草枕
2025-05-16 11:45:39
710文字
Public syzygy
 

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メロペイア到着後.夜


 深く澄んだ星の夜は丸い。メロペイアの現状を思えば──『澄んだ』とは、夜を照らすエネルギーが枯渇しかけていること、だろうが、とにかく、この星の夜空は穹を描いて蒼い。ルクスから観測できる星座と同じものはなかった。整然と並び動くものであっても、観測地点が変われば煩雑に見える。少なくとも今のシルーに、星だけを頼りに方角を知る術はなかった。
 与えられた休息時間である。ここが友好ムードの異星であれ、遮蔽物に身を隠し、誰か、武装した同僚が起きている、そういう状況で眠るように、この身体はできている。……青年隊員は、上手く休息を取れているだろうか。
 話をした幾人かの隊員たちの顔が浮かぶ。若手らしい活気に満ちた者や、世間擦れしていない真っ直ぐさを持った者。頼りなさげな未熟に、却って奮い立っている成人隊員も見かけた。
──いつかの昔、自分もそんな風に見えたのだろうか。

(疲れたな、)

 頭が重く、拍動の度に熱が生まれるようだった。地面からの冷気が心地良い。
 シルーは外交的な性質ではない。シルーを知る者は、青年隊員への角の取れた態度に驚いていたし、メロペイアの人々へ無作法をしないか、気遣いとも警戒ともとれる視線を寄越す。後者については、シルー自身、配慮に欠けた言動をしてしまわぬよう、気が抜けないのだ。つまり、この任務、初手から慣れないことばかりなのである。

 一つ、深呼吸をする。
 慣れないことは、訓練すれば良いのだ。繰り返し繰り返し、肉体が覚えさえすれば、後は勝手に動く。そのための手本は、たくさん居る。

 深く吐き出した息は、澱みであったかのように夜の闇に沈んでいった。
 星がまたたいている。