moto
2025-05-07 12:45:54
768文字
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相変わらず

さまささワンドロワンライお題「シガーキス」


 空になった煙草の箱を握りつぶし、簓の方へ目配せする左馬刻に、俺禁煙してんねん、とひらひら手を振ると、それはもう大きな舌打ちが返ってきた。やれやれとクリームソーダ味の飴玉を口に放り込み「甘くてうま〜」と仕返しを込めた言葉をかけてやる。簓の態度に、左馬刻は一服できないイライラが増幅したようで舌打ちが止まらなくなった。わははとひと笑いして、ポケットを探る。
「ああ、待って待って、ええのがあんねん」
 簓のポケットから出てきた飴の量に、左馬刻がぎょっとしているのがわかる。簓さんのポケットは四次元ポケットやねん。ニコリともせず腕組みしている左馬刻へ、手のひらの上で選んだコーヒー飴をつまみあげる。
「いらねえよ」
「ブラックやけど」
 そういう問題ではないようで、頑なに「いらねえ」と受け取らない。簓には左馬刻が本当に欲しいものはわかっているけれど。
「煙草はわけられへんけど、飴ちゃんやったらわけられるで」
 他の飴をポケットにしまい、改めて左馬刻を見上げると、仏頂面を極めた顔があまりにも怖い。にこにこ顔の男と強面の男の間に走る緊張感は、左馬刻の深い溜息によって破られた。
 大きな手のひらに乗せられた飴は一瞬ぎゅっと強く握りしめられる。飴玉は左馬刻の口に入り、残骸の袋は簓の手に押し付けられた。それ以上舌打ちも文句もなかったので、それなりに口に合わないこともなかったのかもしれない。
 二人で火を分け合ったあの頃。今は二人で飴を舐めている。
 もう、あの時と同じようにできないこともあるけれど、また新たに二人でできることもあるのだ。
 なぜ、甘くない飴を持っているのか?左馬刻は気づくだろうか、なんて、俺もお前も「かわいいやつやなあ」心の声が漏れ出てしまっていたようで、「あ?」と凄まれて、ガリガリと飴玉を噛み砕く音がする。