三毛田
2025-05-08 13:34:41
1058文字
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86 06. 躊躇うくらいなら

86日目
優しさなど抱かなければいい

 手を伸ばすのを躊躇うのなら、知らなければよかった。
 触れるのを躊躇うのなら、いない人として扱えば、雑に扱えばよいのに。
 そう出来ない俺を、彼らは優しいと評する。
「丹恒ってば、一度仲間だと認識したらその人には甘くなるよね」
「そんな事はないだろう?」
「無自覚? なんだかんだ言いつつ、ウチのことだって見捨てたりしないじゃん。意地悪もしないし」
「見捨てる必要はないからな。だが、意地悪とは?」
「からかったり、馬鹿にしたりすること!」
「たまにそうしている気がするんだが」「丹恒のは、わかりにくいからノーカン!」
「はあ」
 そう言われてしまうと、意地悪とは何を指すのかよくわからないものになってくる。だが、案外人をよく見ているこの少女がそう言うのであればそうなのだろう。
「今だって、もっと手酷く断ったり膝から落としたりしても許されるのに」
 彼女の視線は、俺の膝へ。
 詳しく告げるならば、むにゃむにゃと寝言のようなものを呟きながら、俺の膝を枕に眠る青年へと向けられる。
「床で眠られるよりはマシだ。それに、これならパムの迷惑にもならない」
「甘いな〜」
 と胡乱げな目をこちらに向け、クッキーを口へ運ぶ。
「穹は、初めて一人で依頼をこなしてきたんだ。褒美が必要だと姫子さんも言っていた」
「で、膝枕?」
「本人がそう望んだからな」
「じゃあ、ウチはお口チャックします」
「そうしてくれ」
 ビスケットを手に取り、口へ。甘いが、ほどよい甘さでもう一つ手が伸びる。
 膝枕が褒美になるのかという疑問は、ずっとある。しかし、彼が望むのであればとこうして行動に起こしているのだから、たしかに三月の言うように甘いのかもしれない。
「三月、クッキーのカスを床に落とすと怒られるぞ」
「ちゃんとお皿を持って食べてま〜す」
 おやつの時間の前に掃除――俺も少しばかり手伝った――をしたばかりだから、少しでも汚せば夕飯の時間まで食い込む説教が待っている。
「うーん……
 小さく唸る声が聞こえたので、慌ててカフェラテの入ったマグカップをテーブルへ。
 だが、寝返りを打っただけ。
 俺の腹側へ顔を向け、背中に手を回し。
 と、ここで違和感。
「穹。起きたなら、膝からどけ」
……なんでバレた」
 眠そうに目をこすり、欠伸をしてから起き上がる。
「寝ているだけなら、わざわざ背中に腕は回さない」
「ちぇっ」
「クッキーとビスケットがある。飲み物はどうする?」
「蜂蜜入りのホットミルク!」
「パムに伝えてこよう」