ゆたか
2025-05-18 08:47:18
16559文字
Public 現パロ
 

現パロ雑伊

Xで呟いてる細かなエピソードまとめ

ぼんやりと前世の記憶をもっているがzatを探し出せる術もなく大学生になった伊。バイト先に向かう途中の駅で酔っぱらいに絡まれる(不運発動)困っていると「まあまあ」と仲裁に入ってくれた身なりの良いサラリーマン。なぜか腕をキメられうめき声を上げる酔っぱらい。体格差もあって逃げることもできない様子。
「大丈夫?」と声をかけられ恐る恐る顔を上げるとそこには前世で恋仲だったzatの姿。

次回、大学生ならぎりぎり犯罪じゃない。の段

助けてもらった後お互い前世の事を覚えていて酔っ払い無視して盛り上がる。名刺をもらい、後日また会おうと約束する二人。名刺には大手企業の重役の文字。さすがzatさん。と尊敬する伊。お互い予定を合わせ喫茶店で待ち合わせする二人。互いに近況を報告しあう。伊は奨学金をもらいながら大学に通う苦学生。現在一人暮らし。zatはそれを聞き逃さず家賃が浮くから一緒に住む事を提案しようとするが話を聞き進めていくと家賃はタダだという。
「タダってなぜ?親御さんの持ちアパート?」
「いえ、事故物件なんです」

次回、ちょっと話の方向が変わってきたぞ。の段


事故物件?にしてもタダなんておかしいでしょ?よっぽどやばい物件なの?」
「そうなんです。三日も持たない人が多いらしくて、建て替えしようにも事故が多発するので大家がただでもいいから住んでくれと」
「え?大丈夫なの?そんな所に住むくらいなら私といっしょ「ああでも結構便利なんですよ?」
「何が」
「毎日午前2時にラップ音が鳴るんですけど、僕勉強してると熱中して朝になっちゃうことが多くてそれが鳴ったら時間がわかるので寝るためのアラート替わりに」
「アラート」
「はい。毎日正確だし、いちいち自分で時間設定しなくても鳴ってくれるし、最近では無視して寝ないでいると激しくなるんです」
「何が!?」
「ポルターガイストです」
「ポルターガイスト!?」

次回 たくましさの方向が違います。の段


「いや、まあ住んでて具合が悪くなったりしないならそれでいいいやよくないけど。変なものに襲われたりしないなら
「襲われたりはしませんが見はしました」
「見たの!?」
「あれは確か夕暮れ時で帰ってきた時にアパートの外廊下に黒い影が佇んでいたんです。僕、びっくりして動けなくて。で、そこに近所の子たちが遊んでいた野球のボールが飛んできて、黒い影の上にあった蛍光灯に当たったんです。もう粉々に割れちゃって。黒い影もびっくりしたみたいでふっと消えたんですよ」
君の不運がここで役に立つのか
「そうなんですかね?」
「まあでも危険を察知した君の見間違いかもしれないでしょ?」
「いえ?粉々になったガラスがちょうど人一人分隙間が空いて散らばっていたので、あの影、砕けた蛍光灯もろに浴びたんですね。かわいそうに」
「かわいそう」
「かわいそう」

次回 不運?幸運?の段

「あとはちょっといいこともありまして」
「いいこと?」
「はい。まだアパートに人が住んでいた時に心霊現象が多発している時がありまして」
「どこがいいことなの!?」
「まあ聞いてください。冬の寒い時期の夜中に突然シャワーの音が聞こえてきて
「やだもう怖い!」
「で、バスルームを覗くとそこには「ムリムリムリ!」
「で、順番に部屋を回ってたらしいのですが僕の部屋に来た時
「来た時!?」
「ちょうどその時僕の部屋だけ給湯器が壊れてまして」
「不運」
「霊もびっくりしたんでしょうね。暖かいシャワーを浴びに来たのに冷たい水を一気に浴びて。叫び声が聞こえたので見に行った時にはもう影も形もなくて」「というか冬に給湯器壊れてたら死活問題じゃない?」「まあ家には寝に帰るだけでしたし、僕、水風呂平気なので」
「室町魂」
「役にたちました」

「でもこれには後日談がありまして」
「まだあるの!?」
「その霊が大家さんの枕元に立って給湯器の故障を叱りつけたみたいです。大家さん、僕の所に来た時にはぐったりしちゃってて。でもおかげさまで給湯器どころかバスルームを新調してもらったので、僕の家、今快適なんです!」
キラキラとした顔で語る伊に頭を抱えさせられるzatであった。

次回 作戦変更!の段


仕事中浮かない顔でため息ばかりつくzat。「どうしたんです?伊くんをやっと見つけたのでしょう?」「そうなんだけどさ」「もしやすでに相手がいたとか!?」「いや相手というか。なんだろう伊くんと住むには人をやめなきゃいけない気までしてくるよ」「なんの話ですか?」「見えない同居人ってどうしようもないよね?」「スピリチュアルな話は不得手でして」「だよね!私もだよ!ああ!見える相手なら殴れるのに姿すら見えないなんて!」とうとうおかしくなったのかと心配そうに見つめる⛰️本。「そうだ!物理!物理は全てを支配する!衣食住だよ!じんない!」「はあ」「衣、住は手を出せそうにないから食だ!なんとしても伊くんの胃袋をつかむ!」「それはいいのですか気をつけてくださいね。最近は色々面倒です」
その後、いい店で身なりのいいスーツ姿の男性に夕飯を奢られている姿を何度も目撃され、友人に揶揄われた伊くんはzatとの夕飯すら辞退するようになる。
それをなんとか食い下がり、伊くんが割り勘できる店でならと条件をつけられ『食』に関してはぎりぎり繋がったzatであった。

次回、初歩的ミス!の段

現代人は忙しい。自分の仕事と多忙な大学生の予定をすり合わせ一時間あるかないかの食事の時間を確保する。こちらを見つけるといつも笑顔で手を振ってくれる伊くんはどこか疲れが見えるのとろくなものを食べていないのかやつれているように見える。学園にいた時は食堂のおばちゃんの料理でツヤツヤしていたのに今は見る影もない。ついつい親心が発動し、料理をたくさん頼んでしまう。伊くんは目の前に並べられた食事を目を輝かせて美味しそうに食べる。そのふわふわとした笑顔がとても眩しくて愛おしくて、ずっとその様子を眺めていた。
とニヤけている様子を伊くんのご学友に見られたと」
「もおおおおお!現代嫌い!」
「だから気をつけてくださいと言ったでしょう。あなた方のその年齢差は犯罪なんですよ。は・ん・ざ・い!」
「わかってるよ。でももう伊くんも自分で決められる歳なんだから……
「どうしました?」
「聞いてない」
「は?」
「伊くんの気持ち聞いてない」
「」

次回、大人は傷つくのが怖いんです。の段

思い返してみれば確認する暇などなかったのだ。出会いは電車の中。酔っ払いに絡まれた青年を助けたらたまたま伊くんで驚いた。伊くんもこちらを覚えていることはすぐにわかったけど話をしようにもそんな時間はなかった。後日なんとか会えたけども伊くんの摩訶不思議な生活に困惑して話はそこで終わった。その後も食事はするものの短い時間では伊くんに食べてもらうことが優先で簡単に大学生活とこちらの今の仕事の話をする程度だ。伊くんが「どこまで」覚えているか、など聞ける状況ではなかったのだ。屈託なく警戒心のない笑顔は学園での彼そのままで、想いを確かめ合ってからの熱っぽくこちらを見つめる瞳や甘えるような声色も今の所気配がない。もしかしたら彼は学園の時の記憶しかないのかもしれないとまで思い始めていた。
「確かめてもしそうだったらどうしたらいいかなあ
からりと音を立てるグラスを眺めながらぽつりと呟いた。

次回、過去と現在。の段

「珍しいですね。そんなに飲むなんて」⛰️本が心配そうに声をかける。「仕事終わったからいいでしょ」「構いませんがあまりいい飲み方ではなさそうなので」⛰️本は昔から自分のことをよく見ていてそれとなく助言してくれる。たまにうるさく感じることもあるが込められた気持ちを考えると無下にも扱えない。「伊くんがさあ昔のことどこまで覚えてるか考えちゃって」「?それは本人に聞けばいいのではないですか?」「そうなんだけどああもうじんないには誤魔化せないからいうけど!もし覚えてなかったらそこからどうやって関係を発展させればいいか自信がないんだよ」「はは。それはあなたにしては気弱な」「笑ったな。考えてもみてよ。明日には命がないような環境で心を許せる相手がいたら全てを捧げるでしょ。でも残念ながら現代ではそんなことは起きないし、昔のように誰からも尊敬されるほどの地位も力も技もない」「
「一応現代スペック的には常人離れしているんだけどはあ。室町の私はいい感じに人間離れしていたなあ」
「伊くんはそういうのを昔も今も気にするような人ではないでしょう?」
「そうだよ。だから自分が不甲斐なく思えてしまうんだ。そんなことで伊くんに好かれていたと思っていた自分も、誇りに思っていた部分が現代だと全てなくなってしまっているなんて自覚したくないじゃないか」
意外にピュアなのですね」
「喧嘩売ってる!!??」
「そういうのは本人に聞くのが一番でしょう。もういい歳なんですから恥ずかしいも何もないでしょう。ほら」
「くーっ!痛い所突いてくる!」
「それに伊くんも15の子供ではないんですから」困ったように眉を潜める⛰️本を睨みつける
「人ごとだけど人ごとだよね!!??」嫌味を持って行ったのだが⛰️本は存外優しく微笑んだ。
「ええ、私にとってはあなたがここで伊くんに振られようがどうでもいいのです。私が望むのは健やかに生きていただきたいということだけ。昔はあなたの不遇に憂いていたのですがそのおかげで伊くんに出会い彼と心を通わせ幸せそうに暮らしておられた。現代でも彼を探していたのはよくわかっています。伊くんと出会えたのは運命かもしれません。関係も昔のようになれなくてもあなたがそれに区切りをつけて今後も健やかに暮らしていただければ私は満足なのです。」
その言葉を静かに聞いていたzatはグラスに残った酒をあおり、勢いよくグラスを起き⛰️本に向き直る。
「じんない。失恋したら責任もって飲みに付き合えよ」
「いいですよ」
「もう忍者じゃないんだから朝まで付き合わせるからな!」
「はいはい。ほら早く」
zatはスマホを確認する。伊くんのバイトが終わる時間なのを確認しタクシーで向かった。

次回、予期せぬ同室。の段

「あれ?雑渡さん?」
帰り道の公園沿いの道を歩いている伊作の前にタクシーが横付けされる。中から出てきたのはどこか険しい顔をしている雑渡だった。
「あれ?もしかして今日なにか約束してました?すみません。僕気付かなかくて」
慌てた様子でスマホを取り出そうとする腕ごと雑渡は腕の中に閉じ込める。
「雑渡さん?」
その様子にただならぬ気配を感じたのか伊作は抵抗もせずにその腕の中で大人しくする。
走り去っていくタクシーの音だけが暗い道に響いていた。
「伊作くん」
「はい」
「一つ聞きたいんだけど
「はい」
その声はどこか震えていて伊作に体に緊張が走る。やがて意を決したように腕の中の伊作を離し、肩を掴んだまま熱い眼差しを伊作に向ける。
「あ?」
雑渡の眉が潜められ、どこか遠くを見て、再び伊作の瞳へと戻る。
「君はどこまで覚えているんだい?」
雑渡の言わんとすることはすぐに分かった。先ほどの様子から自分の中に過去の自分がどれだけ残っているか測っていたのだろう。問いかけたておきながらその答えを聞きたくないと言わんばかりに目線が小刻みに揺れる。
「雑渡さんこそどこまで覚えているんですか?」
予期しなかった伊作の問いかけに雑渡は驚いて目を見開いた。
「どこって。どこってそりゃ全部だよ!君と出会って助けられて、別れて、再会して!忍術学園で過ごした日々も、君が卒業した後のことも!それに!君を抱いたことも!全部!全部覚えてる!」
絞り出すような声でそういうとハアハアと肩で息をしながら悲しそうな瞳で伊作を見つめる。
「雑渡さん
「君は……覚えていないかもしれないけど私はずっとずっと……!」
「僕、覚えてますよ」
「え?」
間の抜けた声が雑渡から盛れる。
「覚えてます。全部」
「はあ?」
伊作の言葉が信じられなくて聞き返す。
「そんなそぶり全然見せなかったじゃないか!」
「だって!雑渡さんが覚えてると思ってなかったんです!」
子供っぽく頬を膨らませてぷいと横を向く伊作を見て雑渡は肩の力が抜けていくのを感じた。
「会ってからずっと僕のこと子供扱いして!住む所だのご飯だのと!忍術学園にいた15歳の僕じゃないんですよ!?雑渡さんこそ覚えているならその態度、改めて欲しかったですね!」
言われてみれば確かに会ってから今までそんな態度をとっていたかもしれない。お互い小さな思い込みですれ違っていたということがわかり、またその事実が昔の自分たちのようだと思い当たって雑渡は笑った。
「なんですか!?」
「ああごめん。確かにそうだ。『君』はそういう子だった」
柔らかな笑顔を浮かべる雑渡に口を尖らせながら伊作は一歩進み、大きな雑渡の身体に腕を回す。
「それ僕のせいですか?」
「いや、私も悪かった。ごめんね」
そういうと胸に埋めた顔を上にむかせ額にキスをする。
「子供じゃないんですよ?」
「していいの?」
「相変わらず雑渡さんは意地悪ですね!」
そうい言いながら伊作は目を閉じて背伸びをした。下唇を食んでから柔らかく重ねてくる。お互い角度を変えて唇を擦り合わせるような戯れに近いキスをする。
ああ、彼は本当に彼なんだ。昔、小さな荒屋で、茂みの陰で、たまに医務室で交わした小さな逢瀬の記憶がじわりじわりと胸を暖かく、そして熱くしてくれる。
最後に小さく吸って一旦距離を取る。伊作の頬は赤く染まっていて、その表情も当時のままだ。
愛おしさからその身体を再度引き寄せ力任せに抱きしめる。
「うぐっ!」
潰れたカエルのような声がしたが構わずぐりぐりと伊作に頭を擦り付ける。
「も雑渡さん!苦しいですってば!」
腕の中でバタバタと暴れる伊作を逃すまいとさらに腕に力をこめると観念したのかしっとりと身を預けてくる。
「伊作くん
「ははい!」
「今日、部屋行っていい?なんならホテルとか
そう耳元で囁くとそれまでの非力さはどこへ行ったのかすごい勢いで腕を引き剥がし、俊敏な動きですぐには手の届かない位置まで距離を取られる。
「だめです!!!!!」
力の限りと言った様子の拒絶の言葉を吐いてまるで猫のようにふうふうと威嚇するような様子でこちらを睨みつけてくる。
拒絶されると思っていなかった雑渡は完全に虚をつかれ言葉さえ出ない。
頭の上にはクエスチョンマークが並び、今の流れで断られる要素が見当たらず目を白黒させている。
「ええっと、僕、明日朝から講義あるので今日はちょっと
雑渡の様子にやばいと思ったのかしどろもどろに言い訳を始めるがそんなものが雑渡に通じるわけもない。不機嫌な様子で間合いを一歩進められ、それに合わせて伊作が一歩下がった。
「じゃあ明日の夜は?バイトは休みだよね」
伊作のスケジュールを把握している雑渡がまた一歩、歩を進める。
「え……えーっと急にシフト入っちゃって
目を合わせることなく言い訳を重ねる伊作を雑渡は目を逸らすことなくさらに一歩詰め寄る。
「伊作くんってさあ……相変わらず嘘が下手だよね?」
「ざ……
言い終わるまもなく間合いに入られ、あ。と思った瞬間には肩に担ぎ上げられていた。体格差があるとはいえ軽々と人一人をかつげるなんて前世の記憶もあるだろうが現世でも鍛錬を積んできたのだろうか。そう考えていた伊作は雑渡がタクシーを探していることを察して我に帰る。
「雑渡さん!雑渡さん!待ってください!僕まだ心の準備が!」
「そんなのベッドの上で準備して」
「雑渡さん!僕にも色々事情があるんですよ!それを汲み取ってくれないんですか!?」
「それも全部ベッドの上で聞くよ」
「だから!それが……
一瞬、二人を照らしていた街灯が揺れ、その気配を感じた雑渡はその場から大きく身を引いた。
「ひっ!」
大きな音がして、先ほどまで雑渡が立っていた位置に街灯が落ち粉々になっていた。
「伊作くん、大丈夫?」
「ははい!雑渡さんは!?」
「私も大丈夫だ。危ないなあ」
雑渡は抱えていた伊作を下ろすと他に危ないところはないか周りを見渡した。伊作も同じようにしていたが、暗闇になにかを見つけたらしく、動きが止まる。
「伊作くん?何か?」
「コーちゃん!」
伊作の言葉に再度雑渡の頭の上にクエスチョンが乱れ飛ぶ。
「コーちゃんこんなところでどうしたの?え?やだなあ違うよ」
暗闇に向かって話しかける伊作に恐る恐る近寄る。
目線の先を見てもそこには闇が広がるばかり。しかし伊作は確実に誰かと話をしている。
「伊作くん?」
「あ、雑渡さん。さっきのこれ、コーちゃんの仕業なんですって。僕が襲われてると思ったみたいで。わかってくれたみたいでもう大丈夫ですよ」
「いやコーちゃんって?」
雑渡の記憶によるとコーちゃんとは医務室にあった伊作お気に入りの骨格標本なはずで、目の前の見えない何かが伊作にコーちゃんと呼ばれている。ということは。雑渡は自分のその考えに身震いした。
「正確にはコーちゃんではないのですが、面影が似てるので僕が勝手にそう呼んでるだけです。ほら、この上腕骨のあたりとか」
明るくいう伊作にめまいがしそうだが、街灯を落とすほどの力をもった者が無害なわけはないと判断し、伊作に離れるよう促すが伊作はどこ風といった様子で聞き入れようとしない。
「でもコーちゃんは普段は部屋の隅でじっとしてるんですよ?ね?コーちゃんみたいですよね?」
相変わらず見えない何かと会話している伊作に頭を痛めつつ、今までの話を思い返し、まずは心霊アパートから伊作を引き剥がすのが先決かと思い至った。大家から買い上げてアパートを取り壊すか払い屋にでも頼んで全員消し去るかなどと考えていると足元に転がった街灯の破片が再度音を立てて割れた。
……!」
明らかな殺意を感じ、雑渡はその殺気の元を睨みつける。
「コーちゃん、どうしたの?そんなに歯を鳴らしていたら取れちゃうよ?」
見えない雑渡にもわかる明らかな敵意。とはいえ伊作には逆らえない様子が見受けられ伊作も特に何か制約を課せられているようではなさそうだ。つまり伊作の自由意思であればコーちゃんとやらも手出しはできないのであろう。
雑渡は昂った気持ちを抑えるため大きく息を吐き、伊作に問いかける。
「伊作くん」
「はい」
抱かれたくない理由聞いてもいいかい?理由によっては諦めるよ」
!」
雑渡は本心からそう言った。確かに伊作の全てを堪能したい気持ちはあるが伊作がそれを拒むのであればそれは尊重したい。現世では男性とそういった関係を望んでいないのか、もしくは雑渡を受け入れたくないのか。どんな理由にせよ伊作が悲しむことだけは避けたいのは事実だ。
「コーちゃん
伊作が暗闇に向かって話しかける。その後の目線を追うとどうやら『コーちゃん』が席を外したように思えた。二人の会話を聞かれたくないのだろうと察するがそうとすると言われる内容は深刻なものか。
雑渡は一瞬目を閉じ覚悟を決めた。
「怒らないでくださいね」
「話してくれるならそれでいいよ」
なるべく落ち着いた声を出したつもりだったが伊作にはお見通しだったようで、少し心配そうに瞳を向けられる。
「大丈夫だよ。覚悟はできてる」
今日は陣内と朝までかと思い始めた雑渡であったが伊作の言葉にその考えは吹き飛んだ。
「初めてをちゃんとしたいんです!」
真っ赤になった伊作はそう言い放った。
「初めてああ?前の時、不満だったってこと?」
伊作と身体を合わせ初めたのはいつだろうか。不慣れな伊作を時間をかけて解し、恥ずかしがる伊作をおねだりするまでに導いてやり、腰の動きすらもお互いわかっているというように滑らかで、まるで最初から一つだったような感覚になるまで抱き合ったと思っていたがそれが不満だったのだろうか。
「違います!不満なんてそんな!雑渡さんにはすごく時間かけていただきましたし!その!快くしていただいたので!不満とかではなくて!でもだからこそ!なんです!」
もう卒倒するのではないかと思うくらいに真っ赤になった伊作が自分の想いを吐露する。
「覚えてるんです。全部覚えてるんです!雑渡さんを全部受け入れるのにすごく時間かかっちゃって、雑渡さん、あんなに時間かけてくれたの本当に申し訳なくて!僕だって雑渡さんに気持ちよくなって欲しいのに不甲斐ないなってずっと思ってて!だからその!」
潤んだ瞳で雑渡を見上げ、恥ずかしそうに目を背ける。
「だから?」
伊作の言わんとすることがだんだんわかってきて口元が緩むのをなんとか抑え、伊作に先を言うよう促す。
「だから僕の準備が終わるまでもう少し待ってて欲しいんです!初めてでもちゃんと雑渡さんを受け入れたいんです!」
伊作の必死の訴えを受け止め、雑渡は大きく息を吸った。そして空を仰ぎ何かを考え込んでいる。吸った息を全て吐き出したあと伊作に向き直る。
「雑渡さん?」
わかった」
「よかった!じゃあ!」
「タクシー呼ぶね。ホテルへ行こう」
「なんでですかー!僕の話聞いてました!?」
「聞いたよ!君の気持ちはわかった!でもね、君が一人で致すなんてそんな事させるわけにいかないんだよ。君の身体の準備も私がする!」
「だからそれじゃ雑渡さんがー!」
「泣き言はベッドの上でね!タクシー!」
ちょうどそこにタクシーが通りかかり、伊作は絶望の表情を浮かべた。
しかし、雑渡たちの数メートル手前で突然タクシーのタイヤが大きな音を立てた。
「!」
「!」
蛇行の後になんとか止まったタクシーに思わず駆け寄る二人だったが、その一瞬に雑渡の耳にカタカタと歯を鳴らす音が聞こえた。
「あの骨格標本野郎め!」
目の前に広がる暗闇に雑渡は人生で最大とも言える憎悪を向けたのであった。

その日、雑渡は朝から不機嫌だった。結局あの後JAFが来るまでタクシーの運転手と過ごし、やっと全てが終わった時には空が白んでいた。伊作は講義があるからとそそくさと帰宅し取り残された雑渡は一人寂しく山本のいるオフィスへと戻ってきたのだった。
「仮眠でも取られますか?」
「寝れそうにないから大丈夫だよ」
憮然と答える雑渡に目を細めながら山本は水の入ったコップをデスクにおいた。
「そっちも付き合わせて悪かったね。家族は大丈夫?今日は帰ってもいいんだよ」
そのコップを手に取りながら雑渡が山本に話しかける。少し肩をすくめた山本は大丈夫ですよ。家族もわかってますから。とだけ答えた。
「あんなに取り乱すあなたを見るのは久々で、少し嬉しくなってしまいました。祈祷師だの霊能力者だの言い出したのでとうとうおかしくなってしまったのかと思いましたが
「伊作くんは私の予想を超えてくるからね。流石に霊的なものは管轄外だよ」
「私の方でも当たってみますが期待はなさらないでくださいね」
「わかってるよ」
こうと決めたらてこでも動かないのは充分わかっていた。彼の『準備』が整うまでお預けと言うことになる。すぐにでも抱きしめたいのにそれが叶わず生殺しになっている状況に苛立ちが顔に出てしまう。
「時間をかけるのもいいではありませんか。待つのも愛情です」
山本に見透かされ、そう諭される。生返事をしながらコップの水を煽った。

「雑渡さん、お酒飲まれるんですね」
背伸びしてくんくんと匂いをかがれ雑渡は思わず後ずさった。
「ごめん、さっきまで接待で少し。匂うかな?」
「いえ、前はまったく飲まれなかったので意外でした」
にこりと伊作は笑うとさあさあと馴染みの定食屋へと足を進めた。
確かに伊作の前では飲んだことはなかったかもしれない。忍者なのでそもそも日常的に飲むことはないが酒に溺れぬ訓練をしたり、殿からの杯を受ける程度だ。伊作との逢瀬に至っては伊作が意識を失うほど求めてしまう状況もあって飲んでる場合ではなかったのもある。
「あ、雑渡さん!メニューにお酒ありますよ?頼みますか?」
「ありがとう。大丈夫だよ」
残念そうに口を尖らせながらいつもの日替わり定食を頼む。この年頃は食い気の方が優っているのだろう。細身の体のどこに入るのかと思えるくらいの大盛りの定食をペロリと平らげる。
「そうか、伊作くんはまだ飲めないんだよね」
「はい。新歓コンパとかありましたけどソフトドリンクです。先輩たちはすごい飲んでましたけど」
「興味はあるの?」
「もちろん!忍者の時は飲めなかったので今は絶対と思ってます。……
そういうとチラリと上目遣いで雑渡を見る。
脳の奥がちりりと焼ける感覚が雑渡を襲った。それは『おねだり』する時の伊作の癖だからだ。
「なあに?いけないこと?」
にやにやと聞きかえすと、手元の割り箸をいじりながら伊作がぽつぽつと話し始めた。
「あのちょっと先なんですけど僕の二十歳の誕生日がもう少しなんです。それでお酒を初めてのお酒を雑渡さんと飲めたらなと思って
そういうと頬を真っ赤にして顔を伏せる。
その言外の意味を瞬時に理解し雑渡の頭のなかでファンファーレが鳴った。立ち上がって神に感謝し、店の中にいる人たちと硬い握手を交わしたい気持ちをなんとか抑え込み言葉を紡ぐ。
「そっか!誕生日か!じゃあパーティかな?せっかくだし、ちょっといいところ行こうか。お酒も私に任せてもらえるかな?食事もお酒も美味しいところ知ってるんだ」
「ははい!ぜひ!」
伊作の顔が輝き、勢いでおかわりを頼んでいた。
できるならこのままさらって行きたいが邪な考えを持つと耳元でカタカタと歯を鳴らす音がして、見えない存在の悪意に邪魔されるのであった。

さらに数日後、切羽詰まった様子で伊作から電話があった。
『雑渡さんこの間お話した件が大変なことになって!』
「え?コーちゃんの件?困ったなこの後会議が!今どこ?陣内に対応させるからオフィスこれる?」
伊作にタクシーでオフィスにくるように伝え、会議を高速でこなした雑渡は伊作の待つ応接室に飛び込んだ。
「ありがとう陣内。それで伊作くん、どうしたの?」
「すみませんお仕事中に。あのどこから話せばいいか
陣内は電話をかけてきますと言い残し部屋を出て行った。
「落ち着いてゆっくり話して」
「はい。あのえっとアパートを出なきゃいけないかもしれません」
「あの心霊アパートを?なんでまた」
何をするにも心霊現象が起こって手も足も出ないと聞いていたあのアパートが?それにこちらを威嚇してくるコーちゃんが伊作が困ることを黙って見ているわけもない。
「分かりません。あの色々イタズラしていた方々が最近急に姿を見せなくなって。大家さんもそれに気づいたみたいで本格的にあのアパートを改装する気になったみたいです。それで今までのように家賃もタダとは言えないと今までのことを考慮して安くはしてくれるみたいなんですがそれでも僕には苦しくて
ぽろりと涙をこぼす伊作の背中をさすりながら伊作の話を聞く。
「大きい話はそれ?住むところに関しては私がなんとかするからそこは心配しなくていいよ。ね?他には何かある?」
潤んだ瞳をぱちぱちと瞬かせながら雑渡を見上げる。それに笑顔で応えてやると伊作は少し安心したように微笑んだ。
「ありがとうございます。住むところなくなったら大学も諦めなきゃと僕パニックになっちゃって
「うんうん。大丈夫だから。他になにかあるなら言って?」
「はい。実はコーちゃんが
雑渡ははっとコーちゃんのことを思い出した。伊作を自分の家に受け入れるのは前々から狙っていたことだが、コーちゃん付きとなるとちょっと事情が変わってくる。
コーちゃんが?」
聞きたくはないが聞かなくてはならないことだと思い、恐る恐る問いかける。
「元気がないんです」
「元気」
「はい。なんか消えそうな感じで元気がないんです!どうしたのか聞いても答えてくれなくて」
すでに死んだものに元気があるないがあるのだろうか?なんならいっそそのまま消えてくれて構わないと思っているとまた耳元でカタカタと音がする。
!もしかしてコーちゃん、いる?」
「はい」
追い払おうと手を振り回していると扉がノックされた。
「はい」
「入ってもよろしいでしょうか?お客様をお連れしました」
その言葉に首をかしげたがこのタイミングで陣内が連れてくるなら何か意味のある人物なのだろうと入室を許可した。
入ってきたのは
「「伏木蔵くん!」」
「お久しぶりです〜。室町以来ですね〜ファンタスティック〜」
聞き覚えのある話し方と風貌に二人で駆け寄る。
「伏木雑も現代に!?会えて嬉しいよ!」
「久しぶりだね!覚えててくれてたんだ」
「お二人とも変わりないですね〜!雑渡さんは火傷もなくてなによりです〜」
「陣内!よく見つけたね!」
「たまたまうちの子と塾が一緒でして、なんでも不思議なものが見えたり話せたりする子がいると。詳しく聞いてみたら伏木蔵くんでした」
「え?そんな特殊能力を?どうやって!すごいじゃないか!」
伊作くんもたいがいじゃないかという視線を向けるが伏木蔵との再会に喜んでいる伊作は気付かないようだった。
「僕〜スリルを求めて廃墟やミステリースポット巡るのが趣味でして〜。そうこうしてるうちに色々遭遇しまして〜いつの間にかそうなってました〜」
不気味な笑いを浮かべながら楽しそうに話す伏木蔵に「そんな危ないことやめなさい!」と二人でツッコミを入れたのだった。

「とりあえず事情を知っていそうなコーちゃんとやらと話はできそうですか?」
山本が場をとりなし、伏木蔵と伊作が同じ方向を見る。その光景に何も見えない二人は恐怖に震えた。
「この方がコーちゃんですか?」
「本名はわからないけど僕が勝手にそう呼んでるんだ」
「確かに面影はありますね〜」
会話もそら恐ろしく、いい年をした二人が部屋の隅で震えていた。
「ちょっと聞いてみますね。伊作先輩は離れてください」
伏木蔵の言葉に伊作は雑渡たちの方へ、何もない空間に向かってうなづく伏木蔵を眺めていた。
「あー………なるほど〜」
数刻して伏木蔵が納得したような声を発した。くるりを三人の方に向き直り「事情がわかりました」と言った。
「ほ本当に?一体なにがあったんだい!?」
伊作が身を乗り出して伏木蔵に問いかける。
「まず説明させてください〜。霊というものはとにかく強いエネルギーに弱いんです。楽しいところや明るいとことにいるのを嫌がります。だからマイナスのエネルギーの多いところに集まる傾向があるんです〜」
「それが伊作くんのアパートって事?」
「そうですね〜。まだたくさんいる時にお邪魔したかったです〜」
陣内が咳払いをしてスリルを感じ始めた伏木蔵を諌める。
「あと、『生』を感じるところも極端に嫌がります」
「生とは?」
「生きるエネルギー、命のエネルギーです」
伏木蔵はこほんと咳払いをして未だ理解ができていない三人に向かって話し出す。
「それの一つとして『エロス』です。コーちゃんがいうには伊作先輩の『夜の練習』があまりにもそのエネルギーがすごくてみなさん浄化されてしまったということです」

「「「わああああああああああああああああああああああああああああ!!!」」」

大人三人が伏木蔵の説明に悲鳴のような声を上げた。
「コーちゃん!!!!伏木蔵に何話したの!?」
「伏木雑くん!すまない!えっとそれは!そう!大人は色々あるんだ!子供はそういうの知らなくていいから
!ね!」
「伏木蔵くん!そこもっと詳しくコーちゃんに聞いて書き起こして!!!」
「あんたは子供に何させようとしてるんだ!」
陣内の鉄拳が飛び、伊作は空間に真っ赤な顔で怒鳴りつけ、雑渡は内容を知りたくて伊作を問い詰めようとするカオスな状態が続いた。
そんな中でも伏木蔵だけは「大丈夫ですよ〜。廃墟めぐりでえげつないの生で見ちゃったんで〜」と発言し、大人から追加の説教をされたのであった。

「話を整理しましょう」
雑渡を大人しくさせ、少年二人を向かいのソファに座らせた山本が場を取り仕切り始めた。
「まず伊作くんのアパートはコーちゃんを除く他が全部消えて平穏を取り戻したと。そこで大家さんがいままでできなかったアパートの改修に着手し、伊作くんは家賃が払えそうもなく困り果てている。そこまではいいかな?」
「はい。その通りです」
「とりあえず急ぎの案件として伊作くんの住居は昆が責任を持って用意すること。問題はコーちゃんをどうするかかな?」
「それなんですが〜。コーちゃん曰く、伊作先輩に伝えたいことがあるそうでそれを伝えていただければ成仏するということです」
「「「!」」」
「それは最こ「黙ってろ」
口を開こうとする雑渡を陣内が裏拳で止める。
「コーちゃん僕になんて?」
「書き留めましたので読みますね」
そういうと先ほどから何度も聞いては書き直した紙を取り出し、読み上げる。
『伊作くんへ。今までありがとう。あの誰もいないアパートで誰にも見られず過ごしてきた暗くて長い日々、それを君が照らしてくれました。僕のことを怖がらずに話かけてくれてありがとう。部屋にいさせてくれてありがとう。できるなら恩返しをしたかったけどすでにこの世から消えた身では何もできず、せめて君に危害を加える人間は排除しようとしたけどそれが君の想い人だったなんて
そこまで読むと全員がちらりと雑渡を見た。雑渡は勝ち誇ったような笑みを浮かべると伏木蔵に続きを読むよう促した。
『呪い殺したかったけどそれでは君が悲しむとおもったので辞めました。』
「不穏なこと言ってるな!」
『君がどれだけ彼を思っているか他の皆が消え去るのを目の当たりにして思い知らされました』
「こいつ!伊作くんの痴態を!」
ぶわりと殺気をにじませる雑渡をまた陣内が押し留める。
『僕はおとなしく消えます。また来世で会えたらその時こそいい友人になりたいです』
「それで終わりですか?」
「追伸があります『追伸、そこの黒づくめの大男。地獄で会ったら覚えてろ』だそうです」
「はっ!やれるものならやってみるがいい!なんなら目の前で伊作くんとの濃厚な絡みを見せ「子供の前だと言ってるでしょう!」
今日幾度目かの裏拳が飛び、雑渡は憮然とした表情でソファに深く身を沈める。
「以上です」
「コーちゃん僕の方も一人暮らしの寂しさを君がいたことでどれだけ慰められてたかありがとうコーちゃん」
そういうと突然部屋がふわりとした光に包まれ風もないのにテーブルに置いた書類がパラパラと落ちて行った。
「これはコーちゃんですか?」
陣内が信じられないといった顔で部屋を見渡すとその光は消え、部屋はまたいつものように平穏を取り戻した。
「わあ僕こういうの初めて見ました。さすがですね伊作先輩。ミステリー〜」
「嬉しいけどなんか寂しいね。また会えるかな?」
「会えると思いますよ〜。そういえば僕、コーちゃんに見覚えあるかもです〜」
「え?」
「いつかの廃墟探索の時に見た、天井からぶら下がってた方とネクタイが一緒でした〜スリル〜」
「「わあああああああああああああああ!」」
「あいつ現代人だったのか!戻って来い!死んでるが殺してやる!」
静かな応接室はまた騒然としたのだった。


ここから更新分、と前書いたエピソードと合体

「ちょっとドタバタしちゃったけど一件落着かな?」
伏木蔵とそれを送る山本を見送りつつ雑渡はぽつりと呟いた。
「すみません。お騒がせして」
「伊作くん周りが騒がしいのは今に始まったことじゃないから大丈夫だよ。ところでアパートはいつから改修なの?」
「あ、まだ数ヶ月先だそうです」
「じゃあ、誕生日パーティは予定通りできるね。そのあとは
「はい
雑渡の言わんとすることが分かったのか伊作はさっと顔を赤らめた。
「その前にいつでもきていいんだよ?カードキー渡しておこうか?」
「いえ!大丈夫です!その時がきたらでいいです」
さらに顔を染めて俯く伊作が愛おしすぎて力の限り抱きしめる。
「ねえねえ、伊作くん。俺を思ってどんなことしてたの?それだけ教えてよ」
伊作の叫び声が夕暮れの空に響き渡った。



20歳になってお酒が飲めるようになるんですとzatにいうと初めてのお酒を奢られることになり、行った先は高級レストラン。ソムリエから何本かテイスティングしてどうみても高そうなワインを注がれ頭パニックの伊。「口に合わなかったら飲まなくていいから」と言われて飲んでみると美味しくてするすると飲める。食事も美味しくて酔いも回って浮かれて話も弾んで、その間も優しい笑顔で自分を見つめてくる恋人にドキドキしながら楽しい時間を過ごして気付いたらzatの腕の中で目が醒める伊。
途中から酔っ払って記憶を飛ばしていてお持ち帰りされたようだが服は着たままでちょっとほっとする伊。目が覚めたzatの腕から逃れられず前日の痴態を聞かされる。高級ワインを何本も飲み、コース料理をおかわりし、「今日はzatさんと一緒のお布団で寝るんです!」と路上で叫ぶのでタクシーで連れてきたと。部屋に入った途端に真っ先に布団に入って大の字。仕方がないので自分はソファーで寝ようとしたら突然起き出して「一緒に寝るっていったじゃないですか!」とzatをはがいじめにしながら布団に連れ込んだとのこと。あまりの傍若無人さにタヒにたくなる伊。「頭は痛くない?お酒は強い方なんだね」と優しく言われ土下座五体投地。昨日の食事代を払いますというもののバイト代で払える金額じゃないのは明確で床に頭を擦り付ける伊
「そんなことよりさ」
乱れた服の胸元から見えるたくましい筋肉が伊作の目に入る。
「もう一つの初めてまだもらえないのかな?」
しっとりとした口調で寝起きの気だるげな様子で言われ一気に顔が赤くなる伊
「ああああすみません!その!昨日差し上げるつもりでしたが緊張してしまってつい飲みすぎて!なんならいっそそのままもらっていただいて結構だったんですがああああ」
あまりの恥ずかしさに何を言っているのかわからない状態になっている伊をzatは笑い飛ばす
「ははは!酔っ払って意識も不確かな君とじゃ楽しくないでしょ。……で?先にシャワー浴びる?それとも私から?」
「あああああああああ浴びます!浴びさせていただきます!お待たせして申し訳ありませんがしばしお待ちを!!!!」
そういうと脱兎のごとくシャワールームに駆け込む伊

美味しい料理を召し上がれの段〜完〜


時間はかかったがなんとか身綺麗にしてきた伊。zatをシャワールームに送り出した後ベッドの上で覚悟を決めるため深く深く息をする。そしてあることに気付いた。

「今朝じゃないか

外は快晴。そしてタワーマンション高層階なのでカーテンはない。
煌々と差し込む朝日の眩しさと、それに照らされながらこれから起こる事を想像して伊は声にならない悲鳴を上げる。
「どうしたの?」
そこに腰にバスタオルを巻いたzat登場。
「すすみません!やっぱり無理です!夜!夜にしましょう!今は無理ですう!」
恥ずかしさで泣きながら訴えてくる伊に色々察したzatは残念そうな顔をする
「明るくて恥ずかしいの?」
「はい!決してzatさんが嫌いなわけじゃないんです!覚悟はできてるんですがでもでも!」
「私は君の全てを明るいところで見たいけどなあ」
その言葉に伊の喉がひゅうとなる。
「zatさんがそうでも僕は無理なんです!」
「そうなの?でもさあ伊くんも見たいんじゃないの?」
「な何をですか!?」
「私のえっちな姿」
zatの言葉に今まで脳内で繰り広げられてきたzatとの逢瀬が目の前をメリーゴーランドのように回っていく
「見見たいです!見たいですけどおおお!」
えーんと泣き出す伊を宥めながら朝日に温められたベッド連れ込まれる伊。


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