三毛田
2025-05-03 21:59:38
1071文字
Public 1000字3
 

81 01. 精一杯

81日目
今の精一杯でも

 列車の外に出たら、不用意に前に出ない。ゴミ箱を焦らない。
 列車内では、きちんと髪を乾かして寝る。アラームをセットして、きちんと起きる。
 これが今、俺ができる精一杯。
「少しずつ守れているようだな」
「丹恒こそ、ちゃんと寝てるのか?」
「俺はお前よりも丈夫だから、何日か徹夜しても平気だ」
「だとしても、ちゃんと寝ないと。俺のことばっか構ってないで、丹恒こそ守るべきだろ」
「む。まあ、それはそうなのなもしれないが……
 まさか俺に言われるとは思っていなかったのか、ムッとした顔。
「じゃあ、ちゃんと寝る。っていうのを追加してくれ」
「追加しなくても、お前はすぐに寝るだろう」
「丹恒と一緒に。っていうのはどうだ?」
 提案するも、困ったように眉を下げるだけ。
 パムも、姫子も、ヨウおじちゃんも、なのも。みんなみんな、ちゃんと寝ない丹恒を心配してるのに。
 だから、こっそり俺に期待している。
 俺といる時の丹恒は、幾分纏う空気が柔らかくなっているから。らしい。
 イマイチよくわからないけど。
「じゃあ、今日は一緒に寝よう。俺のベッドなら、二人で寝られるから」
「勝手に決めるな」
 呆れたようにため息をつく。
「姫子とヨウおじちゃんにも聞いてみろよ。賛成してくれるぞ、絶対」
「二人を味方につけるのは狡いだろう」
 むすっと、少しだけ唇を曲げ。
「じゃあ、一緒に寝るからな」
「わかった」
「やった! 待ってるから、ちゃんと来いよ。あ。パジャマは用意しておくから手ぶらで」
 最後一方的に告げて、資料室を出る。
 何か言ってた気がするけど、知らない。
「来たぞ」
「うん」
「何でそんなに嬉しそうなんだ」
 寝る時間より、ちょっとだけ早い時間。
 ちゃんと丹恒が来てくれたのが嬉しくてニコニコしていると、ちょっと怪訝そう。
「丹恒が来てくれたからに決まってるじゃん!」
「約束、だからな」
 約束だから仕方なく。という雰囲気ではあるものの、ベッドに腰かけている俺の前まで来てくれて。
「これ、パジャマ」
「わかった。あっちで着替えてくる」
「ここでもいいじゃん」
……
「わかったって。待ってるから」
 浴室で着替えてくるというので、俺の前でもいいじゃんと告げると睨まれた。
 丹恒の生着替えを見たら、きっとというか確実に興奮するので黙って待っておく。
 丹恒は知らないだろう。
 俺が、彼を好きでそういう欲を抱いているということを。
「知ったら、どんな顔をすんだろう」
 知りたい。けれど、知りたくない。知るのが怖い。