でちゅか~系言い逃れにきっちり言い返してやる。

△月九日
退治用の資料を開いたらアウストラロピテクスの折り紙が落ちてきた。なにがしてえんだ。殺す。

△月十日
引き出し開けたらダイオウグソクムシのフィギュアが飛び出てきた。バネでビョンってなるようにわざわざ改造されていた。昨日よりは凝ってる。三回殺す。


△月十一日
カーテン開けたら昔作ったイケメンロナルド様グッズ(Tシャツ)が窓に張り付けられていた。棺桶に一発蹴りを入れておいた。罵詈雑言が返ってきたが知るか。

△月十二日
記録事項特になし
 
△月十三日
記録事項特になし

△月十四日
記録事項特になし
余計なことをしないわけじゃないが、いずれもその場限りで思いつきの単発。練ってこい、もっと。
この三日間、緊急出動が続いたから配慮して、とかでは、ないよな。ないない。

△月十五日
ひとりで出張退治。ひさしぶりに顔を見なかった。

△月十六日
普通のいたずらのみ。緑の悪魔なし。

△月十七日
パトロールから帰ったら、物凄い非常識な物を見る目で見やがった。動くな、と言われて、頭から背中から肩からバンバン叩かれた。頭からかぶった埃か蜘蛛の巣でも払うような感じで。当然殺したがそれでも止めない。ジョンまで足元に来て、ちょっと我慢してねロナルドくん、なんて言う。ジョンに言われたら仕方ないので、ジョンを抱えておとなしくバシバシされた。一通りバシバシしたドラ公は、キッチンから塩を持ち出して風呂に行き、ザバザバと水音をさせて戻ってくるなり、しかめっ面で「風呂いけ」と俺に申しつけた。

塩が気になって風呂のお湯をちょっとだけ舐めた。案の定しょっぱかった。いたずらにしては煽りもなにもない。が、記録しておく。


△月十八日
郵便物を仕分けしていたドラ公が、そのなかのいくつかを即、丸めたのをみた。チラシも暇つぶしに喜んで読むタイプの癖に珍しいと思った。
そんなに不愉快なものがきたのだろうか、と気になって事務所のゴミ箱を見たが何も無かった。確かに捨てたと思ったのに。空っぽだった。わざわざ拾ったのだろうか。

△月二十日
また風呂に塩が入っていた。唐揚げとか最初に塩胡椒するよな。もしかして俺、下味付けられてる?

△月二十一日
郵便にイタズラ書きらしきものが混ざっていた。らしき、なのは字っぽいのに読めなかったから。俺も字、下手だし、一生懸命書いた何か依頼だったりしたら申し訳ないからなんとか読めないか頭をひねってたら、ドラ公に奪われた。最近入ってるイタズラだよって。一昨日のもそうだったのかな。

シンクで何か燃やした跡発見。
わざわざイタズラ書き燃やしてたりしないよな。部屋で火使うなって言っとかなきゃ。火事になったらイタズラどころではない。

△月二十四日
一日原稿。砂おじさんはジョンと一緒に、ドラドララジオ局とかごっこ遊びを始める。俺のおつかいの失敗をリスナーからのお便りネタにするんじゃねぇ。確かに小松菜とチンゲンサイ間違えたけど! うまかったからいいじゃん!

エレベーターの音が何度もしていたのに来客なし。ラジオごっこ聴いて帰っちゃったんじゃなきゃいいけど。依頼人だったら売上に実害だ。

△月二十五日
ドラ公も連れて退治。退治については問題なし。
帰りに小さい神社があったのでお参りだけしようとしたら止められた。ジョンもダメっていうし、ドラ公はクソ真面目な顔で首を横に振るので、お参りを諦める。それだけ。

△月二十六日
昨日の神社が気になって、パトロール中に昨日の道に入ってみた。見つからなかった。この間の出張退治でお参りした神社によくにていた気がするんだけど。変わった形の鳥居とか、お社の古びた感じとか。あそこの神社の人と話したんだよな。俺のこと前から見てたって。それから。なんだっけ。

ギルドに戻ったらドラ公がいて、俺を見るなりすっと表情を消した。アイツ表情がムダなくらい動くから、たまの真顔が怖いんだよ。隣に座ったら、神社にいったな? と聞かれる。行ったけど見つからなかったと答えたら、そうだろうな、後ろにいるからな、って聞こえた気がするんだけど。ジョンが無言で俺の肩に上ってずっと後ろを見ていた。サテツが飯食ってたからそれだよな? そうだと言って欲しい。

事務所がノックされたので出てみたが誰もいなかった。ひさしぶりに砂のイタズラか? 経過観察。


△月二十七日
ドラ公とジョンの内緒話がいつもより多かった気がする。やめろよ寂しい。
事務所にて、また無人ノックあり。ドラルクは部屋にいたから、あいつではない。ピンポンダッシュってやつだろうか。ピンポンじゃないけど。流行ってんのか?

△月二十九日
いやに熱心に事務所と廊下を掃除していた。暇つぶしに家事するやつではあるけど、今日はなにか油汚れがべったりついたときみたいな念入りさだった。いたずらの仕込み?

最近くだらないイタズラがない。何してるんだ? ってかんじの奇行はあるのに、ひとつもイタズラにつながらない。デカいのがきたらこの記録が役に立つかもしれない。

△月三十一日
三日連続で、事務所に入る直前でドラルクに呼び止められて肩にゴミがついているぞ、と払われる。さりげなくだが、ロナルド様の目はごまかせないぜとその度にジャケットを改めているが、半額シールも張り紙もくっつき虫もない。触られただけ? なんで?

〇月一日
パトロールについてくる。やたらと後ろ気にしてたの何。
肩四日目。

〇月二日
今日もパトロールについてくる。今日、配信てカレンダーに書いてなかったか、と聞いたら諸事情で休みだと。別にいつものパトロールだし、ゼンラのおっさんしばいたくらいで何もなかった。
肩5日目。

風呂に入る前に草を渡される。風呂に浮かべて入れとのこと。ハーブ? のいい香りがした。

〇月三日
毎日、肩に触られるので、これ以降記録しない。嫌でもないし、ドア開ける前におとなしく肩を払ってもらえばいいし。

〇月四日
ドラ公が留守。
だからってわけでもないだろうけど、部屋に入ろうとしたらキンデメさんに止められる。事務所の外で体をはたいてこいって。
なんで、と聞いたら花粉症だと。そっか、と言われた通りにしたが、金魚に花粉症ってある?

〇月七日
俺が寝ているところを覗き込まれてた。現行犯で捕獲。何しようとした、と当然聞いた。
ドラルクは、自分に不都合なことはその十倍の言葉で煙に巻くのが常だ。適当についたホラがバレそうなとき、いたずらがバレたとき、親父さんからの電話を切り上げるとき。それなのに今日は黙ってた。正確には、俺がちゃんとここにいるか不安になった、と一言だけ。無言の後、起こして悪かったね、おやすみ。といわれて何も言い返せなかった。久しぶりに普通のイタズラかと思ってちょっと嬉しかったのに、なんだよ。

〇月九日
ひとりでパトロール。砂はクソゲーコラム原稿の締切間際で予備室にこもっていた。
パトロール中、何度か呼びとめられた。
退治人は人気商売だ。普段ならどんな呼び方されても応えるんだけど、今日は気づかないふりをした。呼ぶ声が絶対に人が立てないはずの隙間からしていることと、ドラ公の声に聞こえることが怖くて。
声がドラ公に似ているだけの市民の方だったら本当にごめんなさい。でもブロック塀の間、三センチくらいの隙間から聞こえるのは絶対におかしい。いや、シンヨコだから、薄っぺらくなるのが性癖の吸血鬼がいないとは限らないけど。
でも、あんなにはっきり聞こえる声なのに周りの人が全然反応しないし、気のせいかもしれないけど声がすると水をかぶったみたいに寒くなる。イヤな感じがする。

〇月十日
今日も俺を呼ぶ声がしていた。全部、聞こえないふりした。
帰宅したら、原稿明けで凶悪なクマ作ったドラ公がドア前で待ち構えていた。この間と同じようにバシバシバシバシ全身はたかれる。殺そうと思ったけどあんまりにも真剣なので黙ってバシバシされた。
砂が外出していないことは、キンデメとメビヤツが保証してくれた。じゃあ、やっぱりあの声はお前じゃなかったんだな、とこぼしたらすごい剣幕で問い詰められた。なんでそんな怒るんだよ。
何度も呼ばれたこと、声が似ていたこと、返事はしなかったことを答えた。姿が見えないなら絶対に返事するなって何度も何度も言われた。

真っ赤な瞳が燃える炎のようだった。


〇月十一日
Y談おじさんと野球拳が合流するのを阻止。野球拳の野郎に、体調が悪くないか、と聞かれた。何だよ急に。ドラ公とのアイコンタクトはなんだったんだ。

洗面所で、顔色が気になって鏡をみていたら背中を誰かに触られた。ドラ公だと思った。鏡に映らないのを使ったちょっかいだと。でも裏拳は空振り。
キッチンでジョンと料理していたあいつに、今、洗面所で俺の背中触っただろ、と言ったときの反応が気になる。ジョンもドラ公もなんならキンデメと死のゲームまでシンとなった。
あの時、一瞬、ドラルクの瞳孔が縦に裂けた、ような。小さすぎてはっきりわからなかったが。蛇、いや、竜だ。竜を一瞬思い浮かべた。竜の一族、なんて名乗ってるからの連想だろうけど、あの爺さんならともかく、こいつにそんな強そうなもの思い浮かべさせられて悔しい。

〇月十二日
隙間から俺を呼ぶ声が止まらない。これ、さすがに砂の仕業ではない。

〇月十三日
風呂、時々しょっぱくないかを確認していたが、しょっぱくないわけだ。酒を入れられていた。本日、ちょうど入れているところに遭遇。私とジョンも入るからな。知らんのか若造、日本酒風呂は肌にいい。などとほざく。ジョンと風呂うらやましい。
やっぱり下味つけてるんじゃないかと不安。俺食われんの? 食いかえすが? まずそうだけど。

〇月十五日
もうずっと呼ばれている。
寝ている間も呼ばれている気がしてよく眠れなかった。

〇月十八日
呼ぶ声が響いていて頭が痛い。

〇月十九日
眠れていないことをドラ公に気づかれた。ソファでうたた寝していたらうなされ始めたらしい。揺すられて起きたらジョンが心配そうにしてくれてた。
その後ろでドラ公はなぜか超不機嫌。チョロルドだの何だのと突っかかってくるので喧嘩になりかけたが、ジョンに止められる。ドラルク様はロナルドくんに怒ってるんじゃないんだよ、って。ドラルクにもそういう態度良くないって言って黙らせていた。
ジョンは天使。

〇月二十日
爺さん襲来。ドラ公が呼んだらしい。医者の診察のようなことをされる。
「うん、めちゃくちゃ好かれるタイプ」「今、ちょっと厄介な子にめちゃくちゃ気に入られてるね」「高等吸血鬼に目印つけてもらうのがおすすめ」だそうだ。分からなくてハテナを浮かべてた俺の隣で、ドラ公は頭かかえてた。
ドラ公と爺さんだけで何か話してたけど、「がんばれドラルク」「彼は納得しません」「そう?」という部分しかわからなかった。
最後に爺さんにマントでくるっと包まれて息を吹きかけられたら、耳鳴りのように聞こえていた、俺を呼ぶ声が止まった。ありがたい。礼を言ったら、「ドラルクもできる。やり方違うけどもっと強力」とあの真顔で言い残していった。爺さんより強力にできる? あのザコが?

〇月二十一日
久しぶりに記載事項なし

〇月二十二日
記載事項なし
明け方、またドラ公がソファの横に座りこんでいた。俺をみていたのだと思う。ふっ、と息をかけられた。爺さんの真似だろう。マントも貸せよ。


〇月二十五日
夕方から例の声がしはじめる。
だれもいないのに背中や肩を叩かれるし、足を引っ張られる。ドラ公のアレじゃだめなのか。

〇月三十日
数日開いた。ドラルクのイタズラ記録ではないが、あったことを記録する。

また声がしはじめた日、ドラルクに言うか迷ってたら、パトロール中、すぐ後ろから呼ばれたのだ。
なんだよ、ってつい返事して振り返ったとき、少し離れたところで通りがかりの人と話しているドラ公がみえた。こちらに気づいて、落っこちそうなほど目を見開いたあいつが駆け寄ってくるよりはやく、耳元で、つかまえた、ってキャラキャラ笑う声がして……俺は知らない日本風のお屋敷の中に立っていた。
そこから、追いかけっこだ。何と追いかけっこしていたかは、わからない。裸足の足音、順番に障子を開いて近づいてくる気配、じわじわと寄ってくる黒々とした水溜まり、襖を叩く音、生臭い風、キャラキャラという出所のわからない笑い声。そういうものとの追いかけっこだった。
遊ばれていた。あれは猫が、獲物を嬲り殺すときの遊び方だ。

最終的に、部屋に追い込まれた。襖を開けた先、その何にもない暗い部屋には、ドラルクのようななにかが立っていた。銃を使うまでもなく、それが偽物なのはわかった。あいつは、あんな気色の悪い笑い方はしない。
「おかえり」
ドラ公もどきはそう言った。あの隙間から聞こえていた声だった。真冬に鶴見川に飛び込んだときより体が冷えた。
「おカえリ」
不気味さに押されて後ずさったら、後ろから組み付かれて目隠しされた。私だ暴れるな、って聞こえて、足元からはジョンの声がした。低い体温と防虫剤の匂いに不覚にも安心した。ちくしょう。

目隠しされていたから、この時何が起こったかはみていない。ドラ公の顔も。
「去ね」
短くて鋭くて重い、斧のような一言だった。そんな声出るんだなって感じの、まるで古くて強い吸血鬼みたいな。
その一言だけで、絶叫が上がった。目隠しの下、分かったのは、一瞬で燃え上がった荒れ狂う炎の気配だけ。
「これは、私のものだ」
その言葉で、絶叫が断末魔に変わった。不自然なほど軽い、風船の割れるような音がした。

目を覆っていた手が外れた時、立っていたの事務所近くの公園。
それで、真後ろのドラ公を問い詰めようと思ったら、先に頬、じゃないなあれ。頭を両手で固定されて、それで、
###書いておきたいのにパソコン殴りそうになる。書けるようになったら書く###

怒鳴られた。
おまじないだ! また今日みたいなのは嫌だからな! 一日一回するからな! って。
吸血鬼のくせに顔真っ赤だった。ヌヒヒってジョンが笑ってた。
爺さんがドラ公もできるって言ってた別のやり方っていうのがあれなんだと思う。
今日みたいなのは嫌だ、それは同意だから、そう、だから腹が立たなかったんだ。全裸とか見られてるし、ちょっと口くっつけられてベロ舐められるくらいなんでもない。そうだなんでもない。


□月一日
おまじないされる。呼ばれなくなったしよく眠れる、はずなのにおまじないのせいで眠れない。クソ砂が悪い。

□月二日
おまじないのことばかり考えて注意散漫になっている。休みでよかった。

□月三日
単発イタズラ。遠慮なく殺す。

□月五日
イタズラするなら普通にイタズラだけしろよおまじないまぜんなどうしたらいいかわかなくなるだろうが

□月九日
おまじない、いつまでしてくれんのかな



□月二十日
『おまじない』は続いている。そのおかげか声はしない。が、おかしい。俺が。俺、単純すぎる。こんなのチョロルドっていわれてもしかたない。
ほらおまじない、って捕まえられると心臓がバクバクする。口がくっつくだけだっていくら自分に言い聞かせても頭の後ろがビリビリするし背骨がぞわぞわする。
なんか、あのクソ砂がかっこよく見える、気がする。耳の近くで話されると腰が抜けそうになる。
あいつもあいつで、前と絶対違う。視線が甘い。いや、もともとああいうの時々あったかも。でも甘さが重たい。ジョン見てるときも違う。俺だけ? なんて思いついたら嬉しくなってんの何考えてんだ俺。

手、握ってくるようになったのなんで。あれ、恋人つなぎってやつじゃねぇの。おまじない、おとなしく待ってると幸せそうに笑うのなんで。ぎゅってしてくんのなんで。なんで俺いやじゃねぇの。
今日、おまじない三回もしたのなんで。一日一回じゃなかったか。なんで。なあ、なんでだよ。