かん
2025-04-29 19:27:42
6253文字
Public
 

行きつけのお店の常連さんは、 恋バナばっかり聞いてくる

守屋麗奈さん

〇〇:お疲れ様でしたー


新年度が始まってもうすぐ1ヶ月の今日この頃。

仕事がバタバタして結局いつも残業に。


でも今日は、華金。華の金曜日。

明日は休みなので存分に夜を楽しめる。


こういう時は決まって









〇〇:こんばんは


「こんばんは」


カウンターに腰掛ける。


〇〇:バーテンダーさん、爽やかなブランデーを
お願いします


「かしこまりました」


一ヶ月くらい前から通い出したこちらのバーは、
大通りの裏路地にひっそりと店を構えている。

席も少なく客の感じも心地よい。

現に今も自分1人だ。

そして毎回マスターが出してくれるカクテルが
美味しくて沁みる。


正直ここはしばらくリピートするだろう。

そう思うくらいに気に入っていた。




「今日はちょっと遅めですね」


〇〇:最近仕事が立て込んでて


「そういう時期ですね」


〇〇:そうなんですよ


「お仕事お疲れ様です」


〇〇:ありがとうございます


正直ここでしばらく愚痴を吐き出したい。

ただ言い過ぎるとひとつ問題が。



それが



『こんばんは〜』





〇〇:あ


「守屋さんこんばんは」



麗奈:ふふあっ!〇〇さんだ〜こんばんは♡


〇〇:こんばんは


麗奈:マスター、〇〇くんの隣でも大丈夫?


〇〇:いやダメでs


「はい、お好きな席で」


麗奈:じゃあ〇〇くんの隣〜♪


ぴょんっと隣に座る綺麗な女性。

僕と同じくこの店の常連、守屋さん。

同い年で誕生日も近い。

一カ月程前からよくこの店で会う。

その際バーテンダーさんが繋いでくれた。

美人で歳が近く自分には恋人がいない。

側から見ればすごくいい出会いだと思う。



多分もう好きなんだけど




麗奈:バーテンダーさん、私は前のと一緒で
お願いします♪


「かしこまりました」


しかし、彼女には要注意。


麗奈:〇〇くん、わかる?


〇〇:なにがですか?


麗奈:今日のれな、いつもと違うところが
あるんだ♡


〇〇:へー


麗奈:もー!興味持ってよ!反応薄い〜


〇〇:1週間ぶりくらいですからね毎日会ってないんで


麗奈:むぅ〇〇くんは女心がわかってないっ!



そう言ってまた長い説教を始める守屋さん。

守屋さんはなぜか恋愛について喋りたがる。

だから、なぜか僕は守屋さんのタイプを知っているし彼女も僕の元カノのことを知っている。

いや、もっと前に喋ることがあると思う。


正直、意味がわからない。





麗奈:そんなんだから彼女出来ないんだよっ!


〇〇:守屋さんの心配は無用です


麗奈:〇〇くんフリーになって何年?


〇〇:3年です


麗奈:あははっほらやっぱり〜笑


〇〇:笑い事では済まされない


顔を赤くしてめっちゃ笑ってる守屋さん。

なにがそんなに面白いんだ。


麗奈:よかったよかった笑じゃあそんな〇〇くんに質問ですっ!


〇〇:また


麗奈:ずばりっ!男女の友情は成立するのか!?


〇〇:バーでする話じゃない



守屋さんはよくこんなしょーもない話をふっかけてくる。

こっちの文句は聞いてないし答えるまで帰してくれないので、意見を言うしかないけど。


麗奈:ちなみにれなは〜成立しないっ!


〇〇:はい


麗奈:むぅ興味持ってよ〜


可愛く頬を膨らませてる。

これされて好きにならない男はいないな。



麗奈:で?〇〇くんはどっち?


〇〇:成立します


麗奈:え〜なんで?


〇〇:そもそも質問がおかしいです


麗奈:ん?


〇〇:仮にAくんとBちゃんがいたとして、2人とも同性愛者だった時、その瞬間その2人に恋愛感情は発生しないから、男女の友情は成立します




麗奈:よくわかんないけど多分れなが聞きたかったことじゃない


唇を尖らせ不満を漏らす。


〇〇:もういいですか


麗奈:じゃあ、れなは?


麗奈:れなは?友達?


〇〇:


麗奈:ちゃんと目、見て♡


〇〇:僕は




「お待たせしましたこちら、ホーセズネック
です」




〇〇:はっ!?あ、ありがとうございます



助かった

おっきな瞳に吸い込まれるとこだった


麗奈:も〜!バーテンダーさんっタイミングー!


「すみません笑、守屋さんもこちら、
エンジェルキッスになります」


麗奈:も〜まぁいっか、ありがとうございます♪


2人それぞれにカクテルが。


守屋さんは、チョコと生クリームが入ったお酒。

味はデザートみたいですごく甘いらしい。


こっちは、これまた見たことのないカクテルだ。

レモンの皮がまるまる入ってる。

細長いグラスを幾度か回して一口嗜める。




美味しい。

香りは爽やかなレモンと華やかなブランデー。

後味もジンジャエールの炭酸が効いている。



〇〇:美味しいです


「ありがとうございます」


やはり、この店は間違いがない。






麗奈:ふふ飲み合いっこ、する?


彼女がいるから、落ち着かないけど。





*****



また別の日、再び彼女の恋愛トークが。



麗奈:友達がねっ!浮気されて


今日はお友達の話。

なんでこんなに話がすらすらでるのか。



麗奈:ねぇ、聞いてる?


〇〇:聞いてます


麗奈:じゃあ〇〇くんは一途なの?


〇〇:一途というか浮気はしないです、度胸がないんで


麗奈:えへへそっかそっか


〇〇:守屋さんは?モテそうですけど


麗奈:れなだって一途です〜!それに肝心の人は全然だし


〇〇:頑張ってください


麗奈:むぅ


〇〇:なにが不満なんですか?応援してるのに


麗奈:やっぱり全然女心わかってないっ!


そう言って勢いよく飲み干す。

いやその飲み方は居酒屋なのよ。


麗奈:大将!おかわり!


「かしこまりました笑」



だから、それは居酒屋なのよ。




麗奈:〇〇くんのバ〜カ



〇〇:もう酔ってる?





*****




〇〇:やっと終わった


今日はいつもよりもずっと残業が長引いてしまった。


せっかくバーに行きたかったのに、
閉店ギリギリに




〇〇:こんばんは.えっ


麗奈:あっ!〇〇くん来たっ!


「ふふっこんばんは」


ひとりで飲む守屋さん。

いつもより遅いからてっきりいないものだと


「席は、ご自由に」


閉店ギリギリだからお客さんも2人きり。


麗奈:れなの隣、空いてますよ〜♡


ぽんぽん、と席を叩く。


〇〇:


麗奈:れな、1人で飲むの寂しいな〜♡


人差し指をツンツンしてる。

する人いるんだ。


〇〇:





麗奈:〇〇くんと、一緒に飲みたいな〜






〇〇:お邪魔します


麗奈:えへへっやった♡


吸い寄せられるように甘い匂いのする守屋さんの隣へ。


「どうされますか?」


〇〇:えーちょっと疲れてるんで


「こちらで決めましょうか?」


〇〇:お願いしてもいいですか?


「かしこまりました、お待ちください」


こういう柔軟な対応がすごく嬉しい。

どの場面でも重要だ。


麗奈:お仕事大変でした?


〇〇:ちょっとね忙しかったです


麗奈:こんな時間だし元気もない


〇〇:いやまぁよくあるんで


麗奈:お顔も疲れてる


〇〇:うげっ!?


そう言って突然、顔をペタペタ触られた。


麗奈:目の下にくまができてる


〇〇:ちょ、ちょっとやめて


麗奈:唇もかさかさ


それは乾燥肌なだけです。


麗奈:顔もちょっと赤い?熱


〇〇:違う違う


なんか手からもいい匂いがして、顔が近くて、
ただただ異性として意識してるだけです。


麗奈:もしかして体調悪い?大丈夫


〇〇:だ、大丈夫じゃないっ!


無理矢理引き離す。


麗奈:えっ大丈夫?どこか悪いの?


心臓に悪いです。


〇〇:大丈夫大丈夫大丈夫


麗奈:無理しないで?れな、〇〇くんになにか
あったら嫌だから


〇〇:


自分でなにを言ってるかわかってるのか?

それ言ったらもう、ダメだ。


「お待たせしました、ライラです」 


〇〇:あ、ありがとうございます


流石のタイミングでカクテルが出来上がる。



このお酒はウォッカだ。

色は白透明、味は意外とさっぱりしていて
飲みやすい。


〇〇:美味しいです


「ありがとうございます」


これは、酔いがよく回りそう。



麗奈:ねぇ、〇〇くん


〇〇:はい


麗奈:〇〇くんはどんな女の子が好き?


〇〇:それはタイプ的なことですか?


麗奈:うん.


真剣な目で聞いてくる。

いつもみたいにポップに聞いてほしいんだけど


〇〇:タイプ


麗奈:


いつもなら先に守屋さんが喋るんだけど

なんか緊張してる


〇〇:ちなみに守屋さんは


麗奈:えっ!?れ、れなはぁえーっとや、やっぱり無理ぃい、言えないよ



顔をぱたぱた仰いで恥ずかしがる守屋さん。

これってそんな変な質問?

セクハラとかそういうことなの?




麗奈:わ、私はいいから〇〇くんは?


〇〇:えーなんだろ


正直あんまりない。

好きだなぁって人に決まった特徴やこれといった理由もない。

ただただ、好きになる。



今の守屋さんみたいに。




〇〇:うーん


麗奈:


〇〇:守屋さん


麗奈:え?


〇〇:守屋さんみたいな人なんてあはは


麗奈:


〇〇:すいません酔ってます


麗奈:私も


〇〇:え?


麗奈:私も〇〇くんみたいな人


〇〇:


麗奈:


〇〇:酔ってます?


麗奈:酔ってるかも



2人で顔を真っ赤にしながら


黙ってカクテルを飲み続けた。








「ありがとうございました」


時間も時間、お互いに酔いも回ってきたので
お店を後にすることに。



〇〇:終電がえーっと


麗奈:〇〇くん


〇〇:はい?


麗奈:よかったら私の家でもうちょっと飲まない


宝石のような瞳、かつ上目遣い。

好きすぎて、胸が苦しい


だがお酒の勢いで進めたくない。


〇〇:今日は終電あるんで


麗奈:私と飲みたくないですか


〇〇:いやいや、めっちゃ楽しかったです


麗奈:お家に美味しいお酒があって


〇〇:


麗奈:ひとりで飲むには勿体ない


〇〇:僕じゃなくても


麗奈:〇〇くんと飲みたい


〇〇:


麗奈:私と飲みたくない




〇〇:飲みます










〇〇:お邪魔します


麗奈:ど、どうぞ


お互いぎこちない動きで守屋さんの部屋へ。




麗奈:座って待ってて持ってくるから


ソファに座ってひとり待つ。

あまり女性のお家に慣れてないので固まってしまう。


守屋さんは意外と白を基調としたシンプルなお部屋で、物も散らかってない。

普段あんなにあざとくておっちょこちょいなのに
こういうところはちゃんとしてる。


彼女のまた違った一面を知りたくなるばかり。




麗奈:お待たせ




可愛らしいパジャマに着替えお酒を持ってきた。


麗奈:どう


〇〇:あ、美味しそうです


麗奈:そっちじゃなくて


伏し目がちに聞いてくる。


〇〇:あ……可愛いです




麗奈:ありがと







ダメだ、ほんとに理性が持たない。


麗奈:これ一緒に


〇〇:このお酒は?


麗奈:XYZって言うんだけど


珍しい名前


〇〇:なんかすごく高価な気が


麗奈:さっきバーテンダーさんにもらって


麗奈:よかったら2人でって




なるほど流石だ、こういうところまで完璧。



麗奈:注ぐね

白く透明なお酒を、グラスに注いでいく。



麗奈:じゃあ乾杯


〇〇:乾杯




コツン




ゆっくり味わって飲む。

このひとときを楽しむように。




麗奈:どう


〇〇:んっ美味しい


麗奈:やったよかったぁ


でも正直味なんてわからない。

だって今、それどころではないから。

たとえ不味くても、あなたの笑顔が見たいから

答えは同じ。



麗奈:私は、普段そんなにあざとくないし


麗奈:できるだけ女の子らしくいたからピンク色ばっかり使って


麗奈:意識してほしいから、いつも恋愛話ばっかりになって


麗奈:ほんとの一人称は、れなじゃないし


麗奈:いっぱいアピールしたら〇〇くんから来て
くれるんじゃないかって


〇〇:ごめんなさい


麗奈:ずっと敬語で距離感じるし


〇〇:ごめん


麗奈:〇〇くんが来るまでずっと待ってた


麗奈:連絡先聞くのはやり過ぎかなって思ったり


麗奈:全部全然だったけど



〇〇:





麗奈:私達って、友達?


〇〇:





麗奈:〇〇くんは、男女の友情成立する


〇〇:また


麗奈:私は、成立しない


〇〇:


麗奈:〇〇くんは


〇〇:成立、しないと思う


麗奈:


〇〇:だから、守屋さんを異性として凄く魅力的だと思う




麗奈:知ってた?


麗奈:カクテルにもねっ、言葉があるんだよ?


麗奈:このお酒のカクテル言葉は






『永遠にあなたのもの』




〇〇:


麗奈:永遠に〇〇くんを独り占めしたい


麗奈:だから〇〇くんも、ずっと
私を独り占めにして


〇〇:守屋さんはずっと、僕だけでいてくれますか?


麗奈:そっちが先だから


〇〇:僕はずっと、あなただけです


麗奈:んっ


思いっきり抱きしめて、気持ちを伝える。


〇〇:好きです


麗奈:私も、大好きです





麗奈:〇〇くんだけだから


麗奈:名前も家も好きな物も、カクテルの本当の意味だって〇〇くんだけにしか教えない


麗奈:だから〇〇くんのことも、全部独り占め
する


麗奈:これから一生、離しちゃダメだからっ


麗奈:約束して


〇〇:約束する、これからもずっと守屋さん
だけ




そうやってお互いの全てを、
お互いだけの独り占めにする。



そしてそれからずっと


あのお店に行く時は、いつも2人で。




あのお店を独占する。



FIN