三毛田
2025-05-16 15:05:33
1067文字
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94 04. すぐ隣が定位置

94日目
だと、胸を張って言えるようになりたい

 指先ほどしか離れていない距離。それが俺に許された、最も近い距離。
 手を伸ばせば、もっと深く触れられる。でも、それを許してくれない。ううん。許してもらえているけれど、俺が臆病でここまでしか無理。
「っと。ごめん」
「穹?」
「邪魔した?」
「そんなことはない」
 指先が触れ、嫌がるかなと思って謝るとどうして俺がそれを口にしたのか? というような不思議に思っている表情。
 作業の邪魔をしたかと告げれば、そうでもないと。
「お前に触れられるのは……嫌じゃない」
 ボソボソと口にされたが、俺の意味にはきちんと届いている。
 何この可愛い生き物。
 クールで、必要事項以外はあまり口にしたがらない。俺となのがちょっとふざけていると、呆れたように自分は保護者です。という感じに俺たちを見ているのに。
 羅浮での一件を解決して以降、俺に対する好感度でも上がったのか、前よりも向ける表情も態度も軟化している気が。
 一番わかりやすいのは、俺が触れるのを簡単に許してくれるようになったこと。
 そして、こうして近くにいても何も言わなくなったことかな。
 羅浮に行く前は、〝何でこいつはここにいるんだ〟という表情を隠しもしなかったのに。
 まあ、これからも共に旅をしていく仲間としては嬉しい変化である。
 けれど、人間という物はよく深い生き物だ。
 親友で、俺の一部だと言われて嬉しくないのかと問われるとかなり嬉しい。でも、それ以上を望んでしまう。
「丹恒」
「どうした?」
「好き」
「ああ。俺も好きだ」
 違う。
 そう叫びたいのに、嬉しそうに柔らかく微笑む彼を見てしまうと、何も言えない。
 丹恒の好きと、俺の好きは違う。でも、彼はそれをわかっていないのだ。
 具体的に言ってしまうと、俺の〝好き〟には邪な感情も含まれている。
 手を繋ぎたい、ハグしたい。位ならまだ可愛い方。
 俺の手で心も体もとろとろとに溶かして、俺以外いらないって言わせたい。
 そんな、醜い独占欲。
 知ってほしいと思うけれど、知られたくない。
 今はまだ、彼の親友という、すぐ隣を定位置にしておきたいから。
 恋人を望むには、まだ早いかもしれなくて。
「どうしたらいいと思う?」
「それはあんたと丹恒の間で決着をつけるべきであって、ウチを巻き込まないで!」
 丹恒が集中し始めたので、隣のなののところへ突撃して相談したら、これだ。
「好きって言っても伝わらないから、困ってるんだって」
「押し倒せばいいじゃん」
「それで伝わるなら、俺だって苦労してないよ」