監督生の出身地では、語呂合わせの記念日がいくつも設けられているらしい。らしい、というのは、それを監督生から直接聞いたのはアズールであり、俺はそれをさらにカリムから又聞きしたに過ぎないからだ。
「……で、今日が『メイドの日』なのはわかった。それでなぜ、お前がメイド服を着ている?」
夕暮れの寮長室。夕陽に照らされて満面の笑みを浮かべる主人は、仕立てのいいメイド服に身を包んでいる。レースとフリルが贅沢に使われており、肌の露出はほぼゼロ。カリムにしては珍しい服装だ。いや、問題はそこじゃない。
アジーム家次期当主が使用人まがいの格好をしているのは、どういうことだ?
カリムはニコニコと笑みを崩さぬまま、自信たっぷりに言い放つ。
「アズールが、ジャミルならきっと喜ぶって!」
「……ほう」
さてはあいつ、俺の「夢」を見たな。
「そうかそうか。アズールには今度たっぷり礼をしないとな」
「ジャミルが気に入ったって知ったら、アズールもきっと喜ぶぜ!」
「……ああ、気に入ったよ」
「ジャミル?」
白と黒の楚々とした布の塊に包まれた身体を、そっとベッドに押し倒す。さすがに俺の様子がおかしいことに気づいたのか、カリムの表情から笑みが消える。
「なあ、カリム」
「うん?」
「この格好、俺の他には誰にも見せていないよな?」
「見せてないぜ! アズールにジャミルと一緒に写真撮って送ってくれって言われたけど」
「それはあとにしよう。……撮れたらの話だが」
「え? え?」
ボリュームのあるスカートに手をかける。舌なめずりをすると、カリムの頬がかあっと赤く染まる。
「じゃっ、じゃみる?」
「お優しいご主人様がこんな素敵な格好をしてくれたんだ。たっぷり味わってやらないとな?」
「じゃみるぅ……!?」
数時間後、カリムはフリルの山に埋もれながら「じゃみるのえっち……」とジト目でこちらを睨んできたのだった。
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