ながとぅ
2025-05-19 22:23:00
3092文字
Public ZZZ/ビリイト1W
 

ZZZ【ビリイト1W/拝啓、明日の俺へ】

ビリイトワンウィーク…大遅刻です!!!!!!!!
お題①: お着替え
お題②: 共に過ごす夜

――泊まっていってもいいすか?

そう問われたのは、ある土砂降りの雨の日。
互いに濡れ鼠になった日の話だ。

【拝啓、明日の俺へ】

結果だけ言うと、ライトの愛車にタンデムし、喜び勇んでドライブに出かけたものの帰りの夜道で盛大に降られた。
道中で知っていたが、雨宿りの出来る場所などある訳もなく、マジで行きはよいよい、帰りは――とよく言ったもんだ。
しかも、一晩中降り続けるというオマケ付き。
予報だと一日中快晴かつ、明日は互いにオフだから、とドライブに誘ってくれたにも関わらず、だ。山でもないのに天気はコロコロ変わり、予報もアテにならないのだと身をもって思い知った。

「ライト、大丈夫か?」

そんな豪雨でも事故もなく、俺をきちんと事務所まで送ってくれた。
今朝も迎えに来てくれたし、ドアtoドア――まさに至れり尽くせり。自慢の後輩で想い人だ。
まぁ、これはあくまで俺の片想いで、墓まで持っていく感情であるのは間違いない。いつからか自覚してからこの方、ライトに明かすつもりはないし、明かされてもライトが困るだけなのでするつもりはないのだ。
バイクから降りつつも、これから郊外に帰ろうとするなら引き止めるつもりで問いかけた。

「今日、泊まっていってもいいすか?」

下心とかなし、純粋な心配を押し出して泊まって行けよ、と言おうとした矢先、ライトの口から出たのは意外な一言。
今まで甘える事自体が無縁とも言えるライトからそんな言葉が出る日が来るとは。
普段であれば「じゃ」とか何とか言って無理にでも帰ろうとしていたのに。
ふと横顔を見ると髪から雫が落ち、唇がほんのり紫になっている。
これは――

「パイセン?聞いてました?」
「あ、おおう!いいぜ!まずは風呂だな!」

一瞬だけ、ほんの一瞬。
俺様のハイスペックな思考を停止させた感情がなんだったのかは分からない。
しかし、ライトが泊まるとなった以上、風呂に入れる方が優先だ。
互いにジャケットを脱いで部屋へ向かう。

「乾燥機にゃ入れられねぇからジャケットとパンツはこっちにくれ」
「っす」
「シャツとかは適当に洗濯機入れとけ。後で回す」
「っす」
「んで、湯船にお湯溜めてゆっくり入れよ!服とタオルはその間に用意しとくからな!」
……ん?パイセンは――
「俺は後でシャワー浴びるから、お前が先に入れ。風邪引いたら俺がどやされるんだぞ~」
分かりました」

先程までと違い、何だか返事の歯切れが悪い気もしたが、寒さで思考が遅くなっているんだろう。
背後でバスルームの扉が閉まった音と、程なくして水音が響いてきた事に一息つく。
そこからバスルームを離れ、濡れて萎びた髪を拭いながら一旦パンイチで室内を行き来してライト用の支度を整え始める。

「これか?いや、こっちの方がいいか?」

我ながらライトにどの服を着せるべきか――たったそれだけの事に一番頭を捻る事になるとは思いもしなかった。

「やっぱ普通が一番、だよな」

結局、よくあるTシャツとズボン。そして、万一に備えて用意していた新品のボクサーパンツを用意した。

「おーい、ライト!服とタオル、出しとくぞー!ちゃんと温まってこいよな」
……っす」

衣服とタオルを洗面台の傍へ置いておく。
それにしても今日は暑い気がする。

☆☆☆☆☆

ジャケットやパンツをハンガーにかけたり、娘達から水滴を拭ったり、俺の分の着替えを用意したり。
全てを終えてパンイチのままソファに腰を下ろした所で、ライトの気配が背後から近付いて来ている。

「おー!ライト、サイズどうだっ――

振り向くと、俺のTシャツを着たライトが確かにそこにいた。
しかし、丈は丁度いいのに二の腕が、ぱっつぱつ。太股はそれ以上にぱっつぱつだが、裾は丁度いい。

「おま、」

思わず言葉が途切れた。
キュルキュル、と頭部から音がしている。
さっき感じた心地とも違う。こう、何というか。喉元まで出かかっている気がするんだが、もどかしい。

「笑わないでもらえます?」
「ぶははは!!!」
「はぁ……

また一瞬だけ思考停止している間に告げられたライトの願いを皮切りに、主張を蹴散らすが如く噴飯してしまった。
確かに面白いは面白い。しかし、さっきの違和感はなんだったんだろうか。頭の片隅にモヤモヤが貯まっていく。

「ほら、笑ってないで早く風呂入って来て下さいよ。湯が冷めます」
「おっと、そうだったそうだった!行ってくるぜ!」

それからバスルームでサクッとシャワーを浴びる。
風邪という概念の存在しない俺は、あくまで汚れを落とせればいいのだ。
勿論ライトの言う通り、湯船に湯も残っていた。だが、ゆっくり浸かって思考を整理しようと思えるほどメモリに余裕はないらしかった。

「ふっふっふ……待たせたな!」
「なるほど、スタナイのパジャマっすか
「おうよ!一昨日買ったばっかのな!しかもこのマーク、暗闇で光るんだぜ!カッチョイーだろ!」
……とか言いつつ裾、足りてないみたいですけど」
「ぐっ!」
「あんた、人の事笑ってる場合っすか」
「うぎっ!!」

ことごとく図星を突いてくる。さすがライト、容赦ねぇぜ
見せたかったのは事実。だからそこは不格好でも仕方ない。

「ま、パイセンのスタイルの良さは十分承知してますよ。人間のサイズには通じないくらいですし」
「お!いい事言うじゃねぇか!さすが俺様の後輩!」

少し気落ちしたものの、すぐに持ち上げてくれるデキる後輩。
ライトのたった一言でジェットコースターのようにすぐさま上り調子になる俺様の機嫌。
自分で言うのもナンだが、ベタ惚れだ。

「ほら、寝ますよ。さすがに雨の中の運転は疲れたんで――
「は?」
「あ?」
「一緒に?」
「他にどこがあるんすか」
「俺がソファ……とか?」
「パイセンの充電端末がどこにあるのか、俺が知らないとでも?」
「うッ!!」

ライトをソファに寝かせるのは言語道断。
かと言って、俺を充電しない訳にもいかない。

「後悔しても知らねぇぞッ!!」
「ったくしませんよ」

お互い背を向けるようにしてベッドに寝転がる。
シングルベッドは二人分の重さを受け止めて一瞬軋んだが、壊れる心配はなさそうで安心する。
それから十分もしないうちに寝息が聞こえてきた。
本当に疲れていたんだろう。

……なぁ、ライト」

呼びかけても規則的な寝息と沈黙が返ってくる。

「寝ちまったか

返事が得られない事に安心している自分がいる中、呟きを連ねていく。

「あのな、今日のドライブめちゃくちゃ楽しかったぜ。自分で運転するんじゃなくてタンデムでしか見られねぇ景色もサイコーだったし

――自分へ言い聞かせるように。

「ただお前がびしょびしょに濡れてる様子とか、ピチピチの服を着てる姿を見て……なんか、こう、コアやらメモリやらキューッとしたんだよな。一体なんだったんだろうな

――少しでも伝わればいい、なんて都合のいい事を考えながら。

「はーうっし、独り言終わり!」

静かに振り向くと、俺を気遣ってか、落ちそうなほどギリギリで寝ているライトがそこにいた。

……おやすみ、ライト」

柔らかい髪を撫でてから毛布をかけ直してやる。そのまま毛布の上から抱き寄せ、システムシャットダウンの準備をしていく。
そう、言い訳は明日の俺様に任せよう。きっと上手くやるさ。

END?