moto
2025-05-10 10:22:27
828文字
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そこが好き

さまささワンドロワンライお題「自転車」


笑う門には福来る。そこに簓さんが加われば福は倍増や。いつもの煙草と新商品の棚で気になったお菓子を買い、商店街の福引きの券を一枚もらう。事務所への帰り道にある福引きコーナー、最終日まで残っていた特賞、一回だけ回したガラポン、鳴り響く鐘の音。徒歩で出て行ったはずなのに、満面の笑みで電動自転車に乗って戻ってきた簓に、左馬刻は「なにしてんだてめえは」と呆れ顔である。
「いやあ、福を引き寄せる力がありあまってもうて」
「どうすんだこれ」
「MCD号て名付けたからこれに乗って登場しようや」
「ふざけんな」
「左馬刻後ろに乗せても電動アシストでスイスイやで」
「乗るかアホ」
 左馬刻はつれない態度であったが、簓が勝ち取ってきた電動自転車は、ちょっとそこまで行くのに大変便利で、他の仲間たちには好評だった。最初は興味がなかった左馬刻も、簓が自転車に乗って坂道をスイスイ登って行くのを見てからは考えを改めたようで、自転車に乗る姿を見かけるようになった。一度気にかけたらとことん面倒を見る男である。雨が降れば濡れないように屋根のある場所に移動させ、天気が良く何でもない日には自転車のボディを磨き、ブレーキを調整し、タイヤの空気も常にパンパンの状態にしている左馬刻の姿に、簓は嬉しさやら楽しさやらいろんな気持ちで身悶えしそうなのをなんとか我慢している。誰も見ていないところで絶対にMCD号と呼んでいるはずなので、それを目撃することが簓の今の目標である。
「戻った」
「おかえりぃ」
 電動自転車のバッテリーをかついで事務所に戻り、充電器の準備をしている左馬刻も、簓の好きなもののひとつである。
「おい、簓ァ」
「あいよー」
「てめえ、使ったあとちゃんと充電しろよ」
「ええ?まだあったやろ?」
「2しかねえよ」
「2もあるやん」
……
……
 顔を見合わせて、左馬刻はため息をついた。
「てめえが取ってきたMCD号だろうが。ちゃんと……あ?なんだその顔」