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ながみね
2025-05-17 22:04:49
1173文字
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とある午後の話
奏章Ⅳでのカルデア天草とジャルタリリィ
ネタバレ有りでサンタ師弟の話
「見てくださいお師匠さん! 完成です!!」
少女が高らかに宣言する。
その小さな両手を器として、折り紙でできた花がひとつ納まっていた。
「おや、上手にできましたね。大変よくがんばりました」
まじまじ眺めて素直に感心すると、リリィはふふんと胸を張る。
紙細工の花はユリに似た形をしていた。5弁の花びら一つ一つが別の紙でできたユニットで、組み合わせてひとつの花になる。
折り図がよく分からないと訪ねてきたのが二時間前。どうなることかと思ったが、なかなかどうして良い出来だった。
「これもお師匠さんのアドバイスあってこそです。ありがとうございます」
「私は大したことはしていませんよ。
諦めずに取り組んだリリィの努力の賜物です」
賞賛に照れて、負けず嫌いな少女はえへへと笑う。
実際、自分はほとんど手を出していない。隣でのんびりお茶を飲みながら、求められた時に助言を与えただけだ。
「ところでリリィ、貴女はそろそろお茶会に向かう時間なのでは?」
「はっ、そうでした!」
少女は慌てて時計を確認する。
マスター達が特異点解消に向かっている最中とはいえ、居残り組もずっと臨戦体制のままではいられない。友人達との時間は良い息抜きになるだろう。
談話室のテーブルの上を手分けして片付けてから、リリィは最後に折り紙の花を掬いあげた。
「
……
このお花、みんなに喜んでもらえるでしょうか?」
「ええ、もちろんですよ」
笑顔で請け合えば、少女もほっとしたように笑った。
「それではまた後で! 失礼しますね、お師匠さん」
「はい。転ばないよう行ってらっしゃい」
はずむような元気な足どりが、あわててお行儀よいものへと変わる。背筋はピンと伸び、廊下は走らない。
その様子を微笑ましく眺めながら──天草四郎は不意に気づいた。自身の感覚が急速に閉ざされていく。
(今回の現界はここまででしたか)
まあ、こういうこともあり得るだろうと可能性の一つとして考えていた。すでにこの世ならざる身。何が起きても不思議ではない。
(
……
ひとこと、言葉を残すぐらいの猶予はあるか)
今ならまだ間に合う。近くにいるリリィなら呼びとめられる。そう思ったが、結局は思うだけに留めた。
伝えるべき言葉は既に伝えている。彼女はもう一人前の英霊だ。
せっかくの楽しい気分に水を差してまで、「お元気で」だとか「これからも精進を」だとか、言わずもがなのことを伝える必要はないだろう。
それに、リリィに限ったことでなく、置いていく者たち全てに別れを告げることなどできはしない。
親しく言葉を交わした者に、そうではない者。
既に去った者、まだ戦い続ける者。
(どうか皆さん、ご健闘を)
心は凪いでいる。だから少年はたった一人、誰にも気づかれないまま姿を消した。
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