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タロ文庫の作品置き場
2025-05-06 23:33:30
5139文字
Public
作品
シェイキンコーラの代償
2020-12-09
「まままま待って!」
「俺が待つ必要あるか?」
「いや、だって、それは
……
ちょっと」
「お前、自分の立場わかってる?」
ティームは自分の立場を承知して奥歯をぐっと噛んで黙った。ウィンは自分の腕の中で大人しくなったティームの肩口に後ろから顎を乗せて楽しそうに笑うと、そのままの体勢で止めていた両手の動きを再開した。
料理をしないウィンの部屋にもそれなりの食器は揃えてある。
コンドミニアムの部屋に造り付けられている棚に入っているそれらに対して、ティームが思い切りコーラをぶち撒けたのはつい先程の話だった。
なかなか来ないエレベーターに対して運動部の意地が出て、ウィンの部屋まで階段の駆け登り競争をおこなった。負けず嫌いのティームは手に何を持っているかすっかり忘れてウィンを負かすことだけを考え、部屋に家主より先にご機嫌で入った後、祝杯をあげるべく袋からコーラを取り出し蓋を捻った。
ウィンの制止は間に合わず、食器の棚に直撃した甘味飲料は床も壁もウィンも盛大に濡らして犯人だけ無傷という一番罪深い結果になった。
食器を全てシンクに運び床と壁を拭いたウィンはティームに対して「洗え」と圧をかけてシャワーに向かったのだ。
そしてシャワーから出てきたウィンに差し出されたのが、エプロンをつけて大量の洗剤で泡だらけになったシンクに腕を突っ込んでいるティームだった。
「それ
……
どうした?」
「エプロン? パームがくれたんだよ。洗い物してると水がびちゃびちゃ飛び跳ねてくるって言ったらエプロン付ければって今日もらったとこだったからさ。ちょうど良かった」
腕を捲った制服の上から付けられているエプロンは何の変哲もない首から下げて腰で紐を結ぶタイプの黒い無地のエプロンだった。緩くリボン結びになっている腰の紐が片方が少し長くなっているあたり、慣れていないティームの不器用さが出ていてウィンは片眉と口端をひょいと持ち上げた。そのぶきっちょリボンがティームのかちゃかちゃと皿を洗う動きに合わせて微かに揺れている。
着ようとしていたTシャツを肩にかけてスウェットの下だけ穿いたウィンが簡易キッチンの入口の壁に寄りかかり、そのティームの様相を上から下へとじっくり眺めた。
学生服にエプロンって、学校帰りに台所に立つ幼妻みたいだな。
事実、ティームは現役の学生であり若いので何もどこも間違っていないのだが、見慣れないアイテムがひとつ追加されるだけでこうも光景が違って見えるのかと。ウィンは自分の胸に湧き上がったムラっ気に唇をひとつ舐めて、Tシャツをベッドに放り投げゆっくりとティームの背後に立った。
料理が得意な恋人を持つ親友はキッチンに立つエプロン姿にムラムラしないのだろうかと頭の隅で考えながら、ウィンは無防備に空いているティームの両側から腰に手を回した。
「なにっ?」
ビクッと大きく揺れたティームにますます悪戯心とロマンがわいて、答える代わりにうなじに唇をつける。察したティームが肘を大きく後ろに引いてウィンの腹めがけて肘打ちをしてくるが、そんな事は想定内のウィンはピッタリと背中に身体をくっつけて手のひらをエプロンの中に這わせる。ついでにティームの膝裏を足でシンク下の戸に押し付ける。これで蹴りも踏んづけも出来ない。
「なんだよ、邪魔すんな」
「いいから続けろよ」
いいわけあるか、と首を捻って睨みあげてくる目元に口を突き出すと避けるように前を向き直り舌打ちをする。手を当てたティームのシャツ越しの胸が素直にバクバクしていて、ウィンは楽しくなってきてしまった。
そのまま先ほどよりも乱雑に皿を洗い始めたティームをしばらく眺めた後、ウィンは胸にくっつけていた手を動かしてネクタイの結び目に指を挿れた。下に引くとしゅるると布擦れの音がして緩めに結ばれていたネクタイは簡単に解ける。完全に引き抜いたネクタイをティームの腹あたりでくるりと丸めてスラックスのポケットに突っ込んだ。
「明日の朝また結んでやるから」
「自分で出来るし。てか、何してんだよ」
「俺のことは気にせず、お前は皿洗いに集中しろ」
「先輩がどけばいくらでも集中して出来る!」
「じゃあどうぞごゆっくり洗ってくれ」
「っ! おい!」
こんな楽しいこと途中でやめられるか。
ネクタイを引き抜いたシャツは元々大きく開いていて、ウィンが手探りで指を這い上げていくとすぐに肌との境目に到達した。肌の下のボタンをぷつりと外していく。ティームは身を捩って抵抗するが泡だらけの手を振り回す考えはないのか、攻撃力はウィンの制圧力より下だ。ウィンは手際良く全てのボタンを外すとエプロンの中で左右に開き内側から肩を露出させる。
「ちょ
……
っと」
エプロンの首紐を残し肩甲骨の下あたりまで下げられた制服のシャツは、シンクに向かって曲げられた肘で引っかかる。
なんてこった。
視覚の誘惑が、ウィンの予想より大きい。
自分でやっておいてなんだが、ティームの白い肌と黒いエプロンだけの色彩バランスが眩しい。少し脱げかけのシャツの白さも自分でやっておいてなんだが、いかがわしさが凄い。
露わになった肌の肩口を甘噛みしながら、ウィンは泡だらけのティームの手を取って袖を引き抜いた。どうせ洗うんだ、泡がつこうが関係ない。
「先輩、コーラ被って頭おかしくなった?」
コーラじゃない。お前がエプロンなんか付けるからだろう。
それを言おうものなら光の速さで脱ぎ捨て燃やされるだろうから、ウィンは黙って脱がし終えたシャツを丸めて部屋の方に放った。
こうして上半身裸体にエプロンをつけたティーム出来上がったわけだが、惜しむらくは離れて全体像が見られないことである。呆れて抵抗を弱めたのか反撃のチャンスを窺っているのか、今は大人しいが今夜使い物にならなくなると困る大事なものを守るためにもウィンはティームから身体を離すことが出来なかった。
裸の胸にエプロンがかかっている状態を後ろ斜め上から眺めて、ティームの腕の動きでたまに乳首が見え隠れする様を見るだけでも充分アホほど滾るので今日のところは全体像を見ることは諦めた。
そしてティームが早々に終わらせようと水を出し皿を濯ぎ始めると、ウィンは徐にティームのベルトに手をかけた。
そして冒頭のやりとりに戻る。
「ほぼペットボトル一本分のコーラをぶちまけて、床も壁もベタベタにしたのは誰だ?」
「おれです」
「それを時間が経つと大惨事になるから迅速かつ的確に一人で対処したのは誰だ?」
「ウィン先輩です」
「お前が今すべきことは?」
「コーラでべとついてる食器を洗うこと」
「進捗は?」
「あと濯ぐだけ」
「じゃあやれよ」
「うぅぅ」
かちゃかちゃとティームが慌てながら皿を水に晒す音とウィンがベルトを緩めてホックを外しチャックを下げる音が重なった。ティームは呻きながら手を動かし続ける。早く終わらせてこの状況を打破したいのだろう。中断して抵抗するという考えが抜け落ちていて可愛い。
ウィンはティームのスラックスを脱がすと露わになった太ももを指先で撫でる。ティームの歯軋りが聞こえて、思わず笑ってしまった。
そのまま下着を脱がす方が先か胸を揉む方が先か考えた後、片手ずつ両方こなせばいいことに気づきウィンは実行した。
エプロンの上から蠢いてる手のモゾモゾした動きを見るだけで視覚の煽りを喰らい、触覚は直にティームを楽しむ。
親指をトランクスのゴムに引っ掛けたところで、流石のティームも水に濡れた手でエプロンの上からウィンの手を押さえた。だが押さえたのは胸を揉む方の手で。ウィンはゆっくりとトランクスもティームの足元に落としながら、真っ赤に染まっている間近にある耳の後ろを凝視した。
「胸、くすぐったい」
「お前どうした?」
流石に、粗相をしたというお仕置きにしてはティームが受け入れすぎている。今やもうすっかり裸にエプロンのみ着用しているという出で立ちは、流石にティームの本来の性分が許すはずがない。
ウィンが少し冷静さを取り戻し訝しげに声をかけると、俯いているうなじも赤く染めてティームがボソリとつぶやいた。
「マナウが、男のロマンだって」
「え?」
「おれ、も
……
ちょっと分かるし。その
……
変だけど、外じゃ絶対に絶対に見れなくて、自分だけに見せてくれる、って、すごく特別だし」
「は?」
ティームの赤い首が少し傾いてウィンに伏せられた目元が晒される。少し潤んでいるようにも見えて、そのままぽってりした唇に視線を下げるとキュッと結ばれたそれがゆっくり開いていった。
「ウィン先輩もこういうの、好きなら
……
おれは、見せてもいいよ」
「ティ
……
ム?」
低い声がボソボソと呟く声と言葉と、ティームと自分を取り巻く全てのシチュエーションに対して、ウィンの脳が盛大にブレて思考も身体も停止した。ボンッと音がするくらい顔と頭皮が熱くなり、今すぐティームをベッドに放り投げたい衝動にウィンの指が動く。
が、機動力はティームの方が上だった。
「なんて言うとでも思ったか!」
カッとジト目を大きく開いて、頭を思い切り後ろへのけぞらせた。
油断しかしていなかったウィンはモロに額にティームの硬い後頭部をめり込まされて、望んでいない形で一瞬天国を見ることになった。
「おぉおおおいぃいい!?」
あまりのことに額を両手で抑えてしゃがみ込むウィンに、ティームは濡れた手をそのままに床に放られた制服とトランクスをかき集めてギュッと抱き締めた。
「先輩のクレイジー変態ヤロー! おれのゴツい裸エプロンが楽しいわけないだろ!」
「お前ぇ、石頭すぎる
……
」
「うるさいどすけべ金髪」
おれ、シャワー浴びてくる! と床と友達になっているウィンを置いてドスドスと大股でバスルームへ逃げていくティームに、暫くして復活したウィンがふらりと立ち上がって首を横に振った。
痛む額を指で擦りながら横目でシンクを見ると一応全ての食器が水切りカゴに山盛りに重ねられている。出しっぱなしになっている蛇口レバーを元に戻して一息ついた。
そのままティームが消えたバスルームの扉をコツコツと叩く。まだシャワーの音が聞こえてこないのでウィンは普通の声量で、普通のことのように喋りかけた。
「ティーム、お前は一つ誤解している。お前だから楽しいんだ。お前の身体だからいいんだ。他の男の裸エプロンなんてこれっぽっちも興味ない」
まぁ千歩譲ってパームのだったら、ディーンの反応が気になるくらいの興味はある。だがそれは自分主体では決してない。
白い綺麗な背くびれと腰の窪みに引っ掛かるように不器用なリボン結びの黒い紐が垂れ下がり、その紐が揺れる向こうに薄い割にプリッとした小ぶりの白い尻があって、そのまま長い足が素のまま晒されているなんて。それも前面は大事なところが隠れていて背面とのギャップにじりつく。
凶悪すぎて、発案者に特許を与えたいくらいだ。裸エプロン御殿を建ててほしい。
「まぁ、お前が楽しくないなら意味ないからもうしない。悪かった。バスタオルは棚のものを使えよ。着替えはベッドに置いとくからな」
「ウィン先輩」
それでもティームに無理強いすることでもないし、そういうロマンについては実際に目の前に出されたらとても刺激的で楽しいことではあったが、無くてもティームとなら何でも良いというのがウィンの基本スタイルだった。
楽しかった。もう充分満足した。良い思い出ができた。
ウィンがティームの為に替えのパンツとTシャツ、ハーフパンツを用意しようとバスルームの扉から身体を離した時に、天岩戸よろしく閉じこもっていたティームがドアの隙間から顔を覗かせた。
いつもの揶揄った後のぶすくれたジト目と膨れた頬は真っ赤になっていて、気まずそうにモゴモゴと口を動かした後に意を決したように後ろ向きに身体を捻った。
「後ろの紐が取れなくてエプロンが脱げない」
大方乱暴に紐を引っ張ってリボン結びが上手く解けずに片結びになってしまったのだろう。そのまま引っ張り続けてた結果、硬く結ばれて解けなくなっていた。
隙間から見せられる丸い塊に硬く結ばれた黒い紐。と、白くてまあるい尻。
前言撤回失礼します。もう少し満たさせていただきます。
ウィンは自分でも部活以上のモチベーションが身の内に巡るのを感じて、慌てふためきながら何か言っているティームに対して何か楽しく言い返しながら扉の隙間に身体を滑り込ませた。
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