らい
2025-04-29 21:01:25
3425文字
Public レオいず
 

レオいず30days㉙「ビジネスパートナー」

パラレル・パロディ編⑨ お題「宝石」
※アストレア×宝石
※十八禁相当の描写はありませんが、ちょっぴりエ〇チなビジネスを交わしているため隔離しています


 CLOSEのプレートをぶら下げた木製の扉が、カランコロンと歌う。
 店仕舞いのあとに訪れる、常識はずれの客。宝石職人の泉が知りうるかぎり、該当人物はたったひとりしか存在しない。泉はジュエリーの拭き布を折り畳み、入り口にうごめく影に視線を投げる。白黒の三角棒に、オレンジ髪のしっぽが見え隠れするそこを睨みつけると、賢者のレオが首元の太陽を揺らして、「うっちゅ〜」と手を振った。

「わははっ、新作がい〜っぱい! やっぱりセナの宝石は綺麗だな〜」

 魔石工房アストレアの賢者であるレオは、時折こうして泉の宝石を買い付けにくる。ゆっくりと時間を掛けて吟味したそれに圧縮魔法を封じこめ、魔石として販売しているのだ。
 生まれもっての魔力に恵まれなかった一般市民でも、アストレアの魔石さえあれば生活が豊かになる。怪我を回復する治癒術、魔物を仕留める攻撃術、遠方への移動に欠かせない空間移動術───多彩な魔法を使いこなせるようになるのだ。販売元の泉とレオは当然ながら儲かるし、消費者にも上質な暮らしを提供できる。魔法社会においては、絶対に欠かせないビジネスだ。
 とはいえ、当然のように居座られるのは気に食わない。営業終了後に店内を物色されるのは今に始まったことではなかったが、どうにも腑に落ちなかった。仮にもビジネスパートナーなのだから、最初からアポイントメントを取ってこいという話である。
 泉は不機嫌に眉をゆがめる。腰に手を当てながら前のめりになって、レオに詰め寄った。

「ねえ。営業時間は、とっくに過ぎてるんだけど?」
「おお~っ。こっちのエメラルド、おいくら?」
「聞いてないし……。まぁいいや、お金だけはきっちり貰うよぉ。百万リッドルでどう?」
「買った!」

 レオは、まるで宮殿の指揮者のように人差し指を振る。すると、深翠にきらめく宝石が宙に浮かんだ。ジュエリーボックスをめがけて、夜空の流星群さながらに吸い込まれていくそれを眺めながら、泉はにんまり顔で企む。
 わざわざ閉店後の商談に付き合ってやってるんだから、もっと金を使わせなくっちゃ。

 「う〜ん……

 ちゃらんぽらんな賢者は、これでも宝石の選別には真剣である。額に人差し指を当てて長考するレオに近づくと、泉はするりと腕を絡めた。透明なショーケースを眺めていたレオの動きが止まる。

「ねえ……。産みたての宝石、欲しい?」

 耳元で甘く囁けば、レオは黙って振り向いた。宝物を探すかのような無邪気な顔つきが、一瞬にして行方をくらます。

……おれ以外にも、そうやって商売してるんじゃないだろうな」
「まさか。れおくんだけに決まってるでしょ?」

 ブローチの鎖に指を絡めて、ぴったりと密着する。半身を覆い尽くす生地をめくり、ねだるようにして腕を組めば、レオは喉を鳴らした。
 ばぁか、引っ掛かってやんの。頭の裏側でそろばんを弾きながら、泉はほくそ笑む。

「ったく、商売上手なやつめ」
「れおくんだって、下心はあるくせに」
「ああ、そうだよ。悪いか?」

 開き直るレオの手首を引っ張って、レジの裏側に招待する。
 宝石職人は、店頭に立つだけが仕事ではない。その美しい身体で、輝かしい宝石を産むのだ。

 
 
 

 宝石の民は、感情の昂ぶりを胎内の水晶体排出器官に反応させることで、美しいジェムを生み出すことができる。喜怒哀楽による刺激には個体差があって、『楽しい』がトリガーになる者もいれば、『憎たらしい』を原動力にする者もいるのだけれど、共通して反応しやすいものがある。
 それは、性的興奮だ。

「んっ……んっ……

 華奢な肩の曲線を辿り、細い腰を上下にさすられる。宝石の民はただでさえ敏感なのに、性感帯が刺激されやすい泉の肉体は、美しいハープの弦になったかのように震えてしまう。
 色っぽいムードには無頓着なふりして、存外丁寧に愛撫するレオは、背後から甘い声で囁いた。

「痩せた?」
「絞ったの……
「どうして?」
「宝石職人たるもの、だらしない肉付きじゃあ示しがつかないでしょおっ……
「おまえの美意識には惚れ惚れするよ。でも……こっちは欲しがって、きゅっと膨らんじゃってるけど」
「ん……あっ!」

 レオの手の平が背中のくぼみを経由して、柔らかな尻たぶに到達する。腰の曲線を丹念に撫でられ、布越しに割れ目が開かれた。泉は「んっ」と唇を引き結ぶ。
 主導権を握っていたのはこちらであるのに、すっかり逆転して肉体をコントロールされている。交渉巧みな賢者は、テクニックも豊富なのだ。

「そこ……開いちゃ、嫌……
「まだ駄目? ……焦らすわりに、腰がいやらしく跳ねてる」
「や、ぁっ……
「セナは、欲しがりさんだな~」

 臀部に伸びていた指が下腹部に回され、緩慢な動きで上半身に戻ってくる。オルガンを奏でるように脇腹に触れると、レオは衣服越しに胸をまさぐった。
 柔らかな谷間を持ち上げて、つんと張った乳首に引っ掛けるように円を描きながら愛撫する。泉がたまらず首を振ると、レオは慰めるように深いキスをした。しおらしく引っ込む舌をじゅるりと吸って、歯列を優しくなぞる。そうして胸の飾りをきゅっと引っ張られたとき、泉の腰は激しく跳ねた。胎内の水晶器官が反応したのだ。

「れおくんっ……産まれちゃうっ……! で、出るっ……
「おれとキスしただけなのに、赤ちゃん産まれちゃうんだ」

 低い声が耳元にねじ込まれ、泉は「あっ」と背を逸らした。絶頂にも似た感覚をともなって、下腹部の熱がせり上がる。
 背中の裏側に滞留するそれは、早く産んでと主張せんばかりに泉の肉体を刺激した。

「窮屈で、苦しいよな」

 白の羽織り布を結ぶ背中のひもが、ほどかれる。青白く光り始めるそこを人差し指でつつくと、レオはもういちど泉の胸を揉みしだいた。優美な背に張り巡らされた神経が甘やかされ、泉は三日月のように反り返る。
 身体を繋げているわけでもないのに、迫り来る快感の波。喜びの果ては、すぐそこまで迫ってきていた。

「あっ……あっ……駄目ぇっ……産まれるぅ……っ」
「綺麗だよ、セナ……。おれとセナの子、早く会いたい」
「んっ……あぁん……っ」

 肉壁に熱い欲望を注がれたかのように、泉は背筋を震わせた。琥珀色の石───オレンジダイヤモンドの先端がおもむろに現れて、ぬぷりと水音を響かせながら産み落とされる。
 宝石職人の仕事は、ひとまず終了。黄昏に光り輝くそれは、空に浮遊する風船のようにレオの手元に着地した。

「うんうん、セナの宝石は今日もきれい♪」

 レオが満足げに笑えば、産んだばかりのそれが収納ボックスに吸い込まれていく。これが、賢者と宝石職人のビジネスルーティン───泉は淫らにほどけた背中のひもを結び直そうとして、レオから距離を置く。
 ところがレオは泉の身体をゆっくり横たえて、柔らかなソファーに手首を縫いつけた。

「続き、してもいいか?」

 レオが尋ねるので、泉はかぶりを振る。熱っぽい呼吸を整えながら、そっと返事した。

……これ以上は、売り物にならないでしょ」

 性的興奮によって産み出される宝石は、喉を鳴らしてしまうほどに美しい。そして、もっとも上質なジェムを作るには、粘膜接触による体液の注入が効果的である。上質なジュエリー店の職人は床上手と揶揄されるほどには、有用な手段といっていい。
 しかしながらその場合、宝石としては上玉でも、魔石の素材として利用するには不適切なケースが多い。男の不純な気魂が混入すると、純粋な魔力を注入しづらくなる。つまるところ、魔石として正常に機能しないのだ。
 泉が宝石として売りさばくには利益になるが、レオが魔石として取り扱うには不利益が生じる。よってビジネス上のやりとりは、キスとペッティングが基本となっているのだが───レオは、毎回決まって囁くのだった。

「契約外のことだよ」

 返事を待たずに衣服をずらされて、生まれたままの姿にさせられる。胸の飾りを吸われ、双丘を丹念にほぐされ、体内の奥底を熱い奔流で満たされ、愛してるよ、と優しくキスをするものだから、泉は毎度のことながら身を委ねてしまうのだ。
 賢者の専用非売品として愛でられる宝石は、今晩もひときわ美しく輝いている。