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カッパ巻き大車輪
2025-05-19 03:27:09
1515文字
Public
小説
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スネ6♀の小説
お互いに忙しい中で、同じ時間を同じ気持ちで過ごすスネ6♀のお話。
この惑星に来る以前、顔を合わせる機会が多かった同僚の言葉を思い出していた。
猫を飼っているという彼曰く、朝食を摂っていると膝に乗ってきて、まるで行かないでくれとでも言うように甘えてくるのだと。
「毎朝、それを振り切って出社するのが本当につらいよ。可愛くって、離れがたくてさ」
そう言って笑う彼に、適当に相槌を打ちながら、猫一匹に何を大袈裟な
…
と思ったものだ。
タイピングの音が静かに響く執務室。
あって無いような定時を少し過ぎ、デスクの上もおおかた片付いてきた頃。
今日はいくつかのイレギュラーもあり、その対処に随分時間を取られてしまった。対応できる人間が限られているとなれば、後回しにも出来ない。
苛立たしい状況だが、それでも機嫌は良い。もっと言えば、浮かれている。
理由は分かりきっていた。
モニターから目を離し、目線を落とす。デスクに向かう私の膝の上で、向かい合わせに抱きついている存在。
艶々とした白い毛並みの猫
……
ではなく、猫にしては大きく、自身と比べたらとても小さなその生き物は、こちらの胸元に細やかな体重を預けてしなだれ掛かっている。
「レイヴン」
「
……
ぅん?」
緩慢に瞬きしながら顔を上げた少女は、常より水分量の多い瞳で見上げてきた。
「スネイル
…
お仕事終わった
…
?」
「もう少しで終わりますから、起きていなさい」
「んー
…
」
「起きていてください。流石に、ここから自室までは抱いて運べませんよ」
「んー
……
」
むにゃむにゃと返事なのか鳴き声なのか判別し難い声を発して、レイヴンは再び胸元に頬を寄せた。
名の売れた独立傭兵である少女は、さながら忙しく飛び回る烏だ。そんな中、時間を作って訪れてくれたのに、ろくに構えずにいたところ、応接ソファから立ち上がったレイヴンは徐ろにこちらの膝に乗り上げてきた。
「お仕事は見ないようにするから、くっついててもいい?」
「
…
ええ、どうぞ」
ふわふわとして無頓着なようで、こうした気遣いはできるのだから、堪らない。
そうして嬉しそうに腕の中に収まった少女と、仕事に差し支えない程度に会話を楽しんでいたのが、つい先程までのこと。
仄かに上がった体温と次第に間延びしていく話し方に、眠りに落ちかけているのだと手に取るようにわかった。
「終わりましたよ」
「ん〜
…
」
ほっそりとした二の腕を掴み、体を起こさせると、レイヴンは存外大人しく従った。
眠そうに目を擦りながら、小さく欠伸をしている幼い仕草に笑って、ゆらゆらと揺れる頭を撫でてやる。
「
……
退屈だったでしょう?」
構ってやれずにすまなかった、とは素直に言えず、確認を装って聞いてみる。
「ぽかぽかあったかくて、スネイルの声が近くて
……
しあわせだった」
のんびりと顔を上げたレイヴンは、ふにゃりと笑った。
「おひざで甘えてる猫ちゃんも、こんな気持ちなのかなぁ
…
」
そう言って胸元に顔を埋めた少女は、今度こそすうすうと寝息を立て始めた。
「
……
猫の気持ちは、分かりませんが」
いつか話した同僚の気持ちは、わかる気がした。
腕の中で、すっかり脱力している柔らかい体を抱き上げる。
心地良い体温を抱き込んでいられたので、自分にとっては悪くない時間だった。
しかし、少女には退屈な時間だっただろうと思ったが、こちらもそう悪くはなかったらしい。
——
同じ時間を、同じ気持ちで過ごしていた。
手早くパソコンの電源を落としながら、堪え切れずに口元が緩んでしまう。
応接ソファに置き去りにされた、見慣れた泊まり用のリュックを手に取ってからドアへと向かう。
腕の中の軽い体を一度抱え直してから、執務室の照明を落とした。
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