三毛田
2025-05-20 12:52:18
1075文字
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98 08. 見つめ合う視線の濃度

98日目
いつか変わるのだろうか

「う〜ん……
「何を悩んでいる」
「いや。互いに嫌い合ってるような態度を取る人たちでも、なんていうか、こうさ、視線があった時の二人の間のその濃度? みたいなのが他の人に向けるものと違うなって」
……お前はよく人を見ているな」
「へ?」
「つまりはそういうことだ」
「どういうことだよ〜!」
 列車に乗ってすぐだか、ヤリーロの件を片付けた後だったか。忘れたけれど、その頃の丹恒はそこかよそよそしさが残っている感じだった。
 でも、今はそれを感じさせることはなく。それどころか、俺と二人きりになるととびきり甘い。
 そして、何となくだけど濃い気もする。
「もしかして、丹恒って俺のこと好き?」
「よかったじゃん、好かれてて。ウチもあんたのこと好きだよ」
「俺もなののこと好きだよ」
 やった〜! と、手を出してきたのでハイタッチ。
「丹恒、俺のこと好き?」
「ああ」
「いえ〜い!」
 手を出すと、ハイタッチしてくれた。今日の丹恒、めちゃくちゃノリがいい。
「丹恒、ウチは?」
「そうだな」
「どっちかわからないって!」
 むすっとするなのに、彼は小さく笑みを浮かべる。
 でも、その視線に乗っているのは、俺と目が合った時よりも薄い何か。
 それをどう表現したらいいのかわからないけれど、そのままでいて欲しいと思ってしまった。
 あの、とびきり濃いものは、俺にだけむけて欲しいと。
 きっとその感情は独占欲。持っていていいのかわからないけれど、誰にもそこを譲りたくない俺のわがまま。
「穹、どうした」
「丹恒が、俺のお誘いに乗ってくれて嬉しいだけ」
「そうか」
 目元を和らげ、俺の頭を撫でる。俺のこと、犬か何かだと思っているのか?
 でも、こうやって丹恒に甘やかされるのは嫌いじゃない。
 むしろ好きだ。
「丹恒」
「ん?」
「好き」
「ああ、俺も好きだ」
「ふふん」
「ご機嫌だな」
「丹恒が俺に好きって返してくれたから」
 いつもは、〝ああ〟とか〝俺もだ〟としか返してくれない。でも、今はきちんと言葉で〝好き〟だと返してくれた。
 それだけで、嬉しくてご機嫌になる。
 単純だと思われているだろう。でも、それが俺なのだ。
 でも、彼の好きと俺の好きはちょっと違う。
 彼の口にする〝好き〟は、仲間として、友人としての意味合いが強い。
 対する俺の〝好き〟は、それ以上。愛もあれば、欲もある。
「いつかちゃんと気づいてくれよ、丹恒」
 聞こえないように、呟いてみる。
 でも、俺は忘れていた。
 丹恒の方が、俺よりも聡明であるということを。