かん
2025-05-06 15:14:58
10807文字
Public
 

想いを寄せてるクラスメイトはお人好しが過ぎる

村井優さん

7:40


朝がいちばん過ごしやすい春。


まだ人通りの少ない校門をくぐる。


そしてそのまま裏庭へ。



〇〇:おはよー



返事はないけど全然苦じゃない。


リュックからいつものを取り出して準備する。



まずは水槽。



少し濁った水槽で泳ぐ金魚やメダカにご飯をあげる

そして水槽の掃除、水草を入れ替える。



それを終えると、次はインコ。


姿が見えないってことは、まだ寝てるのか?



〇〇:おはよー


お皿にご飯を盛る。


すると奥から姿を見せてご飯を突くインコ。


唯一返事ができるんだから、ちょっとくらい喋ってくれてもいいんじゃないか。


インコの世話は意外と大変、季節によって飼育場所を変えてる。


ご飯も栄養バランスを考えたものになってる。


温度調整もこまめにチェックしてる。




ちょっとくらい、労わってくれてもいいんじゃないか。




なんて文句を垂れながらうさぎ小屋へ。



〇〇:おはよー


挨拶しながらご飯を入れると、奥から出てくる
二匹のふわふわ。


むしゃむしゃ頬張る姿は朝から癒される。


今すぐにでも触りたいが、要注意。


うさぎは食事中触ると嫌われる、基本的にうさぎから来たときのみ触れる。


触る場所も、耳や顔でなく背中やおでこがいい。



〇〇:あ


食べてる二匹の後ろから、ゆっくりこちらに来るうさぎ。


足に包帯がしてあり動きが遅い。


この前うさぎ小屋と扉に挟まって怪我をしてしまった。


そのため毎日包帯を巻き直す。


〇〇:ゆーちゃん


一匹一匹大切な命が宿っているので、こういうミスはないようにしなければならない。




飼育委員会は、朝から忙しい。





*********************






「お前、大変じゃないの?」


〇〇:ん?なにが?


「飼育委員、朝から動き回ってるけど」


〇〇:あー


「お前ひとりでやってるけど、大丈夫?」


体育の休憩中、心配してくれる数少ない友人。


「飼育委員やらなくていいから楽だって」


確かに、事実上自分ひとりで全てのことをやっている。

時間も人手も足りないのが現状。


「ひとりで全部、流石にキツいだろ」


〇〇:ううん、大丈夫


複数人でやるとみんなのコンディションがわかりにくいしひとりだとサボる心配もない。


それに




〇〇:好きだから、全然余裕


大抵の苦労は耐えられる。



ならいいけど」


〇〇:心配してくれてありがとう


学校生活においてはやはり、友達の存在は貴重。




「てか、他にないの?」


〇〇:なにが?


「好きなもの、こと」









「優!シュート!」



優:




パシュッ





「ナイスー!」


「イェーイ!」


優:えへへイェイ!







ふと目に映るその姿。

他の誰よりも輝いて見える。





でもこの好きは、少し苦い。



村井さん?」


〇〇:え


「ふーん笑、なるほどね」


〇〇:いや、何も言ってないけど


「いやー、よかったよかった」


〇〇:なにが?


「ちゃんと青春?してて」


〇〇:なにそれ


まだ高校生だから。

それにみんなとの毎日も、十分青春です。



「え、どこが好きなの?」


〇〇:.言いません


「いいから笑、一個だけっ!」




村井優さん。


大きくて綺麗な瞳。

穏やかで暖かい声色。

心が美しく優しい人柄。



僕が片想いしている相手。




「え、いつから?」


〇〇:言わない


「告白するの?」


〇〇:しないよ


「なんで?」


〇〇:僕なんかが関わってはダメ


「いやいや、クラスメイトだから」



村井さんはクラスでもみんなから人気。

僕が関わっても彼女が周りに笑われるだけ。


しかも村井さんはとっても綺麗な心を持ってる。


もし自分が話しかけても優しく返してくれる。

自分の意思とは関係なく。


あまり彼女の負担になりたくない。


それに、僕にはみんながいる。


別に悲しくも寂しくもない。




「いや、お前結構女子から



〇〇:もうすぐ交代だから、行こ


「おーい、話を


〇〇:この話は終わりだから




はぁ、勿体ない」



僕に村井さんは勿体ないくらい。

だから、遠くから見てる。それで十分。



自分にそう言い聞かせて、心に仕舞った。






村井:


美青:優?どうした?


村井:ううんっ行こ!




**********************





12:40



飼育委員会の昼は、時間に追われる。


チャイムが鳴った瞬間弁当をかき込み、急いで
裏庭へ。



〇〇:こんにちは



相変わらず返事はない。


だが今は気にしてる場合じゃない。


長いとは言えない昼休みにも仕事は詰まってる。



〇〇:


うさぎ小屋を掃除してるとき、ふと思った。



村井さんについて。


なんか最近よく目が合う。




例えば朝。


必ず目を見て挨拶してくれる。

しかも苗字と一緒に。



当然か。



例えば授業中。


自分が当てられたとき村井さんも必ずこちらを見てくれる。

正解したら拍手もしてくれる。




他の子にもやってる。




いや、この前日直が一緒になった。



一緒に板書を消した


教材も協力して運んだ



掃除も2人きりで




日直だからか。



ダメだ、どうこじつけても脈がない。


あんだけ無理とか言っといて、結局心のどこかで期待してしまう自分がいる。


やはり人間の弱さ、脆さだ。




〇〇:どうしたらいいと思う



こういう悩みがあったとき、決まっていつも
みんなに聞いてもらう。


もちろん返事はない。


でもそれでいい、答えが欲しいわけじゃない。



答えがあったら、誰かがとっくに解いてる。


答えがないから、それに夢中で。


そのことで頭がいっぱいになる。


それが恋。




〇〇:どうしたらいい



〇〇:はっきり言うべき?



「どうしたの?」



うわいよいよ幻聴が聞こえる。



〇〇:好きな人がいて


「す、好きな人?!そ、そうなんだ


〇〇:気持ち伝えた方がいい?


「え、えぇうーん


〇〇:まずどうやって仲良くなろ


「うーん私はいっぱい名前呼んでみたり
おでかけに誘ってみたりかなぁ




〇〇:




待て、幻聴じゃない


え、じゃあ誰が?



慌てて後ろを振り返る。






村井:.こんにちは







自分とほぼ同じ目線に村井さんが座っていた。



〇〇:えっ


村井:こんにちは




〇〇:こんにちは


なんでここに


〇〇:どうかした?


村井:あのね、えーっとそのぉ



ちょっと待って。


今の独り言聞かれてた?


やばいやばいやばい。



〇〇:いやっ村井さん、これは違うっあの







村井:動物さん



〇〇:え?



村井:動物さんと仲良くなりたくて




〇〇:あー



顔から火が出そうなくらい恥ずかしい。




村井:うさぎさん


〇〇:あ、うさぎ小屋


村井:入ってもいい?


〇〇:どうぞ



扉を開けると恐る恐る入って行く村井さん。


やっぱりうさぎみたいだな



村井:うさぎさんこんにちは


奥で休んでるうさぎに話しかける。




村井:うさぎさん元気ですか


全く動かないうさぎ。



村井:


〇〇:ご飯あげたら、こっち来るかも


村井:え


試しににんじんスティックを手渡す。



〇〇:ゆっくり近づけてみて



村井:えこう



ゆっくりスティックをうさぎの方へ。



〇〇:そう、ゆっくり


村井:


〇〇:あとちょっと


村井:


〇〇:いける




もう少しでうさぎが食べる





村井:や、やっぱり怖い



あと少しのところで手を引っ込んでしまった。



〇〇:あごめん、だよね怖いよね


無理させてしまった罪悪感に駆られる。 

確かに、調子に乗り過ぎ




村井:●●くんも一緒に




〇〇:ん?


村井:●●くんと一緒ならいけるかも



〇〇:え、いやでも



村井:お願いっうさぎさんと仲良くなりたいの


大きな瞳が揺れている。




〇〇:わかった


その瞳からは逃れられなかった。



〇〇:じゃあ


村井:はいっ



小さなスティックを2人で持つ。



〇〇:あ、ごめん


しかしある意味当然、手が重なってしまう。



〇〇:やっぱりやめ


村井:大丈夫持って


村井さんの細くてしなやかな手に、ぎゅっと握られる。



〇〇:うん


体が熱い、顔も近い。



村井:ゆっくりゆっくり


長い睫毛と艶やかな髪。



村井:うさぎさん


透き通った声。



村井:あ



〇〇:お




村井:食べたっ!〇〇くん食べたよ!






一際輝いてる笑顔。



ひとつひとつが色濃く脳に刻まれる。





村井:えへへうさぎさん



うさぎにずっと何かを喋ってる村井さん。


好き同士の共演、尊い


てか村井さんが可愛い過ぎてにやけが治らない。



村井:あ終わっちゃった


うさぎが完食した模様。



〇〇:あ、もうそろそろ授業始まるから



村井:そっかぁうさぎさんバイバイ



律儀に挨拶し、名残惜しそうに小屋を出る。




村井:私のこと、覚えてくれるかなぁ



〇〇:懐いてたし、覚えてると思う



村井:ほんとっ!?うふふやった





本当は





本当は、"毎日来てくれたら覚える"



なんて少し意地悪なことも言えた。



でも彼女の綺麗な心の前でそんなこと言えない。


欲張ってはならないから。




〇〇:村井さん、手



村井:手?



〇〇:手、ちゃんと洗いましょ



村井:あはいっ!




2人で手洗い場へ。



村井:かわいかったうさぎさん



〇〇:ふふふよかったです



村井:ちなみにみんなのお名前って



〇〇:


まずい。



村井:お名前は?



〇〇:



村井:もしかして



〇〇:うっ



村井:まだ決まってない






〇〇:そうなんですよ



すまないゆーちゃん、勘違いを防ぐためなんだ。



村井:じゃあ、ぴょんちゃん!



〇〇:ぴょんちゃん?



村井:ぴょんちゃん!



なかなかそのままだな


まぁ村井さんがつけたなら文句ないけど。




キーンコーンカーンコーン




〇〇:やばい



予鈴が鳴った。



村井:大変遅れちゃう


〇〇:村井さん、走ろう!




村井:〇〇くん!手!



〇〇:手?



村井:手!


〇〇:いや、手洗った




自分の利き手をぎゅっと握られる。



〇〇:え



村井:い、行こ!





そしてそのまま校内を走る。



教室も先生も走り抜かして教室へ進む。







ふと隣を向いた。



村井さんの顔が赤くなっていたのは気のせいだろうか。





いいの?村井さんは?




噂されるよ?いいの?


僕とそういう噂が出てどう思うの?



 

何もわからない、会話できるのに。




どちらかにせよ、そのことで一日頭いっぱいに。




全く寝付けないくらい


ずっと心臓がバクバクしていた。






**********************







10:27


だんだん気温が上がってきた通学路を走る。






思いっきり寝坊した。


目が覚めたら、朝のうさぎ番組がエンディングに差し掛かってた。


そこで全てを理解し7分で支度。


歯を磨きながら服を着替え、髪はボサボサご飯も食べずに家を飛び出し今に至る。


自分のことは後でいい、命がかかってるんだ。


みんなのご飯が環境がゆーちゃんの怪我が



〇〇:ごめんなさいっ


何故か警備員さんに謝りながら校門をくぐる。


そして職員室よりも先に裏庭へ。



真っ先にうさぎ小屋行って、その後インコの温度調整確認してそれから


頭で必死に考える。


ひとりだから全部同士にはできない



「えーっとうーんあのぉ



〇〇:えっ


うさぎ小屋に誰かいる。



「ごめんなさいご飯はなくてどうしよう



〇〇:え!?




村井:あっ●●くん







〇〇:村井さんっ!?


村井:あおはよう!


〇〇:なんで



村井:おはよう!


〇〇:おはよう



今、挨拶がこんにちはにするか迷う時間。



〇〇:授業は?



村井:今休み時間で朝●●くんが来てなかったから心配で大丈夫?


〇〇:ちょっと寝坊しちゃって


理由は言えない。



村井:やっぱりひとりは大変だよね


〇〇:いやいや、全然大丈夫


村井:私もお手伝いさせて?


〇〇:そんな申し訳ないよだって



村井:





〇〇:じゃあ、お願いします


村井:うんっ!


自分のことをしっかり見て寄り添ってくれる彼女の優しさに、心が和らぐ。



〇〇:じゃあ、インコのご飯


村井:はいっ!行ってきます!



〇〇:あ!


急いでうさぎ小屋へ。



〇〇:ごめんね


空のお皿にご飯を盛る。



〇〇:あゆーちゃん


奥からゆっくり出てくる。



〇〇:待ってたよねごめん


手早く包帯を巻き直す。



〇〇:ちょっと我慢してね




〇〇:偉い



〇〇:っしできた






村井:●●くんっ!インコさんにご飯




〇〇:ゆーちゃんお疲れ様




村井:……へ?



〇〇:ご飯食べて、また来るから



村井:あのぉ



〇〇:あ、村井さんお疲れ様でした



村井:えへへ


どこかにやけている村井さん。

なんか頬が赤い?







〇〇:ん?



村井:ゆーちゃん?





〇〇:あ



もしかして聞こえてた?







〇〇:いや違います!あ違います!



村井:あのぉ



〇〇:ほんとにたまたまでっその、村井さんとは全然関係なくて




村井:あの!





〇〇:.



死んだ、嫌われた。


村井さんに嫌われる=学校の嫌われ者。



これはますますみんなだけになりそう


明日からなんて言われるか





村井:私も下の名前でいい?









〇〇:ん?





村井:〇〇くんって呼んでもいい?




〇〇:あのちょっと勘違いしてる




村井:ダメかな?








〇〇:いいの?






村井:〇〇くんって呼びたいな






〇〇:.お願い、します





村井:うんっ!〇〇くん!






淡く揺れる綺麗な瞳だった。


映ったもの全部、美しくするような。




〇〇:あ、ありがとう




村井:もう一回呼んで?



〇〇:え?



村井:名前、苗字じゃなくて




〇〇:優さん







優:ありがと






赤くなった頬を隠す彼女を見て、想った。




自分以外に、見せたくないって。






**********************




あの日から毎日、村井さんは裏庭に来てくれるようになった。


飼育委員の仕事も2人ですることが増えて負担が減少。

さらに村井さん効果で、昼休みに遊びに来る人が格段に増えた。


村井さんの人気をひしひしと感じる日々。



そして何より、一緒に過ごす時間。



朝も昼休みも放課後も、最近ずっと一緒。

下の名前で呼び距離も縮まった。


異性としてますます意識する日々。




「最近どうなの?」


〇〇:ん?


「ほら、あっち」



向こうで友達と笑顔で話す村井さん。



〇〇:あー


「ずっと一緒にいない?」


〇〇:ずっとではない


「結構噂になってるけど」


〇〇:


「付き合ってんの?」


〇〇:付き合ってない



「好きなの?」


〇〇:



「聞くまでもないか



「え、じゃあ告白すんの?」


〇〇:考えてない


「なんで?」



〇〇:


「ビビってる笑?」


〇〇:うるさい


「いや大丈夫でしょ



〇〇:そんな無責任に



「好きでもない奴の仕事手伝いたいって思う?」


〇〇:いや


「最近一緒に学校行って、一緒に帰ってる?脈アリでしかないだろ」



〇〇:



「友達として好きなの?」



〇〇:違う


「じゃあいけよ」


〇〇:でも



「大丈夫、大丈夫だから」


「気持ち伝わる、絶対」



〇〇:うん



「明日、ちゃんと結果報告な?」


〇〇:痛い痛い



背中をばしばし叩かれた。



「じゃあ、また明日!」





〇〇:ありがと笑




**********************




〇〇:終わった


優:終わったー!



18:10


飼育委員会の仕事も遂に終了。


ひとつひとつ異常がないかチェックして事務員さんに引き継ぐ。


そして鍵を警備員さんに預けて終了。



〇〇:遅くまでありがとう


優:ううんっ楽しかった!


疲弊した時に見る彼女の笑顔は、一層眩しい。



〇〇:じゃあ、帰ろっか


優:



曖昧な距離感のまま2人で校門をくぐる。




優:〇〇くん



〇〇:ん?



優:ん


黙って差し出される手。



〇〇:手?



優:うん



〇〇:.うん



優:わかってるでしょ



〇〇:はい



その手をぎゅっと繋ぐ。


優:



口角が下がって唇を尖らせている。

ちょっと不満なんだ



〇〇:どうしたの?


優:.たまには〇〇くんから繋いでくれてもいいのに


〇〇:なるほど



一緒に帰るようになってから、こうして手を繋ぐときがある。


でも毎回向こうから。



もちろん、自分から言えたらすごくいい。


でもまだ本当の気持ちがわからない。


それにちょっと拗ねてる好きな人。


それが可愛いくて、好きで、つい。


そしてこう不満そうに言ってくるところまで
セットで。




〇〇:ごめん、次はこっちから言うようにする


優:ほんと?


〇〇:ほんと


優:仲直り


〇〇:はい


お互いの空いてる小指を、ぴったり絡める。

これも、お決まりの流れ。

喧嘩した覚えは全くないです。


優:もうしませんか?


〇〇:もうしません


優:はい、わかりました!


あっという間に離してくれるのも村井ワールド。


掴みどころが意外とない。


彼女は満足そうに繋いだ手をぶんぶん振ってる。




〇〇:ふふっどう?みんなと仲良くなれた?


優:うさぎさんとインコさんとは仲良くなれた!


〇〇:そっか笑金魚は?


優:うーん金魚さんはまだかなぁ


〇〇:仲良くなれるといいね


優:うんっ!頑張る!


村井さんと一緒に過ごすことで、自分にも笑顔が
増えた気がする。


彼女が持つ雰囲気なのか


一緒に過ごせる喜びなのか




優:でも


〇〇:ん?




優:〇〇くんは?





優:〇〇くんは、私と仲良くなれた?




〇〇:僕はなれたと思う


優:そっか


手で口を押さえて顔を隠す。

でも真っ赤な耳は隠せてないのが愛らしい。


〇〇:優さんは?


優:




〇〇:僕と仲良くなれた?


優:なれた



橙と紫が混じり合った夕暮れの空。


澄んだ空気と静かな街並み。





隣で笑う好きな人。



僕ら以外、誰もいないように感じる。



今しかない。



〇〇:村井優さん



優:ん?







〇〇:あなたのことが








優:ねこさん


〇〇:ん?




優:ねこさんが泣いてる


〇〇:ねこさん?え!?


突然走り出す。




〇〇:ちょっと待って!ちょっと


必死について行くと





『ニャーニャー


ダンボールに入った真っ白な子猫が。


優:ねこさん大変


〇〇:捨て猫?


優:〇〇くんこの子どうしよう


あからさまにしょぼーんとしてしまった。

いや、こっちの方が落ち込んでます。




優:怪我してない?大丈夫


ずっと猫に話しかける彼女。


そうだ。

ちゃんといろんな場所に目を配る。

困ってたら必ず、手を差し伸べる。

自分よりも他。


そういう優しさを持ってるから


こんなに尊敬してて


好きなんだ。




〇〇:とりあえず、僕の家に連れて帰るよ


優:え、でも


〇〇:この時間から空いてる動物病院は少ない、
一旦家で応急処置する


優:わかった


優:わ、私も行く


〇〇:どこに?


優:〇〇くんのお家


〇〇:


優:


〇〇:いやいやいやいや待って


家に来る?今から

無理だ。


優:お願い私も


〇〇:いや、僕ひとりでだ、大丈夫


優:ねこさん見つけたの私だから


〇〇:だとしてもさすがに家は


優:心配だから


〇〇:気持ちはわかるけど





優:〇〇くんっお願い



優:お願い








幸い家は散らかってない。

親もいない。



〇〇:わかった


彼女のその、真剣な眼を見て


NOとは言えなかった。











優:ねこさーん、こっちですよー





〇〇:



優:ねこさーん、おいしいですかー?




〇〇:




20:18



飼育委員会は思ったよりも忙しい。



さっき拾った保護猫、幸運にも怪我がない。


とりあえずご飯を与え、もぐもぐ食べた。

そして風呂で体を洗い、ダニを取る。


櫛で丁寧に毛繕いして綺麗になった。


なったはいいが



優:お名前は?なんですか?


村井さんが猫に夢中。


いや、ここ僕の家ですよ。

猫が心配なのはわかります。

でも



もっと僕の相手してくれてもいいんじゃない?



優:〇〇くん


〇〇:


優:〇〇くん!


〇〇:あなに?


優:お名前、どうしよう


〇〇:泥棒猫


優:え?


〇〇:あいや、決めていいよ


優:うーんじゃあ、ニャンちゃん!


〇〇:ニャンちゃん?


優:ニャンちゃん


相変わらず、そのまま。




〇〇:時間大丈夫?親御さんに連絡した?


優:大丈夫、〇〇くんとねこさんのお世話するって言ったよ


〇〇:そっか


優:〇〇くんの親御さんは




〇〇:いない


優:え?


〇〇:母親が物心つく前に死んで、父親は海外で仕事してる


優:


〇〇:でも全然大丈夫、生活できてるから


優:〇〇くん


〇〇:小さい頃から1人だったし、友達も少なかったから余裕


優:


だから、動物が好きだった。


みんながいたから、平気だった。


みんなと触れ合い対話することで


優しさや温かさ、命の尊さを感じた。




〇〇:ごめん、こんな暗い話してそろそろ




優:ぎゅってしてもいい?




〇〇:


優:いい?


再び揺れる綺麗な瞳。





〇〇:.ダメって言ったら?



優:.無理矢理ぎゅーするから


〇〇:そっか




彼女の腕が自分の背中に回る。





優:


〇〇:いい匂い


優:ちょっとは、恥ずかしいからぁ


〇〇:落ち着く


優:私はいるよ?


〇〇:


優:私は〇〇くんといる


〇〇:ありがと


優:〇〇くんのこと、好きです


〇〇:


優:ちゃんと目を見て喋ってくれるところとかぁ


優:動物さんに優しく声かけてるところとかぁ


優:下の名前で呼んでくれるとこ


優:〇〇くんのお目目がキラキラしてて、あのぉ
ほくろの位置とか


〇〇:具体的に


優:〇〇くんは?


〇〇:


優:私のこと好き?




〇〇:好き


優:えへへどこが?


〇〇:動物にさん付けするとこ


優:他には?


〇〇:みんなのことよく気づく


優:あとは?


〇〇:綺麗な目


優:あとは?


〇〇:ちょっと待って




優:もうないの?


綺麗な瞳が揺れている。




〇〇:あるよ笑、あとはね




そこからずっと、お互いの好きなところを言い合いました。




意外と愛が重くて心配性なところもかわいい。


でも結局彼女の方がいっぱい言ってくれた。


やっぱり、僕の恋人はお人好しです。


FIN