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カッパ巻き大車輪
2025-04-28 21:50:58
2183文字
Public
小説
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スネ6♀の小説
コミックマーケット105にて無料配布したスネ6♀小説「歩み寄り、寄り添い合う話」です。
スペースにお越し頂き受け取って下さった方々、ありがとうございました!
「まちがってないもん!
…
スネイルのばかっ!」
向かいの一人掛けソファに座った少女は、そう言うと勢いよく顔を背けた。
いつも通りアーキバスへと訪問した独立傭兵レイヴンは、いつも通り恋人として私の部屋へとやってきた。
多忙な日々の合間の、久しぶりの逢瀬に話も弾んだが、会話の中で少女は機嫌を損ねてしまった。
こういった事は、以前にもあった。
レイヴンの誤った知識を正してやった際に、それが彼女のハンドラーから与えられた物だった場合、こういう事が起きるのだ。
少女からすれば、敬愛する主人から与えられた知識の否定は、その人自身の否定に感じるのだろう。
と言っても、あのハンドラーがそうそう間違った事をレイヴンに教えているとは考えにくい。
恐らくは、少女の何かしらの勘違いなのだ。
しかし、こうなってしまってはそれを伝えるのも難しい。
…
あまり繰り返し訂正すると、レイヴンは泣き出してしまうのだ。
過ごした時間の長さが違うとはいえ、あの男と自分とで寄せる信頼の差をこうも見せつけられるのは、思うところが無いわけではないが。
ため息をつき、時計を見る。
まだ少し早いが、もうベッドに入ってしまおう。
泣かれるくらいなら、生活や仕事に支障が無い程度の誤解は、聞かなかった事にしてもいいだろう。
レイヴンも一度寝て頭を冷やせば、こちらの話を聞いても良いと思い直すかもしれない。
そろそろ寝ますか、とは口に出さずに立ち上がると、肩を跳ねさせたレイヴンも慌てた様に立ち上がった。
寝室への短い移動の間、数歩後ろを黙ってついて来たレイヴンは、扉の前まで来ると横をすり抜ける様にして我先にと寝室へと入った。
彼女用の、自分の物より幾分小さい枕を抱きしめた少女は、ベッドの足元側で丸くなる。
「
…
今日は、くっついて寝ないよ!」
「そんな所で寝て、落ちても知りませんよ」
「平気っ、
…
おやすみ!」
枕に顔を埋めて背を向けた少女に苦笑いして、ブランケットを肩まで掛けてやる。
僅かに瞼を開け、こちらを見たレイヴンは、視線が合うと慌てたように目を瞑った。
怒っているんだぞ、と精一杯に見せようとしている姿が、毛を逆立てた子猫のようだ。
呆れ半分、可愛さ半分のため息をついて、自身もベッドに横たわった。
どれくらい経ったか、浅い眠りから覚醒へと引き戻す、微かな振動を感じた。
目を閉じたまま気配を探ると、横向きに眠るこちらを、レイヴンが背後から覗き込むようにして窺っているのだとわかった。
大方、離れて寝ているのが寂しくなったのだろう。
呆れる程に単純で、時に愚かしい。
しかし、どうしようもなく愛らしいと思わせる生き物だ。
素直に謝って一緒に寝たいと言うならそうしてやるか、と内心で考えていると、少女は思わぬ行動に出た。
「よいしょ
……
と」
小さな掛け声と共に、ささやかな重みが体に掛かる。
どうやら、背後から無理矢理に体を乗り越えようとしているらしかった。
どうするつもりかと黙って寝たふりをしていると、徐に腕が持ち上げられる。
「んしょ
…
もう、重いなぁ」
不満そうな声色に吹き出しそうになるのを堪えながら、見えてはいないが成り行きを見守ってみる。
腕の中でもぞもぞと身じろぎしたレイヴンは、定位置に収まると満足気に息を漏らし、やがて規則的な寝息を立て始めた。
まさか、本当に寝たのか。
目を開けて、狸寝入りだろうかと腕の中を確認するが、少女の体は柔く脱力しており、すっかり寝に入っているのが分かる。
なんて身勝手で傍若無人な生き物だろうか。
我が強い者が多いアーキバスにおいても、これだけの不届者はいないだろう。
それも、この私を相手にしてだ。
驚きと共に、感心すらしてしまう。
一体どういった表情でいるのかと胸元に寄せられたレイヴンの顔を窺おうと体を離すと、不服そうに唸って離れた分だけすり寄ってくる。
その図太さに、今度はこちらが脱力する番だった。
考えるだけ無駄だと腕の中の温もりを抱き寄せ、目を閉じる。
何はともあれ、いつも通りの夜になった。
「スネイル、おはよっ」
「
…
おはようございます」
今日は仕事を入れていないので、いつもより遅めのアラーム音が鳴っている。
珍しく先に体を起こしたレイヴンが、昨日の事など忘れたように笑顔を見せるので、こちらも特に言及せずに応じてやった。
これで、いつも通りだろう。
アラームを止め、ヘッドボードから眼鏡を取る。
「
……
スネイル」
フィーカでも淹れようとベッドから立ち上がろうとした時、控えめな声に呼び止められた。
振り向くと、レイヴンが俯き加減で上目にこちらを見つめている。
「昨日は、ごめんね」
小さいながらもはっきりと告げられた言葉に、思わず目を見張る。
ハンドラーが絡んだ一件で、少女からの自発的な歩み寄りは初めてだった。
この関係を彼女なりに大切にしたい、大事にしたいと思っている事が伝わり、柄にもなく胸が熱くなる。
こちらの反応が無いのを不安そうに見ている少女の姿は、無い筈の耳がぺたりと垂れた子犬の様だった。
我ながら、子猫の様だ子犬の様だと忙しいなと小さく笑って、返事の代わりに腕を広げてやる。
数度瞬きしたレイヴンは、今度は無い筈の尻尾を千切れんばかりに振りながら、勢いよく腕の中に飛び込んできた。
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