三毛田
2025-05-09 21:42:58
1095文字
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87 07. 立ち竦む

87日目
悪夢がこの足を止める

『あ……
 また赤に染まる手のひら。地面に斃れる仲間たち。
『お前のせいでこうなったんだ』
 耳元で囁く俺の声。
『丹、恒?』
『お前が無事で、よかった』
 フラフラ歩いてきた彼を、慌てて抱きとめる。
『え?』
 ぬるりと温かなものが手に触れ。
 それと同時に、彼は倒れる。
『うわあああああ!!』
 手を染めるのは、赤。
 穏やかな表情で倒れている丹恒に縋り付く。
 誰も彼も動かない。
 『お前が弱いから、誰も彼もこうなった』
 ニヤニヤと、厭らしい俺を責める声。
 これは、夢だ。夢なのはわかっている。だって、だって。
「こんな場所、俺は知らない」
 丹恒の服装も、絶妙に違う。
 俺が強く拒絶すると、目の前が揺らぎ。
「はっ」
 目が覚めた。
 全身がじっとり嫌な汗で濡れている。
「丹恒は、無事だろうか……
 部屋を飛び出し、ラウンジを通る。
 資料室の前まで来たものの、足が動かなくて、その場で立ち竦む。
「穹」
「あ、え……何で」
「気配がしたからな。入れ」
 触れた手は冷たい。でも、普段の彼の体温。
 それが嬉しくてぎゅっと掴むと、不思議そうな表情をこちらへ向け。
「穹?」
「えへへ。また、手を繋いでいていいか?」
「構わないが。何か不安なことがあったのか?」
「ん? んー……うん。そう」
「朝食はどうした」
「食べたくない」
「栄養だけは入れておけ。味の保証は出来ないが、携帯食料ならあり。一つで、半日分の栄養素が配合されているものだ」
 食べたくないと告げると、スティック状のものを渡される。
「味の保証が出来ないって……
「携帯食料は、そういうものだ。味に期待するだけ無駄なもの」
「えー」
 手を離し、開けてから恐る恐る口へ。
「美味しくなぁい」
 俺が半泣きになると、丹恒はクスッと笑い。
「仕方がない。俺が食べよう。こっちのビスケットを食べろ」
「うわ~ん。うっうっ……このビスケット、美味しい」
「それはよかった」
 とほほ笑んで。
 丹恒の優しさとその笑った姿に、悪夢は気づけば頭の片隅へと。
「それで?」
「ちょっと悪夢を見てさ」
「そうか」
 ビスケットを食べた後の手をウェットティッシュで拭くと、そっとまた手を握ってくれ。
「今は落ち着いたか?」
「うん。丹恒が手を握ってくれたから」
「それなら、いい」
「なんで?」
「お前の不安が、少しでも軽減されるなら俺は嬉しい」
 今、きゅんと来た。すごくきゅんと来た。
「丹恒、モテるだろ」
「そんなことはない」
 俺の手を握ったまま、首を横に振って。
 嘘だと、断言できない。したくない。