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瀬一
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雷鉢
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どこかで涙の落ちる音
幾筋も涙がすべると、その膚は透いてしまうものなのだろうか――それとも。
夢の中で泣きじゃくっている子どもの、幼い頃の三郎を見かけた雷蔵の話。
こんな夢を見た。
……
どこともしれない暗隅でこどもがひとり泣いている。背に近づくと、懸命に泣き声を押し殺そうとするさまがいっそあわれで、かがみこんで視線をあわそうとも、こどもは首を振り、かたく両のてのひらで顔を覆ってしまってその手を降ろそうとはしない。それでも、たよりない肩がちいさくしゃくりあげるたびに、細い指の合間からあふれた涙があとからあとからながれては落ちる。泣きはらした目許。手のうちからわずかに見える膚がぞっとするほど白い。幾筋も涙がすべると、膚は透いてしまうものなのだろうか。それとも、(日に焼けたことがないからだ
――
つねに隠されているから。) その答えが雷光のごとく身のうちにひらめき、思わずあえぐように息をついて彼の名を問おうとした、途端、下顎のふち、いま目の前で落ちようとする雫がある。とっさに指を伸ばしてくちづけると、ぱっと顔をあげたこどもが須臾の間、白皙に涙をたたえた双眸でこちらを見あげた
――
……
そんな気がしたところでふいに目が覚めた。夜着を剥いで身体を起こし、傍らに臥している三郎を見やる。あのこどもの貌は靄にかかったように曖昧となって記憶の海に紛れてしまったけれど、隣で眠る三郎の頬が濡れてはいないことを確認して、ぼくはようやくひとときの安堵を覚えた。同時に、ふいに泣きたくなって目を伏せる。
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