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みずあめ
2025-05-04 01:41:50
3445文字
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brmy
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ゆづあい
何がネタバレなのか言うこともネタバレになるからとりあえずイベスト前半済の方推奨で、なんでも良い方だけどうぞ🙆
「対応いただきありがとうございます。この件はどうぞご内密に」
「はい、かしこまりました。また後ほどご連絡させていただきます」
「よろしくお願いします」
会話を終えて視線を交わし、その場から分かれて立ち去る。一人きりで角を曲がったところでふうと息を吐いた俺は無意識に指先をイヤホンに触れさせた。まるでタイミングを測ったかのように、通信が入る時の一瞬の雑音が聞こえる。
『俺はこのまま部屋に戻る。今日はもう出番はない、由鶴も好きにして良い』
「お疲れ様です。わかりました、軽食を買ってから俺も部屋に戻りますね」
『了解』
とくとくといつもより早いテンポで鳴る心臓は、普段と同じ口調の逢さんの声を聞いてもまだ落ち着きそうになかった。取引相手という役どころのためお互いに敬語を使う会話は、台本をもらった後に一度読み合わせをしたけれど慣れることはなく、本番を無事に終えた今も緊張が残っていた。
逢さんに敬語を使われていたのは前職の時の、本当に出会ったばかりの頃だけだった。 もちろん今も仕事相手に敬語を使う姿はよく見るし敬語を使う逢さんが変だなんてことはない。ただ、俺相手なのに、って、そう思ってしまう。
逢さんに伝えた通り船内の売店で食べ物を買い、売店のスタッフさんが食堂も開いていると教えてくれたからそこも覗いてテイクアウトできるごはんをもらってから部屋へ向かった。両手が塞がっていてカードキーが取り出せないことに気がついたのは部屋の前に着いてからで、近くには誰もいないし荷物を置ける台もない。少し戻って机のあるところでうまく片手にまとめてこようかと思ったところで、部屋の扉が静かに開いた。
「由鶴か。おかえり」
「
……
よく気が付きましたね?」
「ちょうどトイレに行っていて扉の近くにいたんだ。なんとなく人の気配がして、そろそろおまえが戻ってくる頃かと思ったから」
「両手が塞がっていたのでどうやって開けようかと悩んでいたところでした。ありがとうございます。それと、ただいま?」
「
……
」
逢さんが扉を押さえてくれている間に部屋に入り、振り返ってそう言い小首を傾げる。むっとして俺を見つめた逢さんに笑みを返せば逢さんははぁと深くため息を吐いた。
「俺たちの出番はなくとも、急な対応が必要になる場合に備えていなければならないし、三日間丸ごと仕事のようなものだ」
「もちろん、わかっています。でも二人きりの時くらい楽しんだっていいでしょう?」
「よくない」
「逢さんが仕事にならなくなっちゃうから?」
「
……
わかってるなら煽るな」
「何かあっても俺が対応します。今日はまだ初日ですから、緊急事態になる可能性も明日以降よりは低いでしょう」
「
……
だめだ」
「どうして?」
「セックスした後のおまえの顔は、誰にも見られたくない」
ストレートな言葉に目を見張り、今さら両手が塞がっていることを思い出してそれを部屋の中のテーブルに全て置いた。逢さんに止める隙を与えずにすたすたと近寄り体をぎゅっと抱きしめる。すでに着替えを済ませていた逢さんは嗅ぎ慣れた安心する匂いがした。
「ゆづる」
「何もしないです。もう少しこうさせて」
「
……
さっきは少し調子が悪かったのか」
「え? 何がですか?」
「役として話している時、やりづらそうだっただろう。演技はそこまで苦手ではない上に相手が俺なのに、不都合があるとしたら体調が良くないのかと思った。船酔いか?」
「あぁ
……
。体調は全然、船酔いもなくいつも通りです。変だったのは多分、ドキドキしてたから」
「どうして」
「あなたに敬語を使われることに慣れていなくて」
「
……
そんなことで?」
俺の答えに逢さんは不思議そうに首を傾げた。俺はくすっと笑って逢さんの手を取り、手のひらを俺の胸に当てさせた。さっきまでとは違う意味だけど、今だって心が高鳴っている。
「そんなことで、ドキドキするんですよ。逢さんは、
……
逢は、しない? 俺が普段と違う口調で喋ってもなんでもない顔でいられる? 俺はすごく緊張するよ。
……
すっごくドキドキする。ただ少し口調が変わるだけなのにね」
「
……
、
……
理解した」
「ふふ、よかった。
……
ドキドキしました?」
「
……
名前は、そのまま呼び捨てにしてくださってもいいですよ、由鶴さん」
「っ、だ、だから、ドキドキするからダメですって」
「ふ、ははっ、二人きりの時くらい、楽しんだっていいでしょう?」
「わあ、もう、逢さん!」
顔が熱い。絶対に赤くなってる。だけど楽しそうに笑う逢さんから離れることもできなくて、強く抱きしめ逢さんの肩に顔を埋めた。耳元で「由鶴さん?」とからかう声で言う逢さんに仕返しするため、ほんの少しだけ顔を上げて逢さんの耳たぶにちゅっと唇を触れさせる。ピクッと震えた体を逃がさないように抱きしめたままその耳に直接「いい子にして、逢」と囁いた。
「っ、由鶴、それ、ずるい」
「呼び捨てされるの好きですか?」
「
……
嫌じゃない」
「そうなんだ、可愛いですね」
「
……
、
……
しないのか」
「なにを?」
「
……
」
「ふふ、可愛い。お腹空いてないですか? 先にちょっとだけご飯食べたい。いい?」
「
……
呼び捨ての話だ」
「呼び捨ても含めた話です」
「
……
俺も少し食べる」
「じゃあ一緒に食べましょう。あ、先に着替えようかな」
「待った」
お互い照れているなら顔を見られたって構わない。抱きしめていた手を離して船内での衣装として渡されていたスーツのジャケットを脱ごうとすると、逢さんが俺の腕を掴んで止めた。首を傾げれば照れ隠しのムスッとした顔で俺のことを見つめる。
「逢さん?」
「
……
服、そのままでもいいだろう」
「
……
このままがいいんですか?」
「わざわざ着替えなくてもいいと言っているだけだ」
「
……
食事で汚したら困るので」
「わかった、ちがう、だから、
……
そのまま、抱いてほしい」
「
……
やっぱりご飯は後回しにしましょうか。ご飯はいつでも食べられるけど、逢さんが、
……
じゃないや。逢が、そういう気分のうちに気持ちよくなりたいよね?」
「
……
」
「ネクタイ、逢が解いてくれる?」
「
……
」
逢さんは無言のまま俺のネクタイに手をかけ、慣れた手付きでするりとそれを解いた。ついでのようにシャツのボタンもひとつ、ふたつと外されて、俺は口角を緩めて逢さんのことを抱き上げる。
「続きはこっち。大きな船だしあまり揺れないと思いますけど、船酔いしそうだったら言ってくださいね」
「
……
敬語じゃなくてもいいが」
「そっちの方が好き? でも、だって逢さんなんですもん。つい敬語になっちゃう」
「やりやすい方でいい。
……
名前」
「あぁ、名前は呼び捨ての方がいいんですね。そっちは努力します。逢にもいっぱい気持ちよくなってほしいから、やってほしいことがあったらなんでも言ってください。
……
ジャケット、まだ脱がない方がいいですか?」
「
……
脱がしても?」
「もちろん。あ、耳のこれ、まだ外してなかったんですね」
「? あぁ、忘れてた。なくさないように、外してくれるか?」
「
……
じゃあ逢も、俺のピアス外して?」
ベッドの上でお互いのアクセサリーを外し合い、十数センチ先の瞳と数秒見つめあってから今度こそ逢さんを押し倒す。俺の影の中で、逢さんはいつもより熱っぽい瞳で俺を見上げていた。
「
……
逢?」
「うん
……
?」
「
……
可愛い顔してる。そんなに呼び捨てにされるの好きですか?」
「ゆづるが、遠慮しないでくれている気がして、嬉しいから」
「
……
じゃあ今日は、遠慮しないで逢のこと抱いてもいい?」
「
……
いつも、遠慮しないでいい」
そっか、だかなんだか、返した声は言葉になっていただろうか。ぐっと堪えて衝動をやり過ごしてから、顔を近付けて丁寧に唇を重ねた。遠慮しないでいいと言われたことを無視しているわけじゃない。ただ逢さんのことを大切にしたいだけだ。それに、きっと途中からそんな気遣いもできなくなってしまう。せめて最初だけでも余裕があるフリをしたかった。
「好きにしてくれるんじゃないのか」
「ええ、好きにしますよ。逢がやだって言ってもたぶん止まれないから、たくさん気持ちよくなる覚悟しておいてくださいね?」
びくっと震えた肩を押さえ、今度は最初から舌を伸ばしてキスをする。さすが豪華客船、軋みもしない丈夫なベッドに安心して逢さんの服の中へ手を潜り込ませた。
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