草枕
2025-05-13 08:37:25
973文字
Public syzygy
 

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メロペイアへ向かう艦内にて

「なあ、シルー。人生ってーのは、重き荷を負って、長い道を歩くような感じなんだよ」

シルーに管を巻いていた男は、酔っていた。だからだろうか、随分と、機嫌が良さそうに言ったのだった。
「だから、────」





レム睡眠から起床時の脳波の移行を確認。おはようございます。覚醒に最適な音楽の再生を開始します……
管理AIの声、アラームの音楽。ぼんやりとしていた世界が、徐々に像を結んでいく。起き抜けに夢を見ていたような気がしていた。内容は覚えていないが、夢が脳による記憶整理なら、昨日の訓練はよく定着したかもしれない。それは、良いことだ。
起き上がりながら、AIに呼びかける。

「伝達事項、確認」

プライベートな空間が与えられているとは言え、寝具をピタリと畳む習慣は抜けない。シルーが戦闘員になるため、一通りの訓練を受けたのは軍でのことだ。ロクな経歴もコネもなく、健康な肉体と健全な戸籍のみで、どうにか訓練兵に滑り込んだ遠い日。そこでの徹底的な扱きは肉体のみに限らず、団体行動を円滑にするために合理的な日常の動作であったり、時に理由もない慣習であったりした。既にシジー隊員としての任期の方が長くなったが、シルーを形成する原初の経験は、軍でのものだ。
全ての情報が読み上げられるより早く済む着替えも、また。手持ち無沙汰に弄る耳元のデバイスに、最後の通達が届く。

──なお、この任務には青年隊員が随行します。

青年隊員。アステロイドでの訓練を受けた年若い者たち。シルーは遠征任務が多く、指導に行ったこともなければ、ルクスの地でそれらしい者を見かけたこともない。それでも、気に掛かっていた。自分のように、他所の組織から来た訳でない、シジー子飼いとも言える青年たちが、どのような教育を、待遇を受けるのか。会ってみたいと思っていた。

(開けたらびっくりポン、こんな任務で一緒になるとは思っていなかったが……、)

新兵が難しい任務に突然放り込まれることの意味と、行く先を考える。人手不足か、『神』のお告げとやらか。わざわざ手ずから育てておいて、使い捨てるようなことはしてくれるなよ。それは色々と、厄介が過ぎる。

以上です、との声を聞き終えて自室を出る。
廊下で聞こえる限りでも、隊員たちの会話と言えば青年隊員が話題の種のようだった。