皆瀬茶太(シキゴウ全)
2025-05-07 16:37:55
3705文字
Public 洋画
 

18/17新刊の進捗がてらサンプルSS

投稿後誤字修正。全部で6100文字程度の7p小話。R18になりきれないR17?微エロ。サンプルは3400文字ぐらい。原作バレあり前提です。

◆テセウスの船を見送る◆ 
※原作8/7
※このSSの前に、特に何かはしないカプっぽくない18/17と8/7のクロスオーバー遭遇漫画あります。

 星の果てまで行かなくても、奇妙な体験は出来るらしい。 
 どういう因果が捻じれたのかは、分からない。事実として俺と同じ顔、同じ声、同じ体つき、ついでに同じ匂いをまとった男と『ばったり出くわした』。
 その後は大きな問題も起きずに、お互いのミッキーと再会して別れた。
 記録としては残せないが、残すとしたらこの程度のもの。
 地下トンネルを、エイトとそこそこの数のムカデと一緒に歩く。無言の背中を眺めながらどれぐらい経ったか、嗅ぎなれた空気になっていった。
 理解しがたいものの、見知った場所に戻って来れたのだ。17や18の場所とは明らかに周囲を覆う氷の量が違う。乾いた岩の下には、今朝確認したばかりのバックパックもある。
 磁気単極子バブルの爆弾入りを見て、安堵の息を吐く日が来るとは思わなかった。
「エイト。お前はどうやって俺の所まで来たんだ? チャットも出来なかったぞ」
 無言で歩いていたエイトに声をかける。俺を肩ごしに凝視して、ゆっくり口を開く。
「理解できないがムカデが連れていってくれた」
 そりゃ、そうか。そのムカデたちも、奥へと移動していく。巣に戻るのかもしれない。
「ん? するとムカデはこの現象を知ってる?」
「さあな」
 そっけない態度に、俺は眉をひそめた。
「本当にあいつらは、俺達じゃないんだな?」
「ああ」
「お前は、セヴンか?」
 これには思わず吹き出した。
「他者が納得する証明の定義はあるのか?……そうだな、17は俺と似ているが違いはあったぞ」
「17?」
 妙に、警戒を解かないエイトに呆れ、俺は適当な岩に座った。
 あの氷の洞窟とは違い、ここは尻が冷たくない。
 視線が平行から変わり、エイトを見上げる。
 お前の方が、今回の状況を受け止められないのはおかしかった。あと二人増えたところで何だ。
 お前と過ごした数日の恐ろしさを、お前は俺で味合わなかったというのか。ナーシャを交えたセックスの快楽は、聞かなくても分かるが。
 ムカデも数えるほどになり、エイトが近寄る。
「もう片方の18と呼ばれた方は知らない。エイトも見ていた通り、地上にいただろ? あいつとは、そういうすり合わせの話はしていない」
「すり合わせ」
「そうだ。分かりやすい違いは、死んだ回数だな。アッチにとって俺たちのナンバーは、とうに通り過ぎている」
 17と俺の似ていた境遇の部分は言う必要はない。俺と17の差異にエイトは関係ない。
「お前が知りたいのは何だ? お前がムカデに殺されたと思っていたように、18はマーシャルを道連れに爆死だと思われていたが」
「マーシャルが爆死?」
 エイトが、バックパックを一瞥した。
「方法までは聞いていないが、アレを使っている様子はない。現にあの世界は、崩壊していない」
「こっちのマーシャルは生きている」
 俺はニヤリと笑ってやった。
「あっちのマーシャルは死んでいた。エイトや18みたいに『実は』なんてものはなく、あの男のパートナーもすぐに死んだと聞いた」
「羨ましい」
「本当に」
 二人で頷いた。
 司令官の死の方が、シックスまでの記憶を持った自分と対面するより大事である。
 どうやら俺がセヴンであると納得したのか、エイトから怯えが消えた。また少し、俺に近づく。
 腕を伸ばせば届く距離。首が痛いな。
「他には? 全ては聞けていないだろうが」
……18の帰る場所は、ドラッカー号?」
 一番聞きたいのはそこか。
「そこは確認していないが……17の様子と二人の会話から想像すると、18は18としてドラッカー号の、つまりメインドームに居るだろう」
 俺が答えると、エイトは俺に腕を延ばした。
 抵抗しないで待っていると、俺を囲うように頭ごと抱きしめてきた。
「羨ましい……
「エイト」
 ぎゅっと、エイトの力がこもる。
「配給が一人分てことだろ⁈ 」
「だろうなっ」
 耳元で叫ぶなと返す代わりに、俺は今日一番の声で同意した。
「これ以上カロリーを消費させるな。腹が減ってるのは俺も、あとナーシャもなんだぞ」
「感謝してるが……もう少しどうにかならないか。ベルトをバイオ・サイクラーに入れるとか」
 同意したい物騒さで、子供のように抱き着いてくる。俺と同じ顔と声でやめろ。
 同じ声帯の猫なで声が、まるで腹の音のようだ。油断すると、俺の腹も鳴りそう。
 こいつが生きていると知っているのは、今のところ俺とナーシャだけ。
 今、俺たちはセヴン一人だけという認識で過ごしている。俺もエイトが死んだと思っていた事と、マーシャルが生きている事が理由だ。
 ムカデと唯一の話し合いが出来る命は、一人分しか担保されない。
 俺はセヴンで、エイトはエイトだが時折セヴンを装う。ナーシャに嘘はつけないので、爆弾の場所を教えた時に、頃合いを見て再会させた。
 日々の何時間か、隠れ場所として選ぶ場所にはムカデがいる。
 気づけばムカデはチャット仲間で、地下トンネルをルームシェア状態で、語学サークル仲間のようになっている。
 なんでこうなった?
 17の世界とは違い、ムカデも別にフランクじゃない。未だ紙一重の関係のままだ。
 もう一度言おう、なんでこうなった。
 だが、それが使い捨てを止めた俺たちの、新たな日常になった。隠すというストレスが溜まりに溜まっていた時に、あいつらとの遭遇だ。
 ついに気が狂ったと思っても、仕方がない。
……お前とナーシャとヤッた日が懐かしい」
 思わずエイトの胸元で呟くと、背後でエイトがニヤリと笑った気配がした。
「昨日じゃないか」
「そうだったな」
 この星で出来ることが増えた今も、俺たちのすることは変わらなかった。
「二人より三人が気持ち良いんだ」
「その二人は、セヴンと俺とでも入ってるな」
「知りたくも開けたくもない扉だったがな」
 俺は正直に告げると、エイトはようやく抱きしめていた手を緩めた。
「やはり俺の思うテセウスの船だったな」
「ん?」
 どういう意味だ、と思わず首を傾げた。
「俺の顔で、そんな仕草を俺にしてどうする」
 あざとい顔はナーシャに一緒にしようと返されたが、心外にもほどがある。
「頬を撫でるな。手袋ごしは少し痛いんだ。それにお前の顔じゃなくて、俺の顔だろ。で?」
 エイトは、俺に触れた方の手から手袋を外してから答えた。こいつの装備は、ほぼ俺と同じだが、ムカデとの相対時にゴーグルだけを失っている。
 テセウスの船ー全ての部品を置き換えた船は元の船と同じかという、同一性に関する哲学的問いかけ。
「俺は、アラン・マニコヴァ説のままだぞエイト。ナタリストは唯一である魂が増えるのが嫌なだけ。俺とお前は違う、お前はテセウスの船Ⅷ」
「でないと自我崩壊でセヴンは狂ってしまう?」
 エイトは目を細め、頬に触れていた指で唇を撫でた。お前こそ、なんで労わりを宿して笑うんだ。
……エイト。俺たちは解離性同一性障害でもなければドッペルゲンガー症候群じゃあない」
 そうだと、エイトは頷いた。
「ドッペルゲンガーとセックスは可能かもしれないが、俺たちの製造先は明白だからな」
「その通りだが、今その話だったか?」
 エイトの手は、そのまま首筋を撫でてから俺の胸元へ手の平を押し当てる。
「その話だろう。つまりな」
 エイトは両膝を折り、俺の膝に手を置いた。
 今度は俺がこいつを見下ろす姿勢になるや、足の間に自らを滑り込ませてくる。
「おい」
 エイトの肩を押すが、エイトの手袋を外した指で俺の下肢を撫でる方が早かった。
「お、まっ」
「ここ最近、俺はセヴンにしかなれなかったろ? 俺がエイトだと呼ぶのはこの星で二人だけだ」
「ムカデは?」
「そこを入れるなら数万になるが、俺を引いた今の総人数百七十五人にしてくれ」
 話の腰を折るなと、ぎゅむっとナニを握られた。
「ぎゃっ」
「色気のない」
「今、色気いらないだろっ」
 あろうことかエイトは俺の股間に顔をうずめた。歪んだ帽子のつばも刺激になるからタチが悪い。
「な、な、な」
 わざとらしく見上げて目線だけを合わせてくるが、つばが視界を遮って全ては見えない。捕食者のようで、背中をゾクリと何かが這い上がった。
 エイトの装備にゴーグルは無いので、もしあれば反射面に、みっともない顔の俺と目が合う。
 エイトは今にも舌を出そうとばかりに口角を上げ、唇の隙間から舌を見せつけてくる。
 お前だって人の事言えないじゃないか。俺のゴーグルに映ってるんじゃないのか?
「ここでなんて……
 昨日、俺にフェラチオをしかける前と同じ顔。
「あいつらがいるところでも勃つのか? 随分と図太くなったじゃないか」
「ちが、そこで喋る、な……っ」
 息が熱く感じる。
「はなし、話の続き、……エイト……

続きは新刊にて。