スズ
2025-05-08 07:10:21
7898文字
Public あつおさ
 

シュレーディンガーの手遅れ

野狐時代、先輩に急所をさわられそうになったけど大して気にしてない治と、それに大激怒してるけどそれだけじゃない侑の話

◇リクエストいただいたお題からのお話その3



「なあ、ツム」
「なんや、サム」
「ツムはちんこシコって出したことあるん?」
「は!? なん?!」
 突然の片割れのぶっこみに、俺はオモロいくらいまともに動揺した。動揺してまとめな言葉を返せず、自分の机の椅子に座ってぺらぺらとめくってた漫画雑誌を手元から落とした。ダサすぎる。
 俺のあとに風呂に行って出てきた治が、黒髪にまだたっぷり水分を染み込ませたまま、肩にタオルをかけているだけで拭こうともせずに部屋に戻ってきての第一声だった。
 動揺したことでうまいこと返しが即レスできなかったことに悔しさを覚えつつ、とりあえず落とした雑誌を拾った。治のせいで変なところに折り目がつく。それがたまたま、巻頭についてるグラビアアイドルの水着写真のページで、俺は思わずくっきりと眉間にシワを刻んだ。
「読み終わったん」
「いーや、あとちょっと残っててんけど……って、おい! そんなんはどーでもええわ! いまのはなんやねん!? ……ん゙ん゙っ」
「お? まだ喉の調子おかしいんか」
「うーん、……もう殆ど声変わってるとおもうけど、慣れんくてなんか喉鳴らしてまう」
「ああ。たしかに、自分の声なのに慣れんくて、なんか喉が枯れてるせいちゃうかなとか思うよな」
 声変わりは、治のほうがほんの少しだけ先だった。たしか中学一年の終わりの頃だ。
 俺は二年生の半ばで少しずつ変わっていって、もうたぶん変わりきったんだと思うけど、いまいち慣れない。そんで今は冬で、喉が乾燥するのもあってまだ喉が整わない気がしてる。気の所為なのかもしれんけど。

 そう。俺たちは双子の兄弟で、遺伝子まで同じって話らしいけど、なんでもかんでも同じなわけでもないし、いつもほんの少しだけ治の方が早いことが多かった。

 身長が170センチを超えたのも、治の方が早かった。俺もすぐそのあと超えたけど、最近はまた治の身長が伸びてる気がしてる。175センチまで届いてるかも。
 俺が椅子に座ったまま、床に座る治の方にくるんっと向きなおる。雑誌は手に持ってるけど、さっきのいきなりの発言が気になって開く気にはならなかった。
「そんで? さ、さっきのはなんやねん、いきなり……!」
「童貞まるだしの反応やん」
「童貞はテメェもやろがいッ!!」
「なんか今日、先輩らがな。体育館の片付けしとるとき、そんな話してて、巻き込まれた」
「はっ! あのヘタクソ万年ベンチの奴らか。いかにも話してそうやな。くっだらな!」
 いきなり何かと思ったけど、なるほどな。
 にしても、びっくりした。いきなり何かと思った。まだ少し、心臓がいつもよりも大きく跳ねてる。
 当の治はといえば、ずりずりと近づいてきて俺の目の前に背を向けた座った。
 いやなんでやねん、とツッコむ前に治が、こちらを顔だけ向けて見上げてくる。拭いてくれんの?と言わんばかりに。
「こんの甘ったれめ」
「やって、拭くのダルい」
「俺かてダルいわ」
「でもツム、うまいやん」
「なんせ散々お前に拭かされてきましたんで!?」
 昔から、治は俺に髪を拭かせることがあった。
 もちろん毎日とかじゃない。でも始まりは確か、小学生あがってすぐ。親と一緒に入らなくなって、ふたりで入るようになってからすぐの頃。あまりに眠くてぜんぜん髪の毛拭こうとしなくて、眠すぎて不機嫌極まってた治を見るに見かねて俺が拭いてやったら、時々思い出したみたいに「ツム」と名前だけ呼んで、びしょびしょの髪と肩にかけたタオル姿で現れるようになった。ちなみに俺はこれを〝妖怪・甘ったれ〟と心の中でひっそり呼んでる。
 治は普段からこの性格だし、わかりやすく俺に甘えてくることなんてほぼない。それも昔っからだ。
 俺たちは物心つく頃からずっとずっと張り合う相手で、競う相手で、喧嘩する相手で、時々敵が一緒になったら共闘するみたいな、いわば漫画の主人公とライバルで。そんで「俺が主人公や」「んなわけあるかい。テメェがライバルで俺が主人公やろ」「なんやと!?」「ああ?!」とまた諍いが起きる。そんな相手。
 本当に治は、俺より一歩先にひょいっと行ってることが多くて、だからいつも「知っとるか?」なんてマウントとってくるし、まあ大体俺も知らんから喧嘩になる。悔しくて。(親には侑は治より自分の思ったことを相手に伝える言葉選びがちょぴっとだけ苦手なんやなあとか、小さい頃は言われてた気もするし、余計な世話すぎるけど事実そうだったんやと思う)
 だからそんな治が、俺を頼ったり、俺に甘えてくるのはとにかく珍しい。珍しいくせに「やって当たり前やんな?」みたいなふてぶてしさがすごい。まさに妖怪だ。
 これみよがしに、はぁ〜〜〜〜っとドデカイため息吐いて、俺は雑誌を適当に机に放ると、治の肩にかけられたタオルを手にとって、黒髪にずっしり染みてる水分を拭き取っていく。
「ん……気持ちええ……
……そら、こんだけ丁寧に拭いてるし。あつむくんが愛情たっぷりこめてますし?」
「愛情はええねん。気持ちよおしてくれれば」
「セリフだけやと最低やぞお前」
「そんでな。先輩たちが、ちんこシコって出すの、めっちゃ気持ちええって言うてたんやけど」
「そらそうやろ。そういうふうにできてんねん」
「俺まだ出したことないから、わからんくて。ツムはあるんやろかって」
「あー……。俺も、わからん」
「せやから、そういうもんって知ってるけど、したことないって先輩たちに言うたら」
「いやなんでバカ正直に言うたん。テキトーにそんくらいしてますー言うとけや」
「せやな。そう言うとけばよかったわ。『そんならやり方おしえたろかー』てちんこ掴まれそうになったし」
………は?」
 治の髪を拭く手が、さすがに止まった。
 びっくりして、そんで直後にカッと頭に血がのぼってドスの効いた声が出た。
 思わず「あのド下手クソら、明日どつきまわしたろか」と言おうとしたけど、多分俺が言おうとしたセリフの一語一句を察したっぽい治は。
「掴まれそうになっただけで、掴んどらんし、朝練で出会い頭にどついたりすんなよ?」
 とソッコーで釘を刺してきた。
 いやでもそんなことを言われたって、バレーもヘッタクソな上に人の兄弟に何晒してくれとんじゃワレ‼︎とツラ見たらまた思い出してムカつくに決まってる。
 未遂だろうとなんだろうと俺の双子の片割れである治に、あんなクソ雑魚共がよりにもよってちんこ触ろうとしたとか、その事実だけでクッッッソ腹立つし、なんでコイツはこんな淡々としてんねんと、その「大したことない」みたいな態度もまるっと気に入らない。
「なんでそんな落ち着いてんねんッ!ここはもっと怒るとこちゃうんか!?」
「いや、だから結局さわられんかったし。あとなんや、知識はあっても、実際に俺まだシコって出したことないから、先輩らが最悪なことしてこようとしたんやろなあとはわかってても、どんだけのことされそうになったか、いまいちピンと来んねん」
「おッッッまえは……!!勝手にちんこ触られそうになったんやぞ!?」
「ツムと俺かて小さい頃、お互い玉とか竿とか触ったりしたやんか」
「そ、……れはええねん!! 双子やし! ノーカンや!」
「どんな理屈やねん……。まあ、男同士やし、減るもんでもなし。もうめんどいから俺のん触っとったらええんかったんとちゃうかなって思ってな」
「は、はぁあああッッ!?」
「だってぜってぇ俺のがデカいし。逆にビビって、もうそんなアホなことしてこんやろと思って。でも俺があんまり抵抗せんで黙ってガンつけてるもんだから、それだけでヒヨってどっか行ったわ」
 でもそのせいでひとりでボール片付けさせられて、ほんまダルかった。
 とかなんとか言うから、怒りをぶち越して呆れてしまった。ほんまに何やねんコイツ。思考回路どうなっとんねん。
 まあでも確かに俺と治はバレー部の中でも背もデカい方だし、なんならその万年ベンチの3年らよりはデカいし、バレーだって上手い。
 あいつら俺たちがレギュラーでユニフォームもらっとんのが気に食わないとこが元々あるし、俺にも治にも何かと難くせつけてくるけど、少なくとも治の方があいつらに遠慮したり怖気づいたりする理由はどこにもないし、あんまりにも雑魚すぎて相手にならんから、めんどくさくて好きなようにさせようと思ったっていう言い分も、わかるにはわかる。
 わかるけど。コイツほんま時々、引くほどめんどくさがりを発揮するよな。
「ちんこのデカいデカくないで勝負すんなや」
「なんならバレー上手い下手よりも直球でダメージくらわせられてええやん」
「はぁ〜〜……。ちゅーか、なんでお前はそれをすぐ俺に言わんかったん。俺もどっかにおったやんか」
「言ったらこっちが止めるのも聞かんで、ブチギレて殴りかかるやろ。そんな奴にその場で言えるかい」
「いきなり殴ったりなんぞせんわッ!!一応、歯ぁ食いしばれって断り入れるし!!」
「結局、殴りかかるんやないかい、……うわっ」
「ほれ! よお拭いたったで!」
 最後にガシガシガシとやや八つ当たりみたいに強めに手を動かして、タオルドライを仕上げてから、使ったタオルを治の頭の上にひっかける。すぐにタオルを取った治は満足そうに「ありがとお」て振り返るから、つい俺も「まあ、ええけど」なんてまんざらでもない反応をしてしまう。
 それがちょっと悔しくて、俺は机に置いてた漫画雑誌をもう一度手にとると、さっさと二段ベッドの上に梯子で登った。
 ベッドに転がって、雑誌をまた開く。折れ目がついたグラビア写真が勝手に開いて、それを見たら、治がこういうのとか、なんならもっとドギツイやつとか見てオナニーしたことがないって事実がどうしたって頭にチラついて離れなくなる。チラついたまま、適当に読みかけだった連載のページを開いてめくってはみたものの、内容はまったく頭に入ってこなかった。
 毎週ちょっとだけお色気が入って、ときどきドキッとするスケベなシーンがあるラブコメ。今週は特に攻めてる際どいシーンがあって、鼻の穴広げて読むはずが、ほんまになんも入ってこない。
 そうこうしてたら治が「電気、消すで」と、こっちの了承とか返事とかまるで聞かず、常夜灯にした。
 いつもなら「まだいいともすんとも言うとらんやろがいッ!!」と、がなるところだったけど、この日の夜だけは、そんなことはもうどうでもよかった。

(知らんかった。治、まだ出したことないんや。ちんこ擦って、イったことがないんや……

 掛け布団の中、俺の手は、寝巻きにしてるジャージのズボンの中にしれっと移動する。
 下着の中にまで突っ込んで、そっと自分の竿を握ったら、思うより熱さがこもってた。輪っかを作って、ゆっくり包み込んでみると、それだけで今度は硬さも出てくる。
 俺は〝いつものとおり〟手を上下させて、筋のところとか、カリのところであえて摩擦させるとあっという間に竿がグンっと反った。

 さっき俺は、治にウソをついた。

 本当は、俺はとっくに精通してる。
 ちんこを擦って、気持ちくなって、精液を出したことがある。それも何度も。こうして勃起させて、自分の手でシコって、オカズを思い浮かべながら。

『ん、……あっ、やめっ!』
『あ、っあぁっ、待っ、!ぁ、あっ!』
『あかん、っ、こわい、ッあつむっ、なんか出るっ!』

 思春期真っ盛りの俺の想像力は、AVもびっくりのご都合が爆発した煩悩でブーストがかかる。
 射精する気持ちよさを、まだ知らない治。
 その治も、そのうち自分のちんこ擦って、射精する。男なら、当たり前だ。
 もし今日あの雑魚どもが無理やりにでも治の股間を触ったり、無理やり脱がしてちんこ触ってイかせて、精通してたかもしれないと思うと、やっぱりしばらくバレーできないくらいボコボコにしたろかと殺意が沸くけど、同時におそろしく興奮もして、俺はいま気持ちがぐちゃぐちゃになってる。

 あんな雑魚共に、教えられてたまるか。
 許さない。そんなことになるくらいなら、俺がやる。
 俺が、治を精通させる。
 一度も出したことがないっていう、片割れ。
 はじめてイくとき、人の手でされたらどんなふうになってまうんやろ。
 まあほら、双子やしノーカンや。小さい頃は、お互いのモンくらい触りっこしてたもんな?なんて言いくるめて。
 濡れた髪の毛を拭いてやるときみたいに、やさしく丁寧に、後ろから抱きしめて自分のモンを擦るときみたいに、治のモンをぐじゅぐじゅと抜いてやったら、どんなふうになるんやろか。

 実際は、俺に触られるなんてキショくて、治のモンはまるで勃たないだろうなとか。そういう冷静な自分ももちろんいて。
 いた上で、妄想する。
 俺にシコられて、はじめてイってしまう可哀想な治のこと。
 治もあの気持ちよさにびっくりして。
 生きてきてまるで知らなかった快感に、ちょっとの怖さを覚えて。
 ぐしゃぐしゃのツラして果てた余韻に浸ってる姿を思い浮かべる。
 部室で誰かが兄ちゃんのをパクってきたからって皆で見て回したエロ本とか、誰かが見つけて回してきたエロサイトのお試し視聴とか、もうそんなん話にならないくらい興奮した。

 ごめんな治。ウソついて。
 俺、これまでもお前でがっつり抜いとんねん。

『つむ、っや、っこわい!』
『なんか、出るっ、あっ、ァッ、ぁっっ!』
『気持ちい、つむ、気持ちいっ!』

 いやいやいや。まずこんなにアンアン鳴かんやろって、そんくらいはわかってます。はい。ご都合主義妄想全開もいいとこ。
 声だって、先に声変わりしきった治の方が、いまちょぴっとだけ低くて落ち着いたもんになってるし。
 この治の声がまた、学年の女子にはえらいウケてるって話をめちゃくちゃいろんな所で聞く。俺のクラスでもよく聞くし、三年の女子の先輩らもなんか気にしてるって。聞いた話だと、おっとりしっとり聞こえる低めの声が大人っぽくて、女子共が背中をゾクゾクとさせてるらしい。女の思春期もよおわからんな。
 でもそんな女子どもがキャーキャー金切り声あげるくらいの男。その男がもし、俺の手で気持ちよさそうに喘いだら。
 そう考えると簡単にムラムラとするし、事実、何度か勃たせてひとりでこっそり抜いてしまった。

『つむ、出る、っや、なんか出てまうから、ぁっ、ぁああっ───ッ……、〜〜っ‼︎』

(サム……、俺は、もうとっくに抜いとるし。イく気持ちよさも、知っとんねん)

 しかもお前、オカズにされてんねんで。
 抜くとき、俺はときどきこうしてお前のこと考えてんねん。もしお前が、犯されてる女みたいにあんあん言うたらどんな感じやろって勝手に頭ん中で、エロくして、その妄想でシコってる。
 知らんやろ? ほんまキッショいよな。
 キッショいけど、でもそれで興奮するから仕方ないやんか。

…………っ、……
 枕の近くに昨日髪を拭いて置いたままだったタオルを慌てて掴んで、股間に被せてから俺は射精した。
 どくん、どくん、としつこく震える。いつまで出るんやろ。ちょっと溜まってたかもわからん。こういうのって溜めとくとえらい出る。出すことを知らない頃は出さんでよかったくせに、いざ一度でも出すこと覚えた途端、我慢してると出したくてしゃーなくなるの、なんなんやろ。バグやん。
 でも気持ちいいから困る。覚えたのは蜜の味だ。精液が玉からぐわっと竿を走ってせり上がって出ていく、そのたびに、何度も身体を震わせながら、ちょっとでも臭くならないようにタオルで全部包む。匂いでバレたくない。
(あかん、これ、一度流してから洗濯機や……
 今度からティッシュちゃんと用意しとこ、とか一気に頭が冷えていくのもまだ慣れない。あんだけ興奮して、精液出すことしか考えられなかったくせに、出し切ると冷静になるし、この落差との付き合い方がわからなくて、はぁ、と深々とため息が出た。

 こんなこと、お前が寝てるすぐ上でしてる俺がいるって知らずに。
 ちんこシコると気持ちええんやろか、なんて無邪気に聞いてくる、哀れで──かわいい、俺の片割れ。

(いやカワイイってなんやねん。こわ。さっさと彼女作ろ)

 このままじゃあまりに片割れが哀れすぎる。
 そして何より自分の未来が、ここにきていきなりとんでもなく不安になってきた。なんかこれまでより妄想の中の治の乱れようがやばい。確実に何かが酷くなってる。何かがなんなのかは、わからんけど。
 今度、告白されたときは余程喧しい女じゃなければ試しに付き合ってみようかなと思う。
 こういうことさせてもらえるかわからんけど、少なくとも治をオカズにしなくても済むようになる気がする。うん。そうしよ。

 なーんて一部の望みを、まだこのときは持ってた俺ですが。
 そのあとの話を少ししておくと、俺はちゃんと有言実行して彼女を作った。ちょうどその数日後に、わざわざ呼び出してきて告白されて、顔もまあまあ、胸もけっこうあるしとええよって言ってみた。
 こういうの俺はこれまで全部めんどくさっ!て断ってきたもんだから、周りもびっくりしてたし、誰よりも治が見たことないくらい驚いてた。けどまあこっちにも事情がありますし。
 彼女になった女は、思ったより積極的だったし、なんか人目がつかないとこに誘ってきて、キスとか胸を触らせていたり、なんか色々とスケベなことはちょっとしたけど、したのに、いやそれでも充分シコれたけど。でも一番シコれるオカズになってしまった治が、その女に挿げ替わることは結局なかった。それにたまたま告白してきただけの女相手で、そこまで気持ちが向かないもんだから最後までする機会も作れず、最後は俺が連絡とか部活で忙しい分の埋め合わせとかするのがめんどくなって(わかってたけど)別れた。
 ようするに、よくわからん女共よりも治で抜くのがいちばん興奮するらしいってことを確かめるだけになってしまったのだった。こんなはずでは。

(でもいつかは、俺にも治にも彼女ができて……セックスするんよな)

 なのに俺たちは、当たり前に高校だって同じところでバレーをする気でいるけと、これでええんやろか。
 強豪校なんて通える範囲でもいくつかあるし、高校から違う学校に行く双子は珍しくもなんともない。むしろ違うことのが多いんとちゃうかなって思うけど(大体の奴らは学力とかそういうので学校選ぶし)少なくとも俺たちの頭には、別々の学校でバレーすることなんかこれっぽっちも考えてない。
 離れることを、ふたりして端から選択肢に入れてない。
 その事実のヤバさに、もっとはやくおかしいんやないかって気づくべきだったのかもしれない。この先もずっとコイツと一緒なんてきっとありえないし、──もし仮に俺もアイツも望んだってそんなこと、できるわけないのに。
 なんだか漠然と。そしてとてつもなく心配になってきて。
 でも俺は同じくらい、そんなんもうとっくに手遅れなんやないかとも薄っすら思っていた。


リクエスト期間にいただいたリクから書かせていただいたものです。
リクエスト内容はこちらでした!ありがとうございました😊