藤野 こまち
2025-05-01 10:35:42
634文字
Public 復活!
 

エンバーミング

ヒバツナ/死ネタss

 掘り起こされたばかりの柔らかい土を掘る。ガリガリと原始的に手で掘り進めた。
 短い爪の中に土が入り込んで痛い。ぶつかる小石が指を掠めていく。爪が剥がれそうになりながらもその手が休むことはない。
 掘り進めて掘り進めて手に血が滲む頃、ようやく目的のものにたどり着いた。
 目の前に現れたのは土にまみれた黒い棺だ。うっすらと覆う土が僕と棺の間を引き裂いている。
 丁寧に取り払っていけば、手に滲んだ血がべっとりと染み込んで棺の蓋を汚していくが、そんな事はどうでもいい。その中で眠る彼に会いたい気持ちで一杯だった。
 やっとのことで蓋を開ける準備が出来ると本懐を遂げようとバールで抉じ開けた。バキバキと嫌な音を立てながら蓋が開いていく。その中には時を止めた綱吉がそこにいた。
 あの日の最期に見た時と変わらず彼は微笑んでいる。ずっしりと重い綱吉の身体を抱き締める。生前と変わらない姿に本当は生きているんじゃないかと思ってしまう程だ。
――目を、開けて」
 思わず口をつく。何も反応が無いと分かっているのに、心は追い付かなくて君にねだってしまう。納得済みで後悔なんてしないはずなのに、隣に彼が居ないことか堪えきれなかった。
 目を開けて、起きて、僕の名前を呼んで。
 それとも童話のお姫様たちのように口づけたなら、隠された瞳に僕を写してくれるだろうか。
「つなよし、君にあいたいよ……
 魂無き躯にすがってキセキを求める。こんなにも滑稽な姿の僕を君は笑うだろうか。