三毛田
2025-05-07 10:35:41
1078文字
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85 05. いいわけ

85日目
並べたとしても

 大丈夫。それは駄目。
 好き、嫌い。やっぱり好き。
 否定的な言葉と、肯定的な言葉が同時に押し寄せ。
「穹!」
 それらをどう処理していいのかわからなくなり、頭がパンクして、倒れた。
 最後に見えたのは、焦った丹恒の顔。
「あー……
 目が覚めて、見えた景色はようやく最近見慣れた己の部屋。
 心配かけてしまった。きっと、悲しませてしまった。
 今すぐ駆け寄って、大丈夫だと抱きしめたいけれど、体は思うように動かない。
「穹」
「おはよ、丹恒」
「おはよう。時間的には、夜だ」
「どれくらい寝てた?」
「数時間は気絶していたな」
「そっか」
 言い訳のような言葉が浮かんでは、すぐに消えていく。
 それらを伝えたとしても、傷ついた彼の心は癒えない。
「パン粥と、中華粥がある。少しは食べられそうか」
「どっちも少しずつ食べたい」
「持ってくる」
 俺の額と頬を撫でる手は、震えていた。
「あーあ」
 体をゆっくり起こす。とりあえず、目眩はない。
 膝を抱え、うなだれる。丹恒にあんな顔させるつもりはなかったのに。
「まずは白湯を」
「ありがとう」
 戻ってきた彼の手にあるお盆には、ボウルが二つとマグカップが乗っていた。
 そのマグカップを受け取り、ゆっくり飲む。
 じんわりと、体の奥から温まっていく感覚に、ホッと息をつく。
「お前が食事の時間になっても来ないから、みんな心配していた」
「なんて説明したんだ?」
「知恵熱を出して倒れたと」
「ふうん」
「多分、間違ってはいないだろう。倒れた直後のお前の体は、熱を持っていたからな」
「なるほど」
 白湯を飲み終え、お粥を食べようとマグカップを差し出すも、渡されのは体温計。
 渋々体温を測り、計測終了の音が鳴ったので丹恒の手に乗せる。
「平熱。より少々高めか。食べたら寝ろ」
「はーい」
「夜更かしは厳禁だ。お前が寝るまで見張るからな」
「わかりました」
 嬉しい。と口にしたら、変な顔をされてしまいそうで。
 それはそれで傷つくから、黙ってお粥を食べる。
 パン粥は、ミルクと蜂蜜の優しい甘さ。中華粥は、少し前に食べたお粥とは違い味がついている。どちらも美味しくて、ぺろりと平らげてしまった。
「ご馳走様でした」
「ああ。口の中を休めたら、歯磨きして横になれ」
「うん。ありがとう、丹恒」
「礼には及ばない。俺がお前の世話をしたかっただけだ」
「ふーん。へ?」
 新しい白湯を飲みながら彼の言葉を反芻していると、部屋を出ていこうとしているところで。
「た、丹恒?」
「また来る」
「はい!」