再掲[2021-04-20]
最近妙な奴に付きまとわれている。少し背の低い、自分と同じ色。
独りで仕事終わりの紅茶を飲んでいると、勝手に相席をしてきた。
「此処に居たのか、ガリオン」
「
………」
別段許した訳ではない。追い払うのが面倒なだけだ。
「今日もまた派手に暴れたそうじゃないか」
「私は私の仕事をしただけだ」
ティーカップを口に運ぶ。渋みが私の快感と同調し、落ち着いた満足感をもたらしてくれる。
私よりも煌めく服が少しだけ目につく。精神を護る為の月光石の装飾。
「
……それ、美味しいのか」
「飲んでみるか?」
平静を保っているが、彼女の瞳にわずかに輝きを見た。もう一つカップを取り出し、紅茶を注ぐ。赤い水面が満たされていく。
彼女はゆっくりとカップを口へと運んで
……わかりやすく顔をしかめた。
「口には合わなかったかい?」
「
……繰り返し飲めば慣れる」
「なかなかこの茶の良さをわかってくれる人間は居ないものだな」
「
…………」
何故か悔しそうに顔を歪めている。そんなに情動が揺さぶられるものか。
「明日は外郭に行く」
「
……外郭?巣ではなく?」
「ああ、巣にも立ち寄るがその後にな
……妙な事を企てていると幼子からの密告だ」
「
……ああ、あの茶髪の」
「可哀想に、あの子が必死に伝えていたこと自体は巣でもよくあることであるのに
……」
「
…………」
「それでもあの怯えた顔は可愛らしいものであったな、はは」
ゼナは何も言わずに私を見つめている。わずかな動きさえ見逃すまいとでもいうかのように。
「そういえば貴様も表情が豊かだな。それほどまでにこの世界には、この都市には揺さぶられるものが多いか」
「
……!そんなつもりは」
「無理に否定する必要はない。そう感じたならばそれがお前の感情なのだろうよ」
「
………」
故に彼女は幼いのか、あるいは私が。
カップを傾け、残りの紅茶を一気に飲み干した。
けれどそれからそう長くはなかったのだ。私と同じ目をした男に出会うのは。
そしてそれから綴られる私のもう一つの名としての生は、随分と長いものだったのだ。
だから。
「ガリオン
……」
彼女はあの頃よりは随分と落ち着くということを覚えたようだ。だがその語気に、言の葉の端に、またその情動が漏れている。
あの時と同じように、空に浮かぶ星のごとく服を、憧憬を煌めかせて、私を迎えに来たという訳だ。
「その名を聞くのは絶えて久しいことよ
……もはや私の為の名前では無いだろうがな」
あいにくと私は彼に与えられた今の名を受け入れているが故に。
「直にお前の墓を砕いてお前を引きずりだしてやるから」
「今は殻になった存在を探している姿に遣る瀬無い気持ちしか感じないな」
未だ私の殻を探す子供を諭せば、彼女は暫し黙った後に後ろの処刑者に声をかける。嗚呼、もう少し早く迎えに来ていれば良かったのになあ?
こうして相対するのは久しぶりだな、自分を追いかけてここまでやってきた、この都市の調律者よ。
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