Ymi:no
2025-05-02 13:19:34
1540文字
Public ビマヨダ加筆修正前
 

幸福な夢

夢を見ているヨダと、その夢から弾かれているビマのビマヨダ

――幸せな夢を見ている
「わっはっは!わし様に勝とうなど、百億年早ぁい!」
棍棒を高く掲げ、床に転がる男を嘲笑する 少し前まではこの男に負けてばかりで、腹立たしいことこの上なかった しかしなんの気まぐれか、最近はわし様の方に勝利の女神が微笑んでいる
「チッ……
こちらを鋭く睨む男を、正面から堂々と見下ろす
「それ!分かったらわし様に貢がんか!」
今まで何をしても勝てないと思っていた男に、正々堂々挑んで勝った それも一度ではなく、何度も その事実がわし様を何よりも喜ばせた
「ハァーー。何が食いてぇんだ」
「なんだぁそのため息はぁ〜?」
男が片腕を支えに上体を起こし、深いため息とともにリクエストを問う。普段であれば不敬だ不遜だと詰るところだが、今のわし様は大変気分がいい にまにまと口角を上げ、敢えて挑発に乗ってやることにした
「お前の阿呆さを讃えてマシタ」
「不敬!!」
口の減らない男につい本音が転び出る この男、本当に不敬である
「ちったぁ静かにできねぇのか」
「お前にだけは言われたくないが?」
目線が交わり、バチバチと火花を散らす 幼い頃からずっと、この男とは本当に馬が合わない
はぁ。作ってくる」
立ち上がり土を払った男が、わし様を置いてのしのしと歩き出す
「まだ何もリクエストしとらんのだが?!」
「どうせイチャモンしかつけねぇだろ」
「正当な要求ですぅ〜!」
口喧嘩をしながらも、気がつけば男とわし様は同じ歩幅で隣に並んで歩いている
そんな幸せな日常に、わし様はこの上なく満足していた

❀❀❀

「幸せな、夢
管制室のモニターを見つめ、少女がぽつりと呟く
万能の天才たる少女も、三代目所長も、真剣な顔で口を噤み、少女の隣に立つ男の様子を伺っていた
呆然と立ち尽くした男ーービーマをも置いて、モニターに映った世界は暢気な日常を垂れ流し続ける ドゥリーヨダナとビーマを中心とした、穏やかで幸せな夢の世界を
事の発端は愛の神の、ちょっとした悪戯心によるものだった
〝幸福な夢を見られるお守り〟という触れ込みで、愛の神の〝愛〟の欠片を込めたアイテムを、あちらこちらにばらまいていたのだ それだけであれば、本当にただ面白恥ずかしい夢を見せられるだけであったのだが、あの小賢しい男の持つ魔性という特性が、おかしな方向に効果を広げてしまった
そうしてこんこんと眠り続けるトンチキ野郎は、幸福な夢とやらを見たまま、目覚めなくなってしまったのである
「なんというか、その
三代目所長が声を発したかと思えば、もにょもにょと口篭る 何か言わなければと思ったのだろうが、適切な言葉が浮かばなかったらしい
それも仕方のないことだと独りごつ
ドゥリーヨダナの幸せな夢と聞いて、これを想像できるやつなどいるはずもない
『おい』
『な、なんだんっ』
『食わせろ』
『っ!悪食がすぎる……
『だからなんだ』
『まあ………構わんが』
『嫌だっつっても逃がさねぇがな』
『ケダモノ』
『なんとでも言え』
寝台の上で、ビーマ擬きと奴が乳くりあう姿に青筋が浮かぶ 流れとしてはお互いの性欲の発散のため、らしいがやりとりは恋仲のように甘ったるい
「うーん、これ以上は情操教育に悪いかな〜」
ブツンと画面が暗転する マスターもそうだが、何よりビーマやトンチキ野郎への配慮があっての判断だろう 何も映さなくなったモニターを見つめ、脳裏に焼きついた光景を反芻する
「び、ビーマ
身体中を駆け巡る怒気が、霆となって火花を散らす マスターの困ったような声も耳に届いていたが、今回ばかりは聞いてやれそうもない
「ぶっ殺す」
この幸せな夢を粉微塵にするまで、ビーマは止まらないと決めた