バラ肉
2025-05-08 17:03:33
3247文字
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なごみさんリクエストの🐺ブロ

🐺ブロのリクエスト小説第一弾!
『あまりにも頻繁に🐺さんの相撲部屋に泊まり込む(スパ練)ために、若い衆の間で密かに「女将さん」と呼ばれているJrの様子を拝見したいです。
そして後日、それを🍜さんや血盟軍が耳にして、頭を抱えている…』
楽しく書かせていただきましたが、ご希望の内容とは若干逸れてしまいすみません!

書き手のイメージとしては両片思い(🐺は自覚あり、ブロは自覚なし)の二人です。

日本超人相撲の練習場にて。
横綱として若い衆たち相手に稽古や指導をしていたウルフマンは、汗だくの額を拭うと、用意されていたやかんの水を直に飲んだ。
トプトプ口内に入り込む水分は冷たく、疲れた体に心地よく染みていく。
今どきの力士たちからは「古臭い」と軽口を叩かれるものの、この豪快なやり方が狼と称される彼には合っていた。
何より、それはかつての相棒と同じ飲み方で。

(アイツとの共通点を減らすのは、ナンセンスだからな)

顎に伝う水を腕で拭うと、横綱はニヤリと口角を上げた。
ヤカンの水はあと一回分はあるだろう。なら、これはもうじき来る相手のために取っておいてやるか。そう笑った時だ。

「おーい、ウルフマーン!」

その声に、ウルフマンはパッと道場の出入り口へと顔を向けた。

「おお、来たか!」

太いバリトンに喜色が混じる。
座っていた土俵の下座から腰を上げると、彼は両腕を広げて来訪者の元へ歩み寄った。その姿は、普段は超人相撲界の中でも「クールで渋い」と評判な男とは思えないほどストレートで。

「へへっ。久しぶりだなっ。おら、どすこーい!」
「やったな! このっ、腕白小僧め!」
「はあ!? 小僧じゃねーだろ! 大して年は変わらねえくせに」
「なんだと? よーし、じゃあこちらも容赦は無しだ!」
「わっ、ちょっ! ウルフマン!?」
「はははっ!!」

広げた胸へ見様見真似の突っ張りをする相手の腕を軽くいなすと、そのままぎゅうぎゅうと締めつつ体を持ち上げる。
このまま器用にバックドロップでも決める気か。
―――否、彼等が立つのはまだ土俵でもリングの上でもないのだ。つまり、これは単なる戯れあいに過ぎず。互いに笑い合う様子からして、本気ではないのは一目瞭然だ。

「おいおい、もうやめろって!」
「お? なんだ、もうギブアップか?」

ウルフマンの頭を押し返す手袋越しの掌は、きっと本気を出せば容易く仕留める力がある。しかし、笑顔で捕まる青年にそんな気は更々見えない。当然、ウルフマンの方もその点を分かった上でやっている。

そうしていくらか馬鹿騒ぎして、ふざけ合った後。

「はー、疲れた。毎度ながら、アンタの歓迎っぷりは激しすぎるぜ」

ようやく床へと降ろされた男……ブロッケンJr.は、やれやれとズレた帽子の位置を戻した。勿論、憎まれ口に意味なんてない。負けず嫌いな男の言い訳だ。
「乱暴な挨拶をしかけてきたのはお前だろ?」
だからこそ、ウルフマンもにんまりと軽口を返した。
そしてドカッと再度座ると、こいこいと手を降って隣に座るよう誘う。断られなんて露とも思っていない。実際、自分に習って腰を下ろす男に彼は頬を緩めた。

「にしても久しぶりだな。いつぶりだ?」
「ええ、言うほどか? 確か、宇宙巡業に出る前だから。かれこれ2ヶ月くらいじゃねえの?」
「そうか。そんなものか……

2ヶ月ぶり。
たったそれだけなのに、ウルフマンにはひどく間が空いたように感じた。多いときでは月に数回は来ていたせいだろう。

「.……で、今回はいつまで居られるんだ?」
「ん? ああ、今回はトクシマの屋敷に荷物を準備してきたから、ちょっと長めにいる予定だぜ」
「ほう、それは何より」
歯を見せて拳を握る姿は、これで存分に訓練ができると妙に輝いて見えた。
いつだって眩しい笑顔にこちらまで元気が出る。
日々、本人よりもずっと若い連中と渡り合っているのにも関わらず。

(焦がれてならない)

っ!!」
そう思った瞬間、ウルフマンは咄嗟に自分の顔を思い切り叩いた。

バンッ!!

「うお!な、なんだよ!」

隣で驚きの声が聞こえるが、知らぬふり。いつものポーカーフェイスで澄まし顔を作った彼は、愚かな考えを振り切るように話題を変えることにした。

「にしても、ブロッケンJr……お前さん、俺の巡業開けの日をいったいどこから仕入れた?」
「えっ!?」

今回、巡業に出ることを知らせはしたが、わざわざ帰還日を告げた覚えはない。
なのになぜ? 問い詰めるように目を細めるウルフマンに、ブロッケンJr.はほんの少し視線を彷徨わせると、誤魔化すように帽子の鍔を撫でた。
「あー、それは……なんつーか」
言い淀む態度は、知られてはまずいのか。
とはいえ、見つめる視線は相変わらず鋭く。

「ええっと、その。……なあ、おい。お前らもなんとか言ってくれよ!」

ついに観念したのか。
ブロッケンは大きく肩を竦めると、自分たちの動向を距離をおいて見ていた若い衆達へと視線を向けた。

途端、静観していた彼等の顔が引きつるのをウルフマンは見逃さなかった。

「お前ら……
先程までの和やかな空気が嘘みたいな、刃に似た声が室内に響く。一体いつの間に連絡を取り合う関係になっていたのか。返答によっては今後の稽古方針が変わるかもしれない。
射殺さんと注がれる眼、年若い力士たちは揃って姿勢を正した。

「あっ、横綱! ええっと、これには深ーい訳が……
「そうそう!そ、それに、おかみじゃなくて! ブロッケンJr.さんが来ると横綱も機嫌がいいし」
「場所後だからって怠けるのは良くない!っていつも言ってるじゃないですか!」
「あと、ブロッケンJr.さんの作るドイツ風ちゃんこも絶品だし……
「ばっ、それは内緒だろ!?」
「あっ……すまん! つ、つい」

ポロリと言葉が滑ったのを合図に、一瞬にして動揺が広がる。
そんな若い連中に、ウルフマンはリアルに頭を抱えた。

「ったく……お前らがコイツのことをどう思っているのか、よーく分かった」

全く、こんなところで気を利かすな。
言葉にはしないまでも、疲れた顔には呆れ半分、恥ずかしさ半分の気持ちがありありと滲んでいた。

(それにしても。……本人の前で、やめてくれ)

思わず、会話の意図に気づいたか確かめるため、自分たちのやり取りを緊張しながら見守るブロッケンへ視線を送る。
すると、ぎゅっと握られた拳が目に映った。

「おい、そんなに言ってやるなよ」

そして彼等を庇うように、反対の腕を伸ばす。

……オレが、『いつ帰ってくる?』ってしつこく聞いたのが発端なんだから」

こいつらはあくまでも協力してくれただけ。
苦しい言い訳を吐く様子からして、自分達の話の裏の意味には気づいていないらしい。
ウルフマンはホッと安心する反面、ブロッケンの言葉を噛み締めるなり、ぐっと胸にこみ上げるものを感じた。

(それだけ、俺に会いたかったのか……

ズクッ
胸の奥が疼く。

……っ」

何度も心の底に押し込めた筈の想いが蘇りそうで、慌てて掌に爪を立てる。

「わかったわかった。……俺も、お前に会いたかったしな。目をつぶってやる……だが、俺の知らぬところで連絡を取るのは辞めてくれ」
妥協案を告げる顔は、いつもと変わりなく取り繕えただろうか。
ぐしゃっと軍帽を小突くウルフマンの真意も知らず、ブロッケンはホッと息を吐くだけ。

「りょーかい。相棒」

軽口を紡ぐ唇に弧を乗せ、新緑色の瞳を悪戯に光らす。
その呼び名が、その笑顔が、ウルフマンにとって一番心を揺らすとも知らず。

「じゃあ、やるとすっか」

大きく腕を回す青年に、誰よりもたくましい日本男子は答え代わりに笑い返すので必死だった。



その光景を顔を赤くして見守る若い連中など眼中になく。
……ブロッケンさんが横綱の女将さんになるの、いつになるだろうな〜」
誰が言ったか。
小さな呟きに対して、一同は揃って大きく頷くのだった。




***
後日。

「うおーい!! ラーメンマーン!! ブロッケンがウルフマンのところに嫁に行ったって本当か〜〜〜?」

と、「ラーメンマン大辛ラーメン」のCM撮影で来日したラーメンマンがスグルから突撃を受けるのは……もう少し先のお話。


おわり