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Adaps_A
2025-05-05 00:44:49
1062文字
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ダングリのはなし
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ダングリと光が同衾するはなし
不安というものは、姿のない怪物のようなものだと思っている。
夜になると音もなく忍び寄り、枕元に立ってこちらを見つめてくるのだ。
「くぁ」
だからか、どうにも眠れない。
目の前の挑戦者はチョコドーナツを頬張りながら、不思議そうな顔をした。
「寝れてない?」
「ちょっとな」
ふうん、とだけ言って、チョコドーナツに戻る。
彼のこういうところは嫌いじゃない。
自分から言わない限り、特に何も聞いてこないところが。
「安眠グッズがさァ、余ってんだよね」
「効かなかったの」
「そ。いる?」
「んん
……
」
珍しく言い淀む。
いつも通り、アイスココアを吸い上げて視線を逸らす。
しばらく悩んだ後、挑戦者は頷いた。
「小さめのだけ、もらう」
あんまり大きいと、持っていけないから。
チョコドーナツの向こうからの言葉に、なるほど確かにそうかも、と納得した。
そうして日の暮れた頃、自室に挑戦者を招いた。
数々のグッズに目を白黒させていたが、しばらくして花の香りのハンドクリームを気に入ったらしい。
いくつかの小物を渡した頃にはもう夜も更けていて、とんとん拍子に同衾が決まっていた。
夕飯をレトルトで済ませて、シャワーを浴び、ベッドに入る。
挑戦者は掛け布団の中でうとうととしていて、暖かい。
「な」
「んん」
「なんか話してくれよ」
「なんかって、なに」
「なんでもいいよ」
眠そうな顔でこちらを見る。
しばらく考え込んだ後に、ぽつぽつと語り始める。
とある国の秘密兵器を壊す話。千年続く戦争を終わらせる話。
二つの国を解放したり、異世界に闇を取り戻したり。
この空の果てへ向かって、星を救った話。
スケールがとんでもなく大きくて、だからこそ、おとぎ話のようだった。
現実感のない話を、まるで見てきたかのように語る。
腕の中でうとうとしながら語る彼に、少しだけ畏怖のようなものを感じた。
「それで
……
帰ってきてから
……
いっぱい、怒られ
……
」
ついに限界になったらしく、その言葉を最後に物語は途切れた。
規則正しい寝息が聞こえる。
不安というのは、姿のない怪物のようなものだと思っている。
夜になると音もなく忍び寄り、枕元でこちらを覗き込む。
けれど、今日はなんだか、カーテンを引いたように遠くに感じた。
おとぎ話が、暖かな体温が、規則正しい寝息が、微かに伝わる鼓動が、怪物と自分の間に布一枚をかけてくれたのかもしれない。
なんだか眠れそうな気がして、目を閉じる。
名前も知らないような、花の匂いがした。
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