三毛田
2025-05-10 12:15:20
1091文字
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88 08. 心臓ばかりうるさくて

88日目
君といるといつもそう

 好きだ。
 その気持ちに気づいてしまい、顔を見るだけで心臓がうるさくなる。
 心臓ばかりがうるさくて、肝心な言葉を伝えることはできず。
 ただ、時間が流れていくのみ。
「はあああ……
「ため息ばかりついていると、幸せが逃げるという言葉があるらしい」
 丹恒の横で大きなため息をつくと、本から目を離すことなくそんな言葉が。
「逃げたっていいよ。大事なことを、伝えられないヘタレなんでね」
「どんなことなんだ」
「ん? ナイショ」
「そうか」
 特に詮索しないでいてくれるのは、嬉しい。でも、してくれた方がもしかしたら告げられたかもしれなかった。
 今だって、彼が隣にいるという事実にちょっとだけ心臓がうるさいし。
「好きだな……
 唇だけ動かす。
 きっと聞こえていないから、大丈夫。
 そうだと思っていた。
「わっと」
「穹。大丈夫か」
「う、うん」
 丹恒のフィールドワークの目的地と、俺が受けた依頼の目的地が同じで。
 どうせならば、一緒に行動しようと二人で出かけた。
 のだが、途中で俺が足をもつれさせて丹恒の胸にダイブ。
 彼の胸は、想定していたよりもふわふわでふかふかで。
 もっと硬いとか、骨ばっているとか思ってた。
「やば……
 やみつきになりそうなその感触に、思わず声が漏れ出て。
「穹」
 怒った声かと思ったら、ちょっと緊張しているような声色。
 そっと左側へ耳を向ける。
「あれ?」
 ドッドッと、ちょっと早い鼓動。
「丹恒? 緊張してる?」
「おま、えが」
「俺が?」
「俺に触れるから……
 こんなこと、口にしたくなかった。と、小さく続け。
 何だよ、それ。俺が悪いみたいじゃんか。
「こんな柔らかい胸、揉んでやる」
「こ、こらっ」
 他のひらを大きく広げ、胸を覆うようにそっと触れ。それから、ゆっくりと指を曲げていく。
「ヤバ。すごい柔らかい……
 さて。どんなかおをしているのだろうか。と見上げてみると、真っ赤になって唇を強く噛んでいた。
 すごく、すごくエッチすぎます。
「丹恒」
「穹、頼む。その手を、離してくれ……
 掌から伝わる鼓動は、とても速い。
 これは……これは、期待してもいいのだろうか。
「丹恒、好き」
「おま、えはっ」
 驚いたような声は出すけれど、拒絶するようなことはなく。
 だって。
 今だって、拒絶しようと思えばできるはずなのに。
 俺の手を強く振り払わないし、つき飛ばそうともしない。
「俺も、丹恒といると心臓がうるさくなるんだ。お前が、好きだから」
……
「丹恒も同じってことで……いいんだよな?」