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🐼🎋
2025-02-10 21:21:34
3331文字
Public
村荒
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恋人の事になると意志がはっきりするバカの話
2/9 VRF内荒受オンリー「Action!VR2025」 にて配布しました無配ペーパーよりWEB再録
*影浦視点の村荒(荒船くん不在)
*今後発行する本に再録する場合、こちらは消える可能性があります
目当ての場所に向かえば、待ち合わせの相手がA級の三バカに集られていた。
「鋼さん、一戦やりましょうよ!」
支部所属の村上鋼は、本部に来る頻度が少ない。そのため、個人ランク戦ブースへ顔を出せば、御覧の通り、あっという間に一部の戦闘狂に集られてしまう。皆、あまり対戦が出来ない強い人物と戦いたいのだ。
それは、比較的村上と個人ランク戦をこなしている影浦も同じことで、今日は村上と個人ランク戦を行った後で、影浦の実家であるかげうらに行くことになっている。予定が合わず、荒船は来ない。
このままでは、村上がA級の三バカどもに取られてしまう。影浦という先約があったとて、村上は「じゃあ、順番で」と言い出しかねない。影浦は、ずんずんと村上へと近づいて行った。
「おい」
声をかければ、村上がこちらに気付いて「カゲ」と声をかけてくれる。それに気が付いたA級の三バカがこちらに振り返った。
「カゲさんだー!」
「お疲れ様でっす」
「お疲れ様でーす!」
次々に挨拶してくる三バカにちらりと視線をやり、村上に向き直る。
「何やってんだおめーはよ」
そう言えば、村上は「カゲを待ってただけなんだけどな」と苦笑を浮かべた。
「あー、もしかして鋼さん、カゲさん待ちだったんすか」
出水がそう問えば、村上はこくりと頷く。
「またカゲさん?」
「いっつも戦ってるじゃないすか! たまにはオレらに譲ってくださいよ」
ぶうぶうと文句を言う緑川と米屋に「うるせえ、うるせえ」と言えば、影浦が引く気が無い事が伝わったのだろう。三人は諦めムードで肩を落としている。
「おら、散れ散れ」
おまけにしっし、と手を振ってやる。
「ちぇー」
「まあ仕方ないか」
「今度はオレらとやりましょー」
諦めた三人はやいのやいの言いながら二人から離れていく。それを見届けてから、二人はブースの方へ歩き始めた。
「おめーなあ、こういうのは適当にあしらってればいーんだよ」
影浦がそう零せば、村上は苦笑しながら「カゲがもしかしたら戦いたいって言うかもしれないだろ?」と言ってくる。
「今日は気が向かねー」
村上は支部所属なのもあるが、本部にあまりやって来ない。荒船が狙撃手に転向した後は本部に来る頻度がかなり減った。村上と戦える貴重な時間を取られたくはない。
「じゃあ、今度気が向いた時には戦ってやろうな」
人の気も知らず、そういう村上に「ケッ」と答えた。
◆
「あ?」
自隊の作戦室に向かっていた影浦は、通路で忍田に声を掛けられている村上を目撃した。
村上と荒船が付き合い始めたと聞いてから、一年は経過しただろうか。
荒船は完璧万能手になるべく銃手に転向して久しい。村上も、荒船のメソッドで狙撃手や銃手を触ることも増えたと言っていた。
それでも、村上も荒船も弧月の腕が落ちたということはなく、二人とも個人ランク戦もそれなりにこなしている。
そんな忙しい二人ではあるが、お互いに時間を作って会うようにしている。そうはいってもここ暫くは荒船とスケジュールが合わないと前に村上から聞いたことがある。
そして、すれ違うことも多いから、そろそろ一緒に暮らそうかと考えていると、この間住宅情報のチラシを見ながら荒船が言っていた。
今日はこの後、来馬の紹介の物件を見に行くとか言ってなかったか。結構いい物件があるから、来馬と共に内見に行くとか。荒船は別日に来馬と行くとか。鈴鳴から行くかと思ったが、本部から向かう方が物件に近いのかもしれない。
それなのに、断り辛そうな人物に話しかけられている。
どうすんだ。成り行きを見ていてもいいが、それだと作戦室で待っている仁礼に遅いと小言を言われてしまう。数秒考えて、作戦室へ向かうことに決めた。
しかし、行くには二人を横切らねばならない。
普段通りいけば大丈夫か。二人に向かって歩き、擦れ違う時に「
……
ッス」と忍田に向かって頭を下げる。
「ああ、お疲れ様」
「あ、」
擦れ違いざまに影浦に気が付いた村上が声を上げる。途端に、影浦に刺さる村上の感情。困惑と、助けて、という気持ちが刺さってくる。
自分もお人好しだ、と思いながら立ち止まって、思わず溜息を吐く。振り返れば、村上が安堵した表情を見せた。
「あー、あの、忍田サン」
「ん? 何だ、影浦」
「何してんすか、こんな所で」
とりあえず、村上を救出すべく、何をしているのかを聞く所から始める。
「ああ、村上から話を聞きたいことがあってな。時間あるかを聞いているところだ」
「あー、コイツ、今日この後外せない用事があるらしーんすよ」
そう言えば、忍田が目を丸くしながら「そうなのか?」と村上を見た。
「は、はい」
「そうか。それなら時間が取れそうな日時を教えてくれないか?」
忍田は端末を取り出し、スケジュールを確認している。村上も端末を取り出して、自身のスケジュールを確認し始めた。
「ええと、明後日の午後からなら大丈夫です」
「それなら
……
明後日の十五時からでも大丈夫か?」
「はい」
二人は端末を操作してスケジュールを埋めていく。埋め終わった忍田が端末を上着のポケットに仕舞うと、村上に向き直った。
「時間取らせて悪かったな」
「いえ」
「じゃあ、また」
気を付けて帰りなさい、と言いながら忍田は颯爽と歩き去っていく。二人でそれを見送り、影浦は「で、」と村上に話しかけた。
「なに捕まってんだ」
「いや、今度のスカウト遠征の件で話がしたいって事だったんだけど」
時計を見たらそろそろ出ないとまずくて、と村上が手に持った端末で時間を確認する。
「ほんとにやばい」
「さっさと行け」
そう言えば、じゃあな、と挨拶もそこそこに村上は駆け出していく。それを見送ってから、作戦室まで歩き始めた。
後日、村上から「来馬先輩が、美味しいと言っていた」値段がバカ高そうな寿司を奢って貰った。正直味の違いはわからなかった。
◆
(また捕まってやがる
……
)
ラウンジにやってきた影浦は、太刀川に捕まっている村上に遭遇した。
太刀川は所謂戦闘狂で、ランクが高い奴を見れば見境なくランク戦を申し込むことで有名だ。今日の村上は、荒船の誕生日プレゼントに指輪を見に行くと言っていたので、運悪く太刀川に遭遇して捕まってしまったのだろう。
太刀川は一度声を掛けたら中々食い下がらない。太刀川がラウンジにいたのは、もしかしたらランク戦室に目ぼしい隊員がいなかった可能性がある。そうなると太刀川はしつこい。
今回もまた面倒そうなのに絡まれてんな、と思いながら村上の奥にいる影浦隊一行を目指す。また通りすぎるのか。いつぞやのデジャヴを感じた。
「村上、一戦しないか?」
十本勝負。そういう太刀川の横を通り過ぎる。
「太刀川さん、すみません。今日は絶対に外せない用事があるんです」
それでは失礼します。村上は太刀川にきちんと一礼して、その場から走り去った。有無も言わせぬ行動に、流石の太刀川も呆気に取られて、無言で村上の背中を見送っていた。
――
アイツ、荒船が絡むとすっぱり断れるんじゃねーか。
ただただ断るのが苦手なだけだと思っていたが、そんなことはなく、優先順位の問題だった。
一番の優先はボーダーでの任務ではあるだろうが、オフ時間に荒船との予定が入っていれば何よりも一番になるのだろう。一緒に暮らしているくせに仲の良いことだ。
間接的に惚気られた気がして、眉間に皺を寄せながら歩くのを再開すれば、後ろから肩を叩かれた。
「影浦、暇か?」
「ゲッ」
後ろを見れば、案の定太刀川で、ランク戦やろうぜ、と言ってくる。
(鋼のヤロウ、めんどくせーの押し付けていきやがった!)
村上本人はきっとそんなことは一ミリも思ってないだろう。ただ、通りがかった影浦に太刀川が声を掛けただけだ。ただし、村上が受けていたら、声を掛けられることはなかったのである。
どう乗り切るか、受けた方が早いか。考えを巡らせる前に、「カゲ、おせーぞ!」という自隊のオペレーターの大声に、影浦は助けられたのだった。
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