くこ
2017-07-01 10:05:32
1661文字
Public
 

夜道の散歩(王最)

すごい…R18じゃない…このあとはR18だけど…
百春を支援する王最の話

「じゃあ、王馬は最原が送っていくんだね」

少し頬を赤くした春川が、毅然とした声で最原へ確認した。ほとんど酒を飲んでいなかった最原は、うん、と頷く。
春川の肩の上には、百田の顔がある。アルコールの毒素が顔には出ていないが、酔っ払っているのは明白だ。百田はけして酒に弱くはないが、何しろ飲む量と勢いとが常人とは桁違い。まして今日は、普段は世界を飛び回っている赤松や天海、夢野も揃う日ということで、百田のテンションはマックスだった。

……私は、こいつをどうにかするから。最原、そっちは頼んだよ」
「うん。春川さんも、気をつけて。僕よりは安心かもしれないけど」

春川が薄く笑った。春川は女性で最原は男性だが、こと戦闘能力という意味で、春川の方が圧倒的に強い。それでも女性であることに変わりはないからと、最原は彼女の身を案じた。
平気だよ、と猫口で春川が答える。それじゃあ、と二人それぞれ別の方向へと歩き出した。

最原の肩には王馬の腕が掛かっている。しばらくして、百田と春川の姿が見えなくなったあたりで、最原は突然その腕を外した。

「予備動作なしでそゆことしないでよー!」
「もういいでしょ」

かくん、と倒れ込みそうになった、ふりをした王馬が、怒った素振りで最原を見上げる。彼は意に介さず、少しだけ微笑んだ。
先程までのふらつきは一体何だったのか、王馬はしっかりとした足取りで最原の隣を歩き始めた。まあ、つまり、そういうことだ。

「一芝居打つのも楽じゃないね」
「楽しんでたくせに」
「ま、オレの意識がはっきりしてるとわかったら、春川ちゃんのあんな顔は見られなかっただろうね」
「春川さん、王馬くんに厳しいからな……

自業自得だけど、と付け足す最原に、王馬がけらけらと笑う。だってからかい甲斐があるんだもん、と、悪びれずに言い放った。
夏の空気を感じる夜道を、二人でのろのろと当てもなく歩いていく。特に行き先は決めていない。風も涼しいし、男が二人だし、適当に夜道を歩いていても、特段問題なかった。
風を受けた最原が少し目を細める。王馬の瞳がそれを見ていた。

「なに?」
「べつにー。ね、あの二人ってほんとにまだどうもなってないの?」
「うーんたぶん。百田くんも春川さんも、普段から忙しくしてるしね」
「まどろっこしいなあ」
「王馬くんには言われたくないんじゃないかな、二人とも

王馬はきょとんと最原を見上げ、それから心底おかしそうに笑った。そりゃそうかもね、弾んだ声が言う。

「ま、オレとしては、春川ちゃんがなんであれがいいのか、まったくわかんないけどこういうのは理屈じゃないんだろうね」
「そうだね。僕も理屈で王馬くんを好きなわけじゃないし」
…………

く、と王馬が髪で顔を隠す。最原が気付いて首を傾げた。どうかしたの、王馬くん。

「ホテル行こう」
「え!?急に!?」
「たしかこの先にあるから」
「ちょ、なん、急になんで!?」
「最原ちゃんが悪い」
「僕!!??」
「行くよ」

ぐい、と手を取られて、最原があわてて王馬の後を追う。
今までのまったりとした空気が一瞬で霧散してしまい、最原が混乱する。こういうゆったりとした空気で二人歩くのもいいな、なんて考えていたのに。

「もうちょっと二人でゆっくり散歩したかったのに……
…………

漏れ出た最原の心の声を、聞き取った王馬がぴたりと歩みを止める。
引きつった笑顔で王馬が振り返った。ぎぎぎ、と音がしそうなくらい、硬い動作だった。

……ほんっとさぁ……最原ちゃんってさぁ……
「な、なんだよ!散歩したいのだめなのかよ!」
「いや……いいよ……ゆっくり向かおうか」

はあ、と王馬が息をつく。その態度に最原はまだ不服そうにしたものの、つながれた手が離されず、王馬の歩みも速度を落とされたので、ひとまず矛を収めた。
指を絡めるように手をつなぎ直し、二人でゆっくりと歩き始める。
夏がもうすぐそこまで迫ってきていた。