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くこ
2025-05-01 23:32:56
5516文字
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シークレット・オブ・モンスター(レインコード・CPなし)
ヨミーさん妄想話
まだ保安部長じゃないヨミーさんの捏造 ヒャッハーしてません この後ヒャッハーしていく予定
かなり時系列の理解が怪しい…
だいぶ都合よく改変していく予定
この世は、バカばっかりだ。
どいつもこいつも、自分のことしか考えていやがらない。
「アマテラス社の技術を積極的に外へも売っていくべきだ」と主張する男は、相手の企業から個人的な裏金をもらっている。
「アマテラス社の崇高な技術力を外部へ流出させるなんて創業者への冒涜だ、媚びを売るなんてとんでもない」と憤る男は、粉飾決算をして自らの研究費に充てている。
「どちらでもいいから、好きな研究をさせてくれ」と会議への参加すら億劫がる女は、経理未承認の高額な素材を使い込んでいる。
「なんでもいいから、自分の周囲が平和で、自分の給料さえ支払われればいい」と日和見を決め込んでいる女は、社内の異性をたぶらかし、あまつさえ不倫騒動にまで発展させている。
(だりぃ)
喧々囂々、永遠の平行線を眺めながら、ヨミーは視線を窓へと向けた。外は晴天。雲一つない。こんなに晴れやかな天気だというのに、会議室へ詰め込まれ、くだらない口論を聞かされている。ヨミーがもう少し権力を持っていれば、一喝して強制的に終了させているところだ。
この会議には、一定以上の役職を持った人間しか参加していないはずだが、どうにも内容が稚拙すぎる。誰も彼も、自らの都合のいいことを訴えるばかりで、アマテラス社、ましてや一般社員のことなど、歯牙にもかけていない。
一般社員と役職者と、人数比がどうなっているか、彼らは考えたことがないのだろうか。多数派をないがしろにして、自らの成功があるなどと、本気で考えているのだろうか。しかしヨミーは、それを真っ向から指摘してやるほど、彼らのことを評価していない。なので、ただ、黙っている。時が来れば、おのずと、なるようになる。
あくびを噛み殺し、手元に配られていた紙へと視線を落とす。かろうじて、ここで言い合っている彼らが事前に提出していた起案書だ。ほとんどが目を通す価値もない戯言だが、ひとつ、財政を立て直すには良いものがあった。もちろん、裏金で結託しているくだらない企業を相手にするのではない、やるならもっと、でかい相手だ。
会議で交わされる言葉を右から左へと受け流しながら、ヨミーは頭の中で案を練っていった。
ヨミーの父親は、非常に厳格な人間であった。
少しでもマナーに甘いところがあれば、容赦なく、背中や手のひらに鞭が飛んできた。幼いヨミーは、その痛みに涙をこらえながら、しかし、父親の言うことは常に正論であったので、異を唱えることは我慢していた。
そのヨミーの頬を撫でながら、「泣かなくって、えらいね」「強い子だね」と、いつも言っていた女の手の甲にも、同じような、赤いミミズ腫れの痕があった。女の首に残る赤い指の痕の意味を知ったのは、そう最近のことではない。
おかげさまで、物心ついた頃には、一通りのマナーを身に着けていたし、人間を相手にする交渉術も、あらかた覚えた。どのような人間が、どのような言葉を好むのか。どのような行動に喜ぶのか。どのようなタイミングが、最適なのか。それらを、父親の背中を通して、学んだ。
そして、それら学んだ技術を、アマテラス社に入社したヨミーは、遺憾なく発揮していた。
いつのまにか、ヨミーの傍には、多くの社員がいた。程度はあれど、心酔をする者も複数、存在している。正直に言って、他者に心酔する精神性は、ヨミーにはこれっぽっちも理解が出来なかったが、己の邪魔にならない、むしろ己の意に沿おうとするのであれば、特段、問題ではなかった。
だから、優秀な部長の急逝により、ぽっかりと空いた研究部門のポストに、副部長を押しのけてヨミーが推薦されたのも、自明の理、であったと言える。
当然ながら、嫉妬はあった。
なぜあの若造が、という陰口を聞いた回数は、もはや数えることも馬鹿らしい。そのような陰口を叩くことしか出来ない老害は、自然と淘汰される。ヨミーが相手取るべきは、まず、無能な上層部だった。
見込みのある人間であれば、懐柔し、そのままのポストで使ってやっても良かったが、一度会議に出て、その希望は淡いものであったと知った。誰も、社の存続のためかどうかの軸で話をしていない。当然、協力をし合う発想などなく、権力が分散し、ちょっとした決断をするにも長い時間が掛かる始末である。
こいつらを野放しにしていれば、いずれ、瑞々しく茂っている青葉たちも食い尽くされてしまうだろう。何人かの優秀な研究者や社員の顔が思い浮かび、ヨミーの眉がひそめられる。そのような蹂躙は、許しがたい。
自分のことしか考えていない輩は、情報操作も疎かだ。出るわ出るわ、部下からの不平不満、愚痴、告げ口、エトセトラエトセトラ。きっと、部下たちも、誰かに知ってほしかった、聞いてほしかった、わかってほしかったのだろう。優しい声音で「大変そうだな」と話しかけると、たいして見知らぬヨミー相手にも、ぽろぽろと重要な機密事項まで口を滑らせた。
そうして、証拠を掴んでいった。後釜を探すことも忘れない。優秀で、社会への意義を矜持として持ち合わせていて、未来を見ている人間。探すのは苦労した。そういう人間は、たいていは控えめで、よくよく評判を聞いていかないと、見つけられない。社内評価制度を洗い、部署の人間からヒアリングし、本人と直接会話をし、判断した。
一通り頭を挿げ替えられたときには、すでに、ヨミーが部長を就任してから、数年が経過していた。
その間も、社の経営は悪化していく一方だ。同時進行で手を打っていかねばならなかった。物理的に、作業量に追われる日々が続いた。睡眠時間は3時間程度。目にクマが出来ることは、この頃から、当たり前になっていた。
ヨミーの肩に、重責がのしかかっていた。社が存続できるかどうかは、己の力量によって決まる、本気でそう考えていた。ヨミーがここで踏ん張らなければ、きっと、アマテラス社は倒産してしまう。事実、優秀な研究者は数多く抱えど、優秀な組織人には恵まれていなかった社は、そのまま経営難で消えていくか、どこか適当なところに買収されるか、という瀬戸際まで来ていた。そこを救ったのが、ヨミーだった。これは、自他ともに認める、事実だろう。たとえその後のヨミーのふるまいが、どのようなものであったとしても、だ。
ふぅ、と、張り詰めさせていた緊張を解いた。呼吸をする。
ヨミーの前には、契約書がある。軍との取引。莫大な報酬と引き換えに、「画期的な軍事兵器」を開発する契約だ。一介の企業と結ぶ契約とは、わけが違う。何しろ懐の大きさが違う、取り扱う金額の桁が違う。
それに、この研究はきっと、アマテラス社のためにもなる。必要な費用や素材も、すべて軍が持ってくれるし、研究過程で得られる特許も認めさせた。口ぶりからするに、おそらく、軍自体も、独自に研究を進めているようだし、「成果」に関しては共有すると確約したので、そこまでのデメリットでもないのだろう。
おかしな条文も紛れ込まされていない。穴が開くほどに、何回も読み返した。これは、失敗したら許されない契約だ。万が一にも、アマテラス社の一方的な不利となる条文や文言が存在していたら、立場として弱い一企業は、瞬く間に星屑となってしまうだろう。
機械的な公正もさせている。問題ない。これで、アマテラス社は、復権できる。かつての栄光を、取り戻せる。
ソファに体をうずめたヨミーは、天井を仰いだ。
社運を賭けるプロジェクトだ、優秀な人間のなかでも、さらに選りすぐらなければならない。また、きちんと機密を守れる理性も必要だ。すべてを兼ね備えた人材を見つけるのは、これまた、骨が折れた。何人かは妥協した。多少、頭のねじが緩まっていたとしても、実力のほうが大切だ。なぜならば、成功できなければ、意味がない。
そのなかでひとり、変わった女性がいた。室内だというのにサングラスをかけ、長い、ウェーブのかかった髪をなびかせながら、部下へきびきびと指示をしていたのが、最初の出会いだった。彼女の研究が遅れている、と、彼女の研究進捗を確認する担当が報告してきた。その上司であるヨミーは、役職としては彼女のほうが上であることを知り、代わりに確認することを申し出た。そして、彼女へヨミーが話しかけたら、ぴしゃりと追い返された。いわく、「前任へすでに3日後まで待つよう手配済みだ」と。
カチンと来ないでもなかったが、事実確認のほうを優先した。研究を邪魔することは、本意ではない。そして、前任者がまるっと引き継ぎ書を作っていなかったことを知り、すぐさま、そいつを更迭した。そもそもヨミーの部下にポストを奪われていたので、さらなる閑職へと追いやられたことになる。自主退職をするかもしれない。それはヨミーの知ったことではない。
悪かった、といったような旨のメールを彼女へ送り、担当へ事情を説明し、待つように指示をした。そして、きっちり3日後に完璧な研究報告をあげた彼女から、お茶でもどうか、と誘われた。特に下心は感じなかった。
ヨミーの身近な人間は、ヨミーを畏怖するか心酔するかの二択であることが多かったので、彼女のような存在は、めずらしかった。頭のいかれた研究者のなかでは、それに当てはまらない人間がいくつか存在していたが、まともに会話が成立する人間としては、初めてかもしれなかった。
「ごめんなさいね。研究が佳境で、気が立っていて」
カップに口をつけた後、彼女は、眉を下げてヨミーへ謝罪した。それをすんなりと受け入れている自分に、ヨミーは、少し驚いた。皮肉を交えずに他者と相対することは、いつぶりだろう。
優秀な研究結果からわかっていたことだったが、彼女は非常に聡明であった。そして、意欲があった。自分の研究で、世の中をよくしていきたい。困った人を助けられるような、頑張っている人が報われるような、なんでもいい、他者の助けになるような研究成果を出したいのだと、言っていた。その向上心は、研究をよりよいものにするだろう、と、ヨミーは思った。目的のある、そしてそれを自覚している人間は、強い。
それと、と、彼女は口ごもった。目線で先を促すと、苦笑しながら、口を開く。
「
……
最近、しつこくて。断っているのだけど、その、他社の方が」
ヘッドハンティング、というやつだろう。特許や研究成果は、名前が出る。当然、所属も。所属と氏名がわかれば、コンタクトを取ることは、存外、簡単だ。業界人であれば、なおさらである。
断ってもしつこくされた日だったので、苛立ちもあったのだと、彼女は素直に吐露した。そうか、と、ヨミーは相槌だけを返す。懺悔をしたいのだろうから、それ以上は何も言わなかった。
しかし、社の人間にそのようなコンタクトの取り方をする存在がある、それは由々しきことかもしれない。さりげなく、その相手の社名を探る。おおよそのあたりがついたので、ヨミーは携帯機で簡潔に部下へ指示を出した。
彼女が襲われた、と聞いたのは、その翌日だった。
打つ手が遅かったのか、と、ヨミーは悔いた。現状把握を命じ、コートを羽織る。彼女の居場所を聞き出すと、即座に車を回すよう伝えた。
ただでさえ優秀な人材は貴重なのに、失うなどと、冗談ではない。まして、危険性を察知することができる環境にあったのに、それをみすみす見逃したのだとすれば、失態どころの話ではない。誰にどう責任を取らせればよいのか、思いつきもしない。
だが、ヨミーの予想に反して、彼女は五体満足だった。その代わり、ぼろぼろになった、くたびれた男がいた。たしか、探偵、だったか。アマテラス社のためにカナイ区の情報をまとめていたとき、見たことのある顔写真と似ている気がした。
「驚いた。冷酷無慈悲な首切りヨミー様、が、私の心配をしてくれるなんてね」
くだらない軽口に、怒るよりも、安堵が勝った。それに、そのあだ名は別に、真実なので、特に思うところはない。無能には罰を、有能には報酬を。それを忠実に実行しているだけである。
「こちらが、ブチョーさん?」
低めの、どこか愛嬌を感じさせる声が問う。青いもじゃもじゃ頭の男から発せられているようだ。ヨミーより頭一つ身長が高いので、若干、聞き取りづらい。
目元は腫れているし、口の端は切れている。頬も赤くなっているし、そこらじゅうがボロボロだ。いったいどこの戦場帰りだ、と、彼女へ視線で問えば、いつもの苦笑で答えられた。
「ヤコウ。カナイ区唯一の探偵よ。私が危ないところを、身を挺して守ってくれたの。
……
ヤコウ、こちら、私の上長。ヨミーよ」
「あ、やっぱり。どうもォ、お噂はかねがね」
特に挨拶の必要を感じなかったが、身元を尋ねた責任として、目線だけをヤコウへ向けた。へらり、と、気の抜けた笑顔を返される。隣の彼女へ再び視線を向ければ、また、笑われた。
「いいひとなのよ」
「見ればわかる」
そんなことは聞いていない、と、ヨミーが切り捨てる。ひとつ息をつくと、まあ、無事ならよかった。と、踵を返した。
「もう行くの?」
「用は済んだ」
「そう。また明日ね。ありがとう」
「
……
上長としての、責任だ」
それ以上でもそれ以下でもない、振り返らずにヨミーが告げると、ふふっ、と、軽やかに笑う声が背中に当たった。そのまま、まっすぐ、帰路に着いた。
そのあと、ヤコウと結婚した彼女が、死んだ。
ヨミーがその訃報を聞いたのは、自身の執務室でのことだった。
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