Adaps_A
2025-05-09 21:55:04
691文字
Public ダングリのはなし
 

飴を奪い合うダングリと光のはなし


夜の街には、思いがけない出会いが多い。
例えば、そこのベンチに座っている生身の挑戦者とか。

「よう」
「ん」

隣に座ると、慌てた様子で口を押さえる。
カロカロと音を立てて、口の中で飴が暴れている。

「何食べてんの?」
「む……もらった、あめ」
「ふうん」

なんだか面白くない気がして、不思議な感じだ。
飴が歯に当たって音を立てる。
たまらなくなって、挑戦者の頭をなでた。
滑らかで柔らかい髪が、指の間を通り抜けてゆく。

「ん~……?」

彼は気持ちよさそうに頭を手に押し付ける。
少し楽しくなってきて、そうっと手を後頭部に添えた。

「む」

そのまま、挑戦者の唇を食む。
薄く開いたそこから舌をねじ込んで、口内で飴を探す。
ほんのりと甘く暖かい歯列をなぞって、舌を絡める。

「ん、う」

奥歯と頬の間に挟まった飴を取り出した。
そこまではよかったのに、飴はずっと口内を逃げ回る。
ようやく飴を奪い取ったときには、挑戦者は蕩けた目でこちらを見上げていた。

「ふ……はぁ……

後頭部に添えた手を肩に回してやれば、脱力した身体でこちらにしなだれかかる。
胸元に手がかかって、彼にもかわいいところがあるんだなと思う。
はちみつ味の飴が舌の上で溶けていく。

「かえして」
「え」

突然入り込んできた舌が、飴を強奪して去っていった。
あんなにかわいかった彼は何でもない顔で、満足げに飴を転がしている。
カロカロと音を立て、飴が転がっていく。
なんだか腹が立ってきた。

「やだよ」
「む」

再度の攻防戦は、飴がすっかり溶けてしまってもなお、終わることはなかった。