kasimiyakedama2
2025-05-11 21:33:27
4823文字
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ちなみにめちゃくちゃ再生数伸びた(テムズ組)

Xで「 #5rtでエロいssを書く見た文字書きさんもやる」というタグによる企画でございます。
書いたんですけどエロいの定義が自分でわからなくなってしまいました。
ごめんなさい。
たぶん課題クリアできてない気がするのでリベンジを予定しております。

もったいない精神でそれはそれとして出す

ちなみにめちゃくちゃ再生数伸びた


依頼主は大学の同級生。
「黙っていればイケメンの部類なんだと思うんだけど」とは、これまた同級生の女子の、彼に対する評価である。
仲間内では外見はともかく、一風変わった男として認識されていた。
その認識を作っているのはひとえに彼の趣味にあった。
依頼主は自身の趣味にまつわる動画配信チャンネルで、とある企画配信を行うのだといって、自分に撮影の手伝いを依頼してきたのだ。わずかではあるが報酬も出るということで、自分はその話に飛びついたというわけだ。
彼は「できるだけ、カメラに映されていることを当人たちが意識しないで済むような画角で、可能な限り自然なリアクションを残したいんだ。」と希望に満ちた瞳でそんなことを言った。
「慣れてないうちはちょっとビックリすると思うけど……危険はないから心配しないで。」
同級生は少しだけ表情を曇らせたが、すぐに笑顔に戻るとそう付け加えた。

そして自分はどこか無機質な白い壁に囲まれた室内で、セッティングされたカメラから流れてくる映像を見つめている。
依頼主が今日の配信のために貸しスタジオを手配していた。
『ちょっとビックリすると思うけど心配しないで』の意味はすぐに理解ができた。
複数のモニタに映し出された人物の体表を覆うのは、緑の鱗。
その体表の鮮やかな緑は人ならざるもの。瞬きをしない大きな赤い瞳もそれを語る。
彼らもまた2本の足で大地に立ち、呼吸をし、人語を話す。
彼らは超人と呼ばれる者達で、ヒトとは共存する存在。
知識としては知っている。テレビやインターネットを通じて画面越しに目にしたこともある。
しかしこんなに近いところで見るのは初めてだった。
五本の指先には尖った爪。文明に染まった人間よりもずっと自然界の獣を思わせる。
そんな異形の者を映し出す画面の右下、経過時間を刻む無機質なデジタル時計の文字だけが異質な空気を醸し出していた。

「まったく、ろくでもない大人になりやがった……。」
困り果てたような声で、緑の鱗を纏う男が言う。
「もういいかげん諦めろ、アトランティス」
諭すような、呆れたような、どこか嘲るような声がした。
配信主のものではない高音の、どこか癖のある声の持ち主もまた、アトランティスと呼ばれた緑の男と同じようにヒトというよりは魚類の近接種であろうという外見をしている。
青と白の鱗を持つであろう長身の男は、ピョピョ、と笑い声を漏らすと気安いそぶりでアトランティスの肩に片手を乗せ、その手を払い除けたアトランティスが嫌悪感を滲ませつつ頭を振った。
「もう我々はまな板の上の鯉というヤツだ。……楽しんでしまったほうが有意義だと思わんか?」
くそ、とアトランティスの小さい声が続く。
人よりも表情が理解しづらいはずなのにファインダー越しでも伝わる拒否感、嫌悪感、そしてわずかな戸惑いと畏れ。
ライブストリーミングはそんな光景から始まることになる。

*                             *

──なんで。
先ほどから、アトランティスの口をついて出るのはそんな単語だけであった。
なんで。なんでだよ。
それしか言葉を知らぬかのようにアトランティスは呟き続けた。
答えをくれる者はいないというのに。
ただ最後まで、堪え忍ぶしかないのだと知っている。しかしその言葉を繰り返す。
孤立無援、援軍はなし。己に抵抗の術はない。
しかしそんな己の姿を見るものが1人ではないことをアトランティスは知っていた。
それはリングを囲む観客ではなく、己の、いわば痴態をカメラの映像を通して眺めている視聴者であった。
向こうはこちらの全てを見て、こちらはそちらを見る術を持たぬ。
なんたる不平等、なんという辱め。
これがいつものリングを取り囲む観客であったのならば、その顔をひとりひとり睨みつけて中指の一つも立ててやるものを。
それすらも許されぬ。

このライブストリーミングはいったい何人が見ているのか。
脇に置かれたタブレットの配信画面を見てしまえば知ることができる。
この有様を見ている無数の人間達の反応だってそうだ。
しかし、見てしまうことが怖かった。
文字として踊るその反応を目の当たりにしてしまってなお、失われつつある平静を保っていられる気がしなかった。
見えない視線が纏わりつく。
ああ、と。
アトランティスという超人レスラーを知っている者ならば、誰しも上がった声の響きの新鮮さに驚くはずだ。
羞恥に顔を伏せたアトランティスの、頬のあたりに生えた鰭だけがふるふると震える。
アトランティスが縋るものは目の前に居る男の手首しかなかった。

「本当に、初めてなのか?」
聞こえてくるのは感嘆混じりのロビンマスクの低く落ち着いた声であった。
「初めて、だよ……ッ」
いくばくかの逡巡の後、アトランティスが答えた。
「見事だ。とても美しい。」
嘆息混じりに紡がれる言葉。
ロビンマスクの声に喜びの感情を嗅ぎ取って、アトランティスの心はさらに掻き乱された。
まるで愛する仲間を呼ぶように、この名を呼ばないで欲しかった。
眩しい太陽のような存在は、直視すれば眼を焼くだけだ。
だからこそ近づくつもりはなかった。
己の名を呼ぶ声に応えたくもない。
だが耳を塞いでも効果はなかった。
──いやだ。
赤い瞳が眇められたのは、羞恥なのか恐怖なのか。
アトランティスは震える弱々しい声をあげた。

低く落ち着いた男の声に反応してしまうカラダ。
唇のない、牙の並んだアトランティスの口はゆるく開かれて戦慄く。
こんな責め苦を受けるぐらいなら、いっそ身体を貫かれて死んだ方がマシだ。
鼓膜を通じて脳内に響いてくる男の声に、言葉に、胃袋の底あたりがムズムズする。
男の声が己の名を呼ぶたびに。その響きは愛を囁くものでもなくただ淡々としているだけなのだが、それすらも居心地が悪くて仕方ない。
どれだけ悪態をついたとて声の主・ロビンマスクという男の顔を歪めることすらできないことも、もう理解していた。

「くそ、……嫌、だ、も、う、っ……やめてくれ……ッ」
今や室内には、アトランティスの虚しい声だけが響いていた。
その声に含まれるのは明らかな羞恥の感情。リングの上であったのなら見せることはないのだろう。
弱弱しくかぶりを振って、普段からは考えられぬような拒絶の言葉をアトランティスは口にした。
神に祈ることすらない悪魔が、ただ相手の許しを乞うている。

終わりは近いことはわかっていた。
早く、早く終わってくれ。もう耐えられない──


*                             *


「そちらの様子はいかがですか?マーリンマンさん?」
「さっきからずっと悶絶しているのだ。……こいつがな」
「ン〜〜〜ッ!!!」
頭を抱えて片手でマーリンマンの手首を握り締め、長机に突っ伏したアトランティスが唸り声を上げている。

真っ白な貸しスタジオの一室に長机と椅子が二脚。
アトランティスとマーリンマンが並んで座る中央にタブレットが置かれていた。
マーリンマンが見つめているのはその、タブレットの配信画面に映し出されたロビンマスクとポールの姿だった。
顔を伏せたアトランティスの姿に、ふたりが苦笑を浮かべているのが見える。
ようやく手首を解放されて、爪痕のついた手首を大げさに振ってマーリンマンは笑う。
痛みなど意に介さぬ様子で、それよりも滅多に見られない宿敵の姿が愉快でしょうがないのだと、そんな顔をしていた。

アトランティスがようやく突っ伏していた顔を上げ、配信画面を覗き込んだ。
今の自分とまったく同じ体勢で、長机に並んで座るロビンマスクとポールの姿をようやく見た。
「今日は本当にありがとうございました、ロビンマスクさん。僕が初めて見た超人プロレスの試合をロビンマスクさんに解説していただきながら振り返ることができるなんて夢のようです。」
「いや、私も有意義だった。何せ当時はメディカルサスペンションの中に居たものだから、改めてしっかりと見る機会をくれて嬉しいよ。ありがとう。」
にこやかに話す彼らが居るのは、隣の部屋だった。

かつて純粋無垢な瞳で自分を応援していた少年は成長した。
いろんな意味で。
少年はそれから超人レスリングに興味を持ち、アンダーグラウンドな魔界レスリングの専門チャンネルを開設し、そして。
三属性に分かれた陣営のそれぞれにきちんと作法に則って自身のチャンネルへの出演依頼をした。
正義超人からロビンマスクを。悪魔超人からアトランティスを。そして完璧超人からはマーリンマンを。
ポールが初めて観た超人プロレスの試合。
父に連れられてテムズ川のほとりで見たアトランティスVSマーリンマン戦。
ポールが超人プロレスというものに興味を持つきっかけとなった、いわば今のポールが運営するチャンネルの原点とも言えるその一戦を、かつてアトランティスと死闘を繰り広げた母国イギリスの英雄ともいえるロビンマスクと共に見たいというのがその理由であった。許されるのであれば、劇的な幕切れを迎える戦いの当事者である二人も共に、とポールは考えた。
もちろん正義超人であるロビンマスクがその依頼を断るはずはなく、多忙な中スケジュールを空けてくれた。
問題は、普段人間とは馴れ合わない態度を貫いている悪魔超人と完璧超人であろうと思われたのだが、ポールの熱意と、その依頼があまりにも作法通りであったがゆえに、陣営のおさ達はそれを無碍にもできなかった。
そして今に至る。
「これを断ることは礼を失することになろう。……おまえは気が進まぬだろうが」とどこか申し訳なさそうな空気を纏って依頼を受けることにしたとアトランティスに告げた「あのお方」の姿はいまだに忘れられない。
あんな姿を見せられて、首を横に振ることなどできやしない。

約30分、過去の自分の試合をロビンマスクにじっくり見られた上に、言葉を尽くしてこってりと褒めちぎられた。
それはアトランティスにとっては永遠とも言える長さに感じた。
特にアトランティスが繰り出した最後の技、タワーブリッジについては「初めてのはずなのに素晴らしい完成度だ」と、興奮を抑えきれない口調でロビンマスクは語った。
当人に見られていないからこそ出した技を、語った言葉を。
全て聞かれてしまったのはアトランティスにとっては恥意外の何者でもない。
殺してくれ、と何度か呟いた気がする。
そんなアトランティスの苦悩をよそに、隣の男──かつての対戦相手は褒められたことに気を良くして上機嫌だ。
能天気が過ぎる。アトランティスはカメラに映らぬ机の下でマーリンマンの足を踏みつけたがまったく効果がなかった。

「本日は特別にサブチャンネルの方でアトランティス選手とマーリンマン選手のリアクションも生配信しております!サブチャンネルのURLは概要欄にありますのでまだの方はぜひそちらもご覧になってください。」
背筋を伸ばしてカメラに向かい、澱みなく話すポールの姿は眩しかった。
在りし日の少年はこんなに立派に成長したのだという気持ちと、どうしてこうなったのだという疑問符がぐるぐるとアトランティスの頭の中を回っていた。

「チャット欄が『照れてる』『ギャップ萌え』『かわいい』で埋め尽くされているぞ、アトランティス」
長い爪を頂いた指先を器用にタブレット画面に滑らせて、マーリンマンは視聴者のコメントが流れているチャット欄を遡って無邪気な笑い声を上げていた。
「うるせえ!言うな!読みあげんな!!」

「ピョピョ、あやつマンさんスーパーチャットありがとうございます」
「だからてめえはなんで馴染んでんだよ!!ばか!!」